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オークションレポート

2023.10.30

セール: 第60回 SBIアートオークション|LIVE STREAM AUCTION

日時: 2023年9月15日(金)・16日(土) 各13:00~

落札総額: 198,633,750円(落札手数料含む)

落札率: 85.7%

作品数: 474点(落札 406点、不落札68点)

 

SBIアートオークションのオンラインによる現代アートのオークションが、9月15日(金)・16日(土)の2日間に渡って開催された。今回のセールでは、国内外の作家225名(他作家・共作出品は1名でカウント)、474点の作品が競りにかけられた。出来高は、落札総額1億9863万3750円(落札手数料含む・以下同)、落札率85.7%を記録した。

1日目は、落札予想価格平均18~30万円程度の作品223点が出品された。単日の落札総額は6289万9250円、落札率は83.9%を記録している。セール後半には、村上隆の作品が版画作品を中心に50LOT(コラボ作品を除く)続き注目を集めた。中でもLOT.175《たんたん坊》(69.0×102.2㎝、シルクスクリーン・金箔、ed100)は、落札予想価格40~70万円のところ、予想価格上限を大きく上回る201万2500円で落札された。単日でのトップロットとなっている。単日の落札価格のランキングでも上位を独占しており、出品点数の多さばかりでなく、村上隆の根強い人気が伺える結果となった。
大幅な伸びをみせたのは、イギリスのグラフィティーアーティスト、ニック・ウォーカーによる作品。LOT.093《The Morning After Brooklyn》(53.8×70.8㎝、シルクスクリーン、ed.150)は、落札予想価格5~10万円のところ、80万5000円で落札された。落札予想価格上限の約8倍までの競り上がりをみせた。
2日目は、落札予想価格29~45万円程度の作品251点が出品された。単日の落札総額は、1億3573万4500円、落札率は87.3%を記録した。この日、トップロットを飾ったのは、セール序盤に出品されたKYNEのLOT.256 《Untitled》(91.0 × 72.7 cm、アクリル・キャンバス)。落札予想価格600~900万円のところ、1322万5000円で落札された。KYNEは、他にオリジナル1点、版画作品4点の出品があったが、いずれも落札予想価格内で落札されており、堅調を維持している。

今回は、高松次郎(たかまつ・じろう、1936‐1998)にスポットを当てる。高松は、戦後日本美術を代表する作家の一人である。赤瀬川原平や中西夏之らと共に前衛美術の中心として活動したことでも知られている。ヴェネツィア・ビエンナーレ(1968)、ドクメンタ(1977)他、国際展にも多数参加し、世界中で活動を行い評判を博した。
2日目のセール終盤に、3作品の出品があった。代表作「影」シリーズよりバラが描かれたアフター作品LOT.451《バラの影》(55.3×46.0㎝、シルクスクリーン)の他、「アンドロメダ」シリーズ(61.0×45.0㎝、シルクスクリーン、ed.98、5点組)より、LOT.449《アンドロメダAシリーズ》、LOT.450《アンドロメダBシリーズ》2点の出品あった。3作品とも落札予想価格上限を超えて落札され、好結果を残している。
出品作品と同じ「アンドロメダ」シリーズA/B、5点組の過去の落札データを抽出したACF美術品指標から動向を読む。

2310ACF美術品パフォーマンス指標

2310ACF美術品時価指数

2014 年の出品では、落札予想価格5~10 万円のところ、10 万円程度で落札されている。2017年までの間に落札予想価格は12~19万円程度まで徐々に上昇し、以降は横ばい推移で落ち着いている。2015年から2018年の落札価格は、落札予想価格上限に近い20万円程度で推移している。今回の出品では、落札予想価格12~18万円のところ、Aシリーズは63万2500円、Bシリーズは57万5000円で落札された。いずれも落札予想価格上限の3倍程度の高い伸びを見せた。好調な結果を受け、今後の落札予想価格が上昇する可能性もでてきた。市場の再評価という点から、今後の動向が期待される。

●次回のSBIアートオークション開催予定●
第62回SBIアートオークション LIVESTREAM AUCTION
2024年1月26日(金)・27日(土)
【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-11 TFTビル東館6F
TEL:03-3527-6692  FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp

2023.09.28

会場:  マレットジャパン オークションハウス

セール: 1. M-Live Auction  2. SALE#230727  Modern and Contemporary Art

日時:  2023年7月27日(木曜日)M-Live/12:00~ SALE#230727/15:00~

落札総額:171,760,000円(落札手数料含まず)

落札率:  70.3%

作品数:  236点(落札166点、 不落札70点)

 

マレットオークションで、”M-Live Auction”と近現代のアートオークションSale#230727、2つのオークションが7月27日(木)に開催された。会場を設けず、オンライン上のみで開催されたM-Live Auctionでは、落札予想価格平均13~20万円程度の作品が78点出品された。落札総額は887万円、落札率は59%だった。一方、通常のセール#230727では、落札予想価格平均75~110万円程度の作品が、158点出品され、落札総額は、1億6289万円、落札率は75.9%となった。2つのセールの落札総額は 1億7176万0000円(落札手数料含まず・以下同)で、落札率は70.3%を記録した。

Sale#230727では、今井麗の作品が、落札予想価格を大幅に上回る落札で盛り上がり、注目を集めた。一輪のシャクヤクを小さなキャンバスに大きく描いた作品、LOT.064《フラワー》(22.0×27.0㎝、キャンバス・油彩)は、落札予想価格50~80万円のところ、落札予想価格上限の3.75倍となる300万円で落札された。2020年頃よりオークションでたびたび見かけるようになった今井は、競り上がる事例が多く、堅調が続いている。
次に上昇率が高かったのは、セール後半に出品されたアンドレ・コタボの作品。LOT.127《おもちゃの兵隊》(31.5×65.0㎝、カルトン・油彩)は、落札予想価格15~20万円のところ、落札予想価格上限の2.4倍となる48万円で落札された。他にも、ヤン・スメタナ、モーリス・ブリアンションが落札予想価格上限の1.8倍程度の高い伸びを見せている。また、モイーズ・キスリングの女性像が700万円の高額落札となり、好結果を残した。セール後半に続いた海外作家の作品は、活発な競りが展開された。海外作家の活況が印象に残るセールとなった。

今回は、日本を代表する版画家・抽象画家として知られる辰野登恵子(たつの・とえこ,1950-2014)に焦点を当てる。 辰野は、一貫して平面構成による抽象表現を追求し、版画・油彩作品で、格子や線、特定のモチーフなどの反復や連続を基に、技法に合わせた質感で独自の表現を生み出した。芸術選奨文部大臣新人賞や毎日芸術賞などの受賞歴があり、国内外の展覧会への出展歴も多く、現代絵画のトップランナーとして活躍した画家である。
本セールでは、青とピンクの円形モチーフが並ぶペインティング作品1点が出品された。LOT.100《Aug-16-2007》(45.5×53.0㎝、キャンバス・アクリル)は、落札予想価格120~180万円のところ、200万円で落札されている。
本作品と同サイズ、同技法の過去の落札データを抽出したACFパフォーマンス指標で、動向を読む。

2309ACF美術品パフォーマンス指標

2309ACF美術品時価指数

2017年は、落札予想価格120~170万円のところ、落札予想価格下限に近い125万円で落札されている。1年空けて2019年には、落札予想価格、落札価格ともに200万円前後と上昇推移をみせる。2020年、落札予想価格は2017年同等程度となり下降を見せるが、落札予想価格上限に近い185万円で落札され好調を保ちながら推移している。時価指数からも200万円前後がだいたいの目安と分析できる。既に評価が確立されている作家の好調持続が期待される。

●次回のマレットジャパンオークション開催予定●
2023年10月5日(木)
1.第4回 M-Live Auction 12:00~ オンライン限定ライブ配信型オークション
2.Mallet Auction Sale #231005 15:00~ 会場:マレットジャパン オークションハウス
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
※YouTubeにて、ライブ配信も行っています。
【お問合せ先】
株式会社マレットジャパン
〒102-0083 東京都千代田区麹町1-3-1 ニッセイ半蔵門ビル1F
TEL:03-5216-2480  FAX:03-5216-2481   E-mail:info@mallet.co.jp

2023.08.29

会場: 代官山ヒルサイドフォーラム

セール: 第59回 SBIアートオークション|Modern and Contemporary Art

日時: 2023年7月14日(金)・15日(土) 各13:00~

落札総額: 631,867,500円(落札手数料含む)

落札率: 88.6%

作品数: 387点(落札343点、不落札44点)

 

7月14日(金)15日(土)の2日間、SBIアートオークションによる現代アートのオークションが、代官山のヒルサイドフォーラムで開催された。今回のセールでは、国内外作家215名(他作家・共作出品は1名でカウント)、387点の作品が競りにかけられた。出来高は、落札総額6億3186万7500円(落札手数料含む・以下同)、落札率88.6% に達した。落札予想価格の上限を超えて落札された作品は、全体の約40%を占め、総じて活況なセール結果となった。

1日目は、マルチプル作品を中心に落札予想価格平均27~43万円程度の作品180点がセールにかけられた。単日の落札総額は7818万2750円、落札率は88.3%を記録している。この日のトップロットは、村上隆と味覚糖のコラボレーション作品LOT.038 《100種 complete お花スタンド ハッピーレインボー》(164.0×140.0×73.5㎝、ミクストメディア、ed30)だった。本作は、2013年4月に村上隆が映画初監督作品『めめめのくらげ』公開した際に発表された立体作品で、140㎝サイズのフラワーモチーフの花弁部分に味覚糖の商品のオリジナルデザインケースを100種類はめ込んだフラワースタンドである。落札予想価格100~150万円のところ、落札予想価格上限を大幅に上回る414万円で落札された。
2日目は、オリジナル作品を中心に落札予想価格180~290万円程度の作品207点がセールにかけられた。単日の落札総額は、5億5368万4750円、落札率は88.9%を記録している。注目を集めたのは、オークションカタログの表紙を飾った立体作品で、画家であり彫刻家としても知られる加藤泉のLOT.196《無題》(104.2×39.2×38.6㎝、アクリル絵具・木炭・シリコン・木・椅子)。2007年東京・新富町のARATANIURANOギャラリーで開催された「人へ」展で展示された作品である。落札予想価格200~300万円のところ、2760万円で落札された。入札は白熱し、落札予想価格上限の約9倍近くまでの伸びを見せた。両日ともに、存在感ある立体作品が盛り上がりを見せるセールとなった。

今回は、小西紀行(こにし・としゆき、1980‐)に焦点を当てる。小西は、幼少期の自分、家族、身近な人の写真などをもとに、筆だけでなくタオルや手指などを使った大胆にうねる自由な筆致で、モデルの特定情報を排除した人物を描き続けている。その独自の表現は、鑑賞者のイマジネーションを刺激する。
本セールでは、2日目に、ひとりの人物を描いたオリジナル作品が1点出品された。LOT.199《無題》(65.2×53.0㎝、油彩・キャンバス)は、落札予想価格50~80万円のところ、落札予想価格上限に対し約4倍となる322万円で落札された。
出品作品と類似モチーフ、同サイズの過去の落札データを抽出したACF美術品指標から動向を読む。

2308ACF美術品パフォーマンス指標

2308ACF美術品時価指数

2018年の出品では、落札予想価格15~25万円のところ、63万円程度で落札されている。2021年の出品では、落札予想価格が25~35万円と上昇を見せるが、落札価格は横ばい推移となっている。2022年になると、落札予想価格が60~105万円と更なる上昇を見せ、落札価格も221万円までの高い伸びを見せる。2023年、落札予想価格に若干の下降がみられるが、落札価格は前年の1.4倍まで伸びている。いずれの年も、落札予想価格上限を大きく上回る価格で落札され、好調が続いている。
この上昇基調がいつまで続くか期待が集まる。

 
●次回のSBIアートオークション開催予定●
第60回SBIアートオークション LIVE STREAM AUCTION
2023年9月15日(金)・16日(土)
【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-11 TFTビル東館6F
TEL:03-3527-6692  FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp

2023.07.28

会場: 代官山ヒルサイドフォーラム

セール: 第58回 SBIアートオークション|Modern and Contemporary Art

日時: 2023年5月26日(金)・27日(土) 各13:00~

落札総額:1,099,607,000円(落札手数料含む)

落札率: 91.6%

作品数: 320点(落札293点、不落札27点)

 

SBIアートオークションによる現代アートのオークションが5月26日(金)27日(土)の2日間に渡り、代官山のヒルサイドフォーラムで開催された。セールでは、国内外で広く知られる作家、話題の若手作家、日本初紹介となる海外の新進気鋭作家など、国内の作家を中心に全320点の作品が競りにかけられた。落札総額は10億9960万7000円(落札手数料含む・以下同)、落札率91.6% と高記録を達成した。

1日目は、落札予想価格平均82~133万円程度の作品がセールにかけられた。単日の落札総額は2億1115万1500円、不落札は僅か8点で落札率は94.2%を記録している。セール冒頭では、奈良美智、村上隆、草間彌生のマルチプル作品が連続して出品された。既に評価が高い作家の順当な競りが続き、快調なスタートとなった。中でも、草間彌生は、13LOT(1LOT、他作家との出品含む)連続で出品があり、そのほとんどが落札予想価格上限を超えて落札される手堅い人気を見せた。
2日目は、落札予想価格平均304~490万円程度の作品が出品された。オリジナル作品を中心に182点の出品があった。単日の落札率は89.6%、落札総額は8億8845万5500円を記録している。
1点目に出品された中西怜の作品、LOT.142《Beach2》(101.0 × 151.0 × 10.5 cm、ジークレー、アクリル樹脂、アクリル、パネル、オリジナル額装)が、落札予想価格35~55万円のところ、276万円で落札された。落札予想価格下限の8倍近くとなる大幅な伸びをみせ、注目を集めた。
最高額で落札されたのは、独自の抽象絵画表現で国際的にも高く評価されている白髪一雄の作品。LOT198《無題》(73.0×91.5㎝、油彩・キャンバス)は、落札予想価格4000~7000万円のところ、1億1040万円で落札された。白髪は、他にも2点のオリジナル作品の出品があった。1点は落札予想価格上限を超えて落札され、もう1点は落札予想価格内の落札となり堅調を維持した。

今回は、山口歴(やまぐち・めぐる、1984‐)に焦点を当てる。山口は、23歳で渡米して以降、ニューヨークを活動拠点として活躍している現代アーティスト。鋭い色彩感覚と勢いのあるブラシストローク(筆致)を“カットアンドペースト”と呼ばれる独自の技法を用い制作された作品で高い支持を得ている。その秀でた独創性で有名ファッションブランドからのオファーによるコレボレーションも多く手掛けており、認知度も高い。
本セールでは、2日目にオリジナル作品が1点出品された。LOT.175《RD No.18》(94.0×146.0×2.5㎝、UVトップコート・アクリル・エポキシ樹脂・合板)は、落札予想価格300~500万円のところ、予想価格の上限に近い437万円で落札された。同じRDシリーズ、同サイズ(長辺100~150㎝)の過去の落札データを抽出したACF美術品指標から動向を読む。

2307ACF美術品パフォーマンス指標

2307ACF美術品時価指数
※2022年は出品データが無かった為、除いてグラフ化している。

2019年の出品では落札予想価格平均70~100万円のところ、111万円で落札されている。2020年には、落札予想価格平均、落札価格平均ともに1.5~1.8倍程度まで上昇している。右肩上がりのグラフは続き、2021年には371万円程度まで落札価格平均を上げている。2023年、落札予想価格平均の上昇に対し、落札価格平均は予想価格内で収まり、横ばい推移となった。直近7月のセールでも、該当作品が落札予想価格内で落札されている。伸びは鈍ってきたものの、急速な下落は見られず安定している。市場景気が変動を見せる中、今後どのような動向を見せるか注視していきたい。

●次回のSBIアートオークション開催予定●
第60回SBIアートオークション LIVESTREAM AUCTION
2023年9月15日(金)・16日(土)
【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-11 TFTビル東館6F
TEL:03-3527-6692  FAX:03-3529-0777
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2023.06.28

会場: マレットジャパン オークションハウス

セール: M-Live Auction
     SALE#230518  Modern and Contemporary Art

日時: 2023年5月18日(木曜日) M-Live/12:00~ SALE#230518/15:00~

落札総額: 187,260,000円(落札手数料含まず)

落札率: 72.2%

作品数: 248点(落札179点、不落札69点)

 

5月18日(木)マレットオークションで、”M-Live Auction”と近現代のアートオークションSale#230518が開催された。M-Live Auctionは、会場は設けず、オンライン同時入札を使って、オークショニアが競りを行う映像をリアルタイムで見ながら、パソコンやスマートフォンを通して参加するというスタイル。従来のセールとは異なり、下見会やカタログの掲載もなく、全てがオンラインのみで執り行われるオンライン完結型のオークションで、今回で2回目の開催となる。M-Live Auctionでは、落札予想価格平均19~28万円程度の作品が83点出品された。落札総額は1332万円、落札率は66.3%であった。一方、通常のセール#230518では、落札予想価格平均106~152万円程度の作品が、165点出品され、落札総額は、1億7394万円、落札率は73.3%となった。各セールの特性に合わせた価格帯と作品構成により行われた2つのセールの落札総額は1億8726万円、落札率は72.2%を記録している。

 

最高額で落札されたのは、会場で行われたセール中盤に出品されたロッカクアヤコのLOT.082《Untitled》(100.0×100.0㎝、キャンバス・アクリル)で、落札予想価格2000~3000万円に対し、2200万円で落札された。大きな伸びは見せなかったものの、根強い人気で手堅い落札結果となった。

高い伸び率を見せたのは、インド出身の現代美術家サクティ・ボーマンのLOT.128《束の間の歓び》(73.0×60.0㎝、キャンバス・油彩)。落札予想価格150~200万円に対し、750万円で落札された。サクティ・ボーマンの作品は、2022年12月のセールでも8号サイズの油彩作品が落札予想価格下限の5倍程度となる競り上がりを見せ、関心が寄せられていたが、今回も熱気を帯びた競りが展開され、落札予想価格下限の5倍まで記録を伸ばした。海外市場で既に高い評価を得ている作家の希少な出品に注目が集まる結果となった。

今回は、ミズテツオ(1944‐)に焦点を当てる。ミズは、イタリア、フランスなどヨーロッパ各地に滞在し、数多くの作品を制作している。中でも、船舶間の通信に用いられる国際船舶信号旗によるアルファベットを組み合わせた「フラッグ」シリーズが人気で、高く評価されている。アートフェアなどへの出展歴も多く、国内外で活躍の場を持つ作家である。
その「フラッグ」シリーズの1点、「J」「A」「M」のフラッグを組み合わせて描かれた作品、LOT.111《JAM》(99.7×65.0㎝、キャンバス・油彩)が会場で行われたセールに出品され、落札予想価格35~45万円のところ、54万円で落札された。近年出品された同一シリーズ、同サイズの動向をパフォーマンス指標から読み解く。

2306ACF美術品パフォーマンス指標

2306ACF美術品時価指数

2017年の出品では、落札予想価格平均15~21万円程度、落札予想価格下限14万円程度の落札であった。以降2019年まで落札予想価格平均はほぼ横ばいに推移するが、落札価格平均は、1.2~1.3倍程度ずつ僅かながら上昇しており、2017年に落札予想価格下限程度だったところ、2019年には落札予想価格上限程度で落札されるようになった。2020年には、落札予想価格平均21~31万円、落札価格平均48万円までといずれも上昇をみせた。評価が上昇した後、2021年と2022年は出品が見られなかった。久しぶりの出品となった今回のセールで更なる好結果を残した。2021年には画業50周年を迎え、2022年には個展が開催されたことも、好材料となったかもしれない。豊かな色彩で明確なメッセージが込められたモダンな抽象画「フラッグ」シリーズの継続した上景気を期待したい。

 

  • ●次回のマレットジャパンオークション開催予定●
    2023年7月27日(木) 2セール同時開催
    会場:マレットジャパン オークションハウス

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