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オークションレポート

2023.05.29

会場: ライブ配信型オークション

セール: SBI ART AUCTION LIVE STREM

日時: 2023年4月14日(金)・15日(土) 各13:00~

落札総額: 286,988,250円(落札手数料含む)

落札率: 90.3%

作品数: 453点(落札409点、不落札44点)

 

SBIアートオークションによるLIVE STREAM AUCTIONが4月14日(金)15日(土)の2日間、開催された。オークションは、今年2月に移転したオフィスに併設された新しいLIVEスタジオからライブ配信で行われた。落札総額2億8698万8250円(落札手数料含む・以下同)、落札率90.3%。友沢こたおや今井麗など、最近注目されている作家の競り上がりも多くみられ、活況なセールとなった。

1日目は、落札予想価格平均22~36万円程度の作品が出品された。マルチプル作品を中心に269点の出品があった。単日の落札総額は9212万750円、落札率は89.6%を記録している。バックサイドワークスの版画作品LOT.046《河合塾》(I.53.0×53.0、シルクスクリーン、ed.30)が、最高額で落札された。落札予想価格70~120万円のところ、333万5000円で落札されている。引き続き、3点のバックサイドワークスの版画作品が出品された。落札予想価格は同額の70~120万円で、それぞれ落札予想価格上限あたりの100~130万円程度で落札されている。4点の中では、エディション数も少ない、大手予備校のポスターで使用されたお馴染みのモチーフ作品に人気が集中する結果となった。
2日目は、落札予想価格平均72~116万円程度の作品が出品された。オリジナル作品を中心に184点の出品があった。単日の落札総額は1億9486万7500円、落札率は91.3%だった。最高額で落札されたのは、LOT.321、KYNEの版画作品15点とKYNEと村上隆とのコラボレーション版画作品3点がセットになった作品。落札予想価格500~800万円のところ、1380万円で落札された。次点となったのは、KYNEのオリジナル作品だった。KYNEは3点の出品があったが、いずれも落札予想価格上限を超えて落札されており、好調だった。総じて、グラフィティ系アーティストの勢いが目立つ2日間となった。

今回は、くらやえみ(くらや・えみ、1995‐)に焦点を当てレポートする。くらやは、少女をテーマにしたマンガのような絵画を描くことで知られ、マンガ芸術家とも称される。若い頃から活躍の場は広く、国内外で個展やグループ展を開催した他、香港バーゼル、NYフリーズにも出展した経歴を持つ。多くの作品発表の場において、芸術と日本のマンガが融合したくらやの作品は、高く評価されている。この5月には、所属しているカイカイキキのギャラリーで個展を開催。今までの作品では見られなかったような構図の新作なども発表し注目を集めた。
本セールでは2日目の序盤、2点のオリジナル作品が出品された。セーラー服の少女を丁寧に書き上げ作品LOT.291《Untitled》(21.0×14.7㎝、ペン・紙)は、落札予想価格20~30万円のところ、80万5000円で落札されている。続くLOT.292《Untitled》(17.0×12.5㎝、色鉛筆、ボールペン、油性ペン、紙)は、落札予想価格15~25万円のところ、60万9500円で落札された。
後者の作品と同サイズ・同技法の過去の落札データを抽出したACF美術品指標から動向を読む。

2305ACF美術品パフォーマンス指標

2305ACF美術品時価指数

2020年の出品では、落札予想価格10~15万円のところ、約16万円で落札されている。大きな競り上がりは見られないスタートだったが、翌2021年には、落札予想価格は2倍まで伸び、落札価格は、50万円近くまで上昇した。2022年には、ほぼ横ばい推移となる。今回のセールでは、落札予想価格がやや下降設定となったが、落札価格は大きな上昇を見せた。時価指数も右肩あがりに推移しており、好調だ。更なる活躍が期待される若手作家の今後の動向を注視していきたい。

 

●次回のSBIアートオークション開催予定●
第59回SBIアートオークション
2023年7月14日(金)・15日(土)
【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-11 TFTビル東館6F
TEL:03-3527-6692  FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp

2023.04.28

会場: 東京国際フォーラム ホールD5

セール: Tokyo Contemporary: Redefined

日時: 2023年3月11日(土曜日)13:00~

 

落札総額: 797,789,500円(落札手数料含む)

落札率: 97.7%

作品数: 87点(落札85点、不落札2点)

 

日本最大級のアートフェアである「アートフェア 東京」が3月9日(金)からの4日間、東京国際フォーラムで開催された(9日は招待日)。国内外から多くの人々が集まり、総来場者は5.6万人に達した。アートフェア期間中、会場の別ホールでは、SBIアートオークションによる特別企画セールが開催された。本セールは “わたしたちの生きる現代社会をアートによって再定義する”というコンセプトのもと、昨年に開始されたセールで、今回で2回目の開催となる。
国内外で活躍する現代美術作家のオリジナル作品78点、マルチプル作品9点、合計87点の作品が出品された。通常、SBIアートオークションで開催されているセールと比較すると作品点数は少なかったものの、オリジナル作品を中心に優品が揃い、見応えのあるセールとなった。落札総額は、7億9778万9500円(落札手数料含む・以下同)。会場だけでなく、オンラインや電話からのビッドも活発に展開され、不落札はわずか2点のみで、落札率97.7%という高記録を達成した。

最近のオークションで活況な競りがみられる谷口正造が、今回のセールでも大幅な伸びを見せて会場を沸かせた。LOT.015《MOON SONG》(65.2×65.2㎝、アクリル・色鉛筆・木製パネル)は、落札予想価格30~50万円のところ、483万円で落札された。落札予想価格下限の約16倍にもなる価格で落札されている。この勢いがどこまで続くことになるか注目される。
草間彌生の代表的なモチーフ作品である“かぼちゃ”を描いた作品がトップロットを記録した。LOT.058《かぼちゃ(B.H.T)》(41.0×31.8㎝、アクリル・キャンバス)は、落札予想価格7000~1億3000万円のところ、1億7250万円で落札されている。次点には、井田幸昌の大型のオリジナル作品がランク入りを果たした。LOT.055《Picasso》(194.0×162.0㎝、油彩・キャンバス)は、落札予想価格1200~2200万円のところ、5520万円で落札された。高額な予想価格にはなるが、その予想を大きく上回る価格で落札されている。グローバルに活躍し、多くのコレクターからの熱い視線を集めている井田は2019年のオークション初出品の頃から好調で、堅調に推移している。

今回は、松山智一(まつやま・ともかず、1976‐)に焦点を当てる。松山は、アメリカ・ニューヨークを拠点に世界各地で活躍している現代美術家である。東洋と西洋、現代と古典、抽象と具象など対極するいくつもの要素が絶妙に組み合わせられ、緻密で色彩豊かに描かれた作品を特徴としており、平面作品や立体作品だけでなく、近年ではパブリックアートなども多く手掛け、国内外で高く評価されている。
セール中盤に出品されたLOT.047《Expecting Island in the Sun》(61.0×46.0㎝、アクリル・ミクストメディア・キャンバス)は、落札予想価格450~750万円のところ、954万5000円で落札された。
今回の作品と同サイズ・同技法の過去の落札データを抽出したACF美術品指標から動向を読む。

2304ACF美術品パフォーマンス指標

2304ACF美術品時価指数

2021年9月の出品では、落札予想価格250~350万円のところ、約550万円で落札されている。翌年6月には、約410万円での落札となり、若干下降を見せるが落札予想価格上限近辺での落札。2023年に入ってからは約700~950万円で落札されている。常に落札予想価格上限を上回る価格で落札され、右肩あがりに推移しており、更なる上昇も期待される。現状、安定した作家といえるだろう。

 

●次回のSBIアートオークション開催予定●
第58回SBIアートオークション|MODERN AND CONTEMPORARY ART
2023年5月26日(金)・27日(土)/ ヒルサイドフォーラム(東京・代官山)
【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-11 TFTビル東館
TEL:03-3527-6692  FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp

2023.03.29

会場: マレットジャパン オークションハウス

セール: SALE#230302  Modern and Contemporary Art

日時: 2023年3月2日(木曜日)15:00~

落札総額: 132,230,000円(落札手数料含まず)

落札率: 69.5%

作品数: 141点(落札98点、不落札43点)

 

3月2日(木)、マレットオークションで2つのセールが開催された。午前中には、”M-Live Auction”という新しいオークションが開かれた。会場で競りに参加することはできず、オンライン同時入札を使って、オークショニアが競りを行う映像をリアルタイムで見ながら、パソコンやスマートフォンを通して参加するというもの。従来のセールとは異なり、下見会やカタログの掲載もなく、全てがオンラインのみで執り行われるオンライン完結型のオークションだ。若い購買層が魅力を感じるようなコンテンポラリー作品を中心に構成された120点の作品に多くの入札が集まった。
午後には、半蔵門にあるオークションハウスにて会場を用いた従来型のセールが開催された。そのセールでは国内作家56名、海外作家39名による作品141点がセールにかけられた。落札総額は、1億3023万円(落札手数料含まず・以下同)、落札率は69.5%だった。オンラインや電話などを用いた会場以外からのビッドが活発な印象のセールだった。
トップロットはセール序盤に出品されたアンディ・ウォーホルの版画作品である。1983年当時、世界で絶滅危惧種とされていた10の動物をモチーフに制作された「Endangered Species(絶滅危惧種)」シリーズの1作、LOT.006《Orangutan》(96.5×96.5㎝、シルクスクリーン)は、400~600万円のところ、2200万円で落札された。落札予想価格を大きく上回り、予想価格下限の5.5倍という大幅な伸びをみせた。
他にも大きな競り上がりで注目を集めたのは、ヌリ・アバクの作品。ヌリ・アバク(1926-2008)は、トルコ出身の現代芸術家のひとりで、伝統的なペルシャ絵画の技法で知られている。LOT.117《市場》(65.5×65.5㎝、キャンバス・油彩)は、落札予想価格20~30万円のところ、下限の10倍となる200万円で落札された。本セールでは、国内市場で出品が稀な海外作家によるオリジナル作品の盛況な競り合いが目立った。

今回は、仲衿香(なか・えりか、1994年~)に焦点を当てる。仲衿香は、身近にあるロゴや切り取った自然風景を絵画に落とし込み、アクリル絵の具を厚塗りした独特な質感を特徴とする作品を制作している。先日会期を終えたばかりの日本最大級の国際的なアートフェア「アートフェア東京」にも出展され、注目を集めていた。「CAF賞」の受賞歴もあり、新進気鋭の若手作家のひとりである。
本セールでは1点のオリジナル作品が出品された。LOT.004《35.660355,139.701410》(27.3×27.3.㎝、パネル・アクリル)で、落札予想価格25~35万円のところ、52万円で落札された。この作品は、タイトルの数字がGoogleマップの緯度と経度の座標になっている。その場所にしか存在しない独自性があるものを作品モチーフとして選び、その場所の座標をタイトル表記した「現在地」シリーズと言われる作品である。
本作品と同一サイズのオリジナル作品の動向をパフォーマンス指標からみる。

2303ACF美術品パフォーマンス指標

2303ACF美術品時価指数

2021年1月の初出品では、落札予想価格10~15万円のところ、26万円で落札されている。その3か月後には34万円、1年後は65万円と右肩上がりに落札金額が上昇している。今回のセールで落札価格は下降をみせるが、落札予想価格を上回り落札されている。落札予想価格は、2021年以降、約2倍程度上昇し、徐々に評価を上げている。常に落札予想価格下限の3倍近くの価格で落札されており、好調を維持している。まだ作品も多く出回っていない希少さもあり、高騰傾向が見られるかもしれない。今後の活躍が期待される若手作家の動向を注視していきたい。

●次回のマレットジャパンオークション開催予定●
2023年5月18日 2セール開催
会場:マレットジャパン オークションハウス

【お問合せ先】
株式会社マレットジャパン
〒102-0083 東京都千代田区麹町1-3-1 ニッセイ半蔵門ビル1F
TEL:03-5216-2480  FAX:03-5216-2481
E-mail:info@mallet.co.jp

2023.02.28

会場: 代官山ヒルサイドフォーラム

セール: LIVE STREAM + MODERN AND CONTEMPORARY ART

日時: 2023年1月27日(金曜日)11:00~ / 28日(土曜日)11:00~

落札総額: 1,129,961,250円(落札手数料含む)

落札率: 93.9%

作品数: 526点(落札494点、不落札32点)

 

SBIアートオークションによる近現代美術のオークションが、1月27日(金)・28日(土)の2日にわたり開催された。27日はオンライン配信のみの無観客オークション、28日は代官山ヒルサイドフォーラム(東京)で従来通り会場を用いて行われた。国内だけでなく海外からの入札も多数みられ、盛況なセールとなった。半数近い作品が落札予想価格上限を超える価格で落札され、好調な競りが目立った。落札率は93.9%、落札総額11億2996万1250円(落札手数料含む・以下同)を記録している。

1日目は、マルチプル作品を中心に落札予想価格平均56~90万円程度の作品が311点出品された。単日の落札総額は、3億589万4250円、落札率は91.3%だった。2日目は、オリジナル作品を中心に落札予想価格平均183~290万円程度の作品が215点出品された。単日の落札総額は、8億2406万7000円で、落札率は前日を上回る97.7%を記録した。
トップロットを記録したのは、草間彌生のオリジナル作品LOT.435《ぶどう》(38.0×45.5㎝、アクリル・キャンバス)で、落札予想価格4000~7000万円のところ、1億4950万円で落札された。草間作品は、2日間で全28点の出品があり、その落札総額は5億372万3000円となっている。全体落札額の約45%を草間が占める結果となった。
大幅な伸びを見せて注目を集めたのは、谷口正造(1990-、たにぐち・しょうぞう)。本セールでは、2点の出品があった。LOT.314《SKY BLUE SKY》(60.6×50cm、アクリル・色鉛筆、パネル)は、落札予想価格15~25万円のところ、253万円で落札。続く、LOT.315《SUNGOES DOWN》(72.2×60.6㎝、アクリル・ペン・コラージュ・木製パネル)は、落札予想価格20~30万円のところ、368万円で落札された。どちらの作品も落札予想価格上限から10~12倍程度の伸びをみせ、国内初出品となったセールで好結果を残した。今後の活躍が期待される作家のひとりである。

今回は、Backside works. (年齢不詳、ばっくさいど わーくす)に焦点を当て、落札価格の動向を読み解く。バックサイドワークスは、福岡を拠点に活動するアーティスト。80、90年代のサブカルチャーの影響を強く受けた画風で、“実在はしないかもしれない。でも確かに存在するヒロイン”をコンセプトに、美少女をモチーフにした作品を描いている。ストリートブランドとコラボ商品を展開することなどもあり、ファッションに敏感な若い世代や海外のコレクターなどからも好評を得ている。
今回のセールでは、6点の版画作品が出品され、いずれも落札されている。6点のうち、最高落札額を記録したのは、スニーカーブランド店のオープン記念にコラボレーションして制作した作品。LOT.040 《「履かないの?」(Blue×Red)》(53.0×41.0㎝、シルクスクリーン、Ed.30)は、落札予想価格80~140万円のところ、299万円で落札された。続くLOTでは、色違い作品となる 《「履かないの?」(Black×Black)》(Ed.70)が、出品された。同じ落札予想価格に対し、195万5000円で落札されている。先のBlueは出品歴が浅く、Blackと比較しエディション数が少ないことなどが価格上昇につながったと思われる。

和装姿に大きなヘッドホンの少女が印象的な作品、LOT.038《VALIANT GIRLS》(53.0×41.0㎝、ジークレー・キャンバス)をピックアップし、その落札データをグラフ化した。

2302ACF美術品パフォーマンス指標

2302ACF美術品時価指数

2020年1月の初出品では、落札予想価格15~25万円のところ、約235万円で落札されている。落札予想価格は、出品の都度上昇傾向にあり、2022年からは、横ばい推移となっている。落札価格は、2021年前半は200万前後、2021年後半からは450万前後まで上昇。上下動はありながらも、常に落札予想価格上限を超えて落札されており、需要の高さがうかがえる。今回の出品では、落札予想価格150~250万円のところ224万2500円での落札となり、2020年以来初めて落札予想価格上限に届かず、伸び悩みを見せた。残りの3作品も落札予想価格近辺で落札されている。今回のセールでは、作品により評価が分かれる結果となった。
“ヒロイン”を描き続ける作家の今後の動向に関心が高まる。

●次回のSBIアートオークション開催予定●
第56回SBIアートオークション|Tokyo Contemporary: Redefined
2023年3月11日(土)/ 東京国際フォーラム開催 特別セール

【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
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2023.01.31

会場: マレットジャパン オークションハウス

セール: SALE#221201  Modern and Contemporary Art

日時: 2022年12月1日(木曜日)14:00~

落札総額: 158,940,000円(落札手数料含まず)

落札率: 73.57%

作品数: 227点(落札167点、不落札60点)

 

マレットジャパンのオークションが2022年12月1日(木)に開催された。国内外136名の作家による作品が227点出品された。近現代美術から幅広いジャンルの作品を取り揃えた本セールの出来高は、落札総額1億5894万円(落札手数料含まず・以下同)、落札率73.57%を記録している。

最も注目を集めたのは、1920年代に活躍した東欧前衛派の幾何学的抽象画家ヘンリク・ベルレウィの作品LOT.218《Méditerranée Opus II》(89.0×115.5㎝、キャンバス・油彩)。落札予想価格30~40万円のところ、960万円で落札された。落札予想価格上限の24倍となる大幅な伸びで会場を沸かせた本作は、今回のセールの最高落札額作品にもなっている。
次いで高い伸び率を見せた作品は、インド出身の現代美術家サクティ・ボーマンの作品LOT.216《音楽家》(油彩・キャンバス、40.0×32.0㎝)で、落札予想価格60~80万円のところ、落札予想価格上限の約4倍の325万円で落札された。国内オークションでの出品が希少な海外作家によるユニーク作品の騰勢が目立つセールとなった。他、次世代を担う注目の若手作家のひとりである中村桃子の女性と花をモチーフにしたユニーク作品LOT.150 《静かなからだ》、LOT.151《消せない女》や、重要無形文化財「型絵染」の保持者(人間国宝)である工芸家芹沢銈介のLOT.133《法然上人絵傳》などが好調だった。いずれも落札予想価格上限の2.5~3倍程度の価格で落札されている。

日本を代表するコンセプチュアル・アーティスト、河原温(かわら・おん、1932-2014)に焦点を当てレポートする。時間や空間などを主題とし文字や数字を用いて制作された河原の作品は、国際的にも高い評価を受けている。代表作のひとつに1966年から描き始めた「Today」シリーズがある。単色平塗りの地に白い文字で制作日の日付を、その時に滞在していた場所の言語で表記した作品は「日付絵画」とも呼ばれ、3000点以上の作品が残されている。
今回出品されたのは「I Got Up」シリーズからの1点である。「I Got Up」は、日付、その日の起床時間、受取人、差出人である河原の名前と滞在場所をスタンプで記したポストカードを1960年代後半から約10年間にわたり知人や関係者である特定の人物に送り続けた連作で、ポストカード1枚そのものが作品となっている。
LOT181《「I Got Up」シリーズより》(8.9×14.0㎝、ポストカード・スタンプ)は、落札予想価格50~80万円のところ、190万円で落札された。同一シリーズ作品の2014~2022年のオークションデータを抽出したACFパフォーマンス指標*で動向を読み解く。

2301ACF美術品パフォーマンス指標

2301ACF美術品時価指数

落札予想価格は、2014年30~40万円程度から始まり、2017年には30~50万円程度に推移する2018年には上昇するが、以降2022年までは50~80万円の横ばい推移となっている。落札価格は、2014年の40万円で始まり、2年ぶりの出品となった2017年では、110万円程度まで上昇を見せる。以降2018年と2019年は、100万円前後で上下動する。そして、また2年ぶりの出品となった2022年では2019年の倍となる200万円程度まで落札価格を伸ばした。久しぶりの出品の都度大きく落札価格を上昇させている。不落札も無く、常に落札予想価格上限を上回る価格で落札されている人気の作品である。2022年の伸びがそのまま続き200万円台で推移するのか、落札予想価格付近の100万円台に転じることになるのか、今後の動向を注視していきたい。
*: 2015、2016、2020、2021年は出品データが無かった為、除いてグラフ化している。

 

●次回のマレットジャパンオークション開催予定●
2023年3月2日(木)11:00~ M-Live(オンライン)オークション
2023年3月2日(木)15:00~ マレットオークション
会場:マレットジャパン オークションハウス
※YouTubeのライブ配信やオンラインによる同時入札も行っています。

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