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オークションレポート

2023.03.29

会場: マレットジャパン オークションハウス

セール: SALE#230302  Modern and Contemporary Art

日時: 2023年3月2日(木曜日)15:00~

落札総額: 132,230,000円(落札手数料含まず)

落札率: 69.5%

作品数: 141点(落札98点、不落札43点)

 

3月2日(木)、マレットオークションで2つのセールが開催された。午前中には、”M-Live Auction”という新しいオークションが開かれた。会場で競りに参加することはできず、オンライン同時入札を使って、オークショニアが競りを行う映像をリアルタイムで見ながら、パソコンやスマートフォンを通して参加するというもの。従来のセールとは異なり、下見会やカタログの掲載もなく、全てがオンラインのみで執り行われるオンライン完結型のオークションだ。若い購買層が魅力を感じるようなコンテンポラリー作品を中心に構成された120点の作品に多くの入札が集まった。
午後には、半蔵門にあるオークションハウスにて会場を用いた従来型のセールが開催された。そのセールでは国内作家56名、海外作家39名による作品141点がセールにかけられた。落札総額は、1億3023万円(落札手数料含まず・以下同)、落札率は69.5%だった。オンラインや電話などを用いた会場以外からのビッドが活発な印象のセールだった。
トップロットはセール序盤に出品されたアンディ・ウォーホルの版画作品である。1983年当時、世界で絶滅危惧種とされていた10の動物をモチーフに制作された「Endangered Species(絶滅危惧種)」シリーズの1作、LOT.006《Orangutan》(96.5×96.5㎝、シルクスクリーン)は、400~600万円のところ、2200万円で落札された。落札予想価格を大きく上回り、予想価格下限の5.5倍という大幅な伸びをみせた。
他にも大きな競り上がりで注目を集めたのは、ヌリ・アバクの作品。ヌリ・アバク(1926-2008)は、トルコ出身の現代芸術家のひとりで、伝統的なペルシャ絵画の技法で知られている。LOT.117《市場》(65.5×65.5㎝、キャンバス・油彩)は、落札予想価格20~30万円のところ、下限の10倍となる200万円で落札された。本セールでは、国内市場で出品が稀な海外作家によるオリジナル作品の盛況な競り合いが目立った。

今回は、仲衿香(なか・えりか、1994年~)に焦点を当てる。仲衿香は、身近にあるロゴや切り取った自然風景を絵画に落とし込み、アクリル絵の具を厚塗りした独特な質感を特徴とする作品を制作している。先日会期を終えたばかりの日本最大級の国際的なアートフェア「アートフェア東京」にも出展され、注目を集めていた。「CAF賞」の受賞歴もあり、新進気鋭の若手作家のひとりである。
本セールでは1点のオリジナル作品が出品された。LOT.004《35.660355,139.701410》(27.3×27.3.㎝、パネル・アクリル)で、落札予想価格25~35万円のところ、52万円で落札された。この作品は、タイトルの数字がGoogleマップの緯度と経度の座標になっている。その場所にしか存在しない独自性があるものを作品モチーフとして選び、その場所の座標をタイトル表記した「現在地」シリーズと言われる作品である。
本作品と同一サイズのオリジナル作品の動向をパフォーマンス指標からみる。

2303ACF美術品パフォーマンス指標

2303ACF美術品時価指数

2021年1月の初出品では、落札予想価格10~15万円のところ、26万円で落札されている。その3か月後には34万円、1年後は65万円と右肩上がりに落札金額が上昇している。今回のセールで落札価格は下降をみせるが、落札予想価格を上回り落札されている。落札予想価格は、2021年以降、約2倍程度上昇し、徐々に評価を上げている。常に落札予想価格下限の3倍近くの価格で落札されており、好調を維持している。まだ作品も多く出回っていない希少さもあり、高騰傾向が見られるかもしれない。今後の活躍が期待される若手作家の動向を注視していきたい。

●次回のマレットジャパンオークション開催予定●
2023年5月18日 2セール開催
会場:マレットジャパン オークションハウス

【お問合せ先】
株式会社マレットジャパン
〒102-0083 東京都千代田区麹町1-3-1 ニッセイ半蔵門ビル1F
TEL:03-5216-2480  FAX:03-5216-2481
E-mail:info@mallet.co.jp

2023.02.28

会場: 代官山ヒルサイドフォーラム

セール: LIVE STREAM + MODERN AND CONTEMPORARY ART

日時: 2023年1月27日(金曜日)11:00~ / 28日(土曜日)11:00~

落札総額: 1,129,961,250円(落札手数料含む)

落札率: 93.9%

作品数: 526点(落札494点、不落札32点)

 

SBIアートオークションによる近現代美術のオークションが、1月27日(金)・28日(土)の2日にわたり開催された。27日はオンライン配信のみの無観客オークション、28日は代官山ヒルサイドフォーラム(東京)で従来通り会場を用いて行われた。国内だけでなく海外からの入札も多数みられ、盛況なセールとなった。半数近い作品が落札予想価格上限を超える価格で落札され、好調な競りが目立った。落札率は93.9%、落札総額11億2996万1250円(落札手数料含む・以下同)を記録している。

1日目は、マルチプル作品を中心に落札予想価格平均56~90万円程度の作品が311点出品された。単日の落札総額は、3億589万4250円、落札率は91.3%だった。2日目は、オリジナル作品を中心に落札予想価格平均183~290万円程度の作品が215点出品された。単日の落札総額は、8億2406万7000円で、落札率は前日を上回る97.7%を記録した。
トップロットを記録したのは、草間彌生のオリジナル作品LOT.435《ぶどう》(38.0×45.5㎝、アクリル・キャンバス)で、落札予想価格4000~7000万円のところ、1億4950万円で落札された。草間作品は、2日間で全28点の出品があり、その落札総額は5億372万3000円となっている。全体落札額の約45%を草間が占める結果となった。
大幅な伸びを見せて注目を集めたのは、谷口正造(1990-、たにぐち・しょうぞう)。本セールでは、2点の出品があった。LOT.314《SKY BLUE SKY》(60.6×50cm、アクリル・色鉛筆、パネル)は、落札予想価格15~25万円のところ、253万円で落札。続く、LOT.315《SUNGOES DOWN》(72.2×60.6㎝、アクリル・ペン・コラージュ・木製パネル)は、落札予想価格20~30万円のところ、368万円で落札された。どちらの作品も落札予想価格上限から10~12倍程度の伸びをみせ、国内初出品となったセールで好結果を残した。今後の活躍が期待される作家のひとりである。

今回は、Backside works. (年齢不詳、ばっくさいど わーくす)に焦点を当て、落札価格の動向を読み解く。バックサイドワークスは、福岡を拠点に活動するアーティスト。80、90年代のサブカルチャーの影響を強く受けた画風で、“実在はしないかもしれない。でも確かに存在するヒロイン”をコンセプトに、美少女をモチーフにした作品を描いている。ストリートブランドとコラボ商品を展開することなどもあり、ファッションに敏感な若い世代や海外のコレクターなどからも好評を得ている。
今回のセールでは、6点の版画作品が出品され、いずれも落札されている。6点のうち、最高落札額を記録したのは、スニーカーブランド店のオープン記念にコラボレーションして制作した作品。LOT.040 《「履かないの?」(Blue×Red)》(53.0×41.0㎝、シルクスクリーン、Ed.30)は、落札予想価格80~140万円のところ、299万円で落札された。続くLOTでは、色違い作品となる 《「履かないの?」(Black×Black)》(Ed.70)が、出品された。同じ落札予想価格に対し、195万5000円で落札されている。先のBlueは出品歴が浅く、Blackと比較しエディション数が少ないことなどが価格上昇につながったと思われる。

和装姿に大きなヘッドホンの少女が印象的な作品、LOT.038《VALIANT GIRLS》(53.0×41.0㎝、ジークレー・キャンバス)をピックアップし、その落札データをグラフ化した。

2302ACF美術品パフォーマンス指標

2302ACF美術品時価指数

2020年1月の初出品では、落札予想価格15~25万円のところ、約235万円で落札されている。落札予想価格は、出品の都度上昇傾向にあり、2022年からは、横ばい推移となっている。落札価格は、2021年前半は200万前後、2021年後半からは450万前後まで上昇。上下動はありながらも、常に落札予想価格上限を超えて落札されており、需要の高さがうかがえる。今回の出品では、落札予想価格150~250万円のところ224万2500円での落札となり、2020年以来初めて落札予想価格上限に届かず、伸び悩みを見せた。残りの3作品も落札予想価格近辺で落札されている。今回のセールでは、作品により評価が分かれる結果となった。
“ヒロイン”を描き続ける作家の今後の動向に関心が高まる。

●次回のSBIアートオークション開催予定●
第56回SBIアートオークション|Tokyo Contemporary: Redefined
2023年3月11日(土)/ 東京国際フォーラム開催 特別セール

【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-11 TFTビル東館
TEL:03-3527-6692  FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp

2023.01.31

会場: マレットジャパン オークションハウス

セール: SALE#221201  Modern and Contemporary Art

日時: 2022年12月1日(木曜日)14:00~

落札総額: 158,940,000円(落札手数料含まず)

落札率: 73.57%

作品数: 227点(落札167点、不落札60点)

 

マレットジャパンのオークションが2022年12月1日(木)に開催された。国内外136名の作家による作品が227点出品された。近現代美術から幅広いジャンルの作品を取り揃えた本セールの出来高は、落札総額1億5894万円(落札手数料含まず・以下同)、落札率73.57%を記録している。

最も注目を集めたのは、1920年代に活躍した東欧前衛派の幾何学的抽象画家ヘンリク・ベルレウィの作品LOT.218《Méditerranée Opus II》(89.0×115.5㎝、キャンバス・油彩)。落札予想価格30~40万円のところ、960万円で落札された。落札予想価格上限の24倍となる大幅な伸びで会場を沸かせた本作は、今回のセールの最高落札額作品にもなっている。
次いで高い伸び率を見せた作品は、インド出身の現代美術家サクティ・ボーマンの作品LOT.216《音楽家》(油彩・キャンバス、40.0×32.0㎝)で、落札予想価格60~80万円のところ、落札予想価格上限の約4倍の325万円で落札された。国内オークションでの出品が希少な海外作家によるユニーク作品の騰勢が目立つセールとなった。他、次世代を担う注目の若手作家のひとりである中村桃子の女性と花をモチーフにしたユニーク作品LOT.150 《静かなからだ》、LOT.151《消せない女》や、重要無形文化財「型絵染」の保持者(人間国宝)である工芸家芹沢銈介のLOT.133《法然上人絵傳》などが好調だった。いずれも落札予想価格上限の2.5~3倍程度の価格で落札されている。

日本を代表するコンセプチュアル・アーティスト、河原温(かわら・おん、1932-2014)に焦点を当てレポートする。時間や空間などを主題とし文字や数字を用いて制作された河原の作品は、国際的にも高い評価を受けている。代表作のひとつに1966年から描き始めた「Today」シリーズがある。単色平塗りの地に白い文字で制作日の日付を、その時に滞在していた場所の言語で表記した作品は「日付絵画」とも呼ばれ、3000点以上の作品が残されている。
今回出品されたのは「I Got Up」シリーズからの1点である。「I Got Up」は、日付、その日の起床時間、受取人、差出人である河原の名前と滞在場所をスタンプで記したポストカードを1960年代後半から約10年間にわたり知人や関係者である特定の人物に送り続けた連作で、ポストカード1枚そのものが作品となっている。
LOT181《「I Got Up」シリーズより》(8.9×14.0㎝、ポストカード・スタンプ)は、落札予想価格50~80万円のところ、190万円で落札された。同一シリーズ作品の2014~2022年のオークションデータを抽出したACFパフォーマンス指標*で動向を読み解く。

2301ACF美術品パフォーマンス指標

2301ACF美術品時価指数

落札予想価格は、2014年30~40万円程度から始まり、2017年には30~50万円程度に推移する2018年には上昇するが、以降2022年までは50~80万円の横ばい推移となっている。落札価格は、2014年の40万円で始まり、2年ぶりの出品となった2017年では、110万円程度まで上昇を見せる。以降2018年と2019年は、100万円前後で上下動する。そして、また2年ぶりの出品となった2022年では2019年の倍となる200万円程度まで落札価格を伸ばした。久しぶりの出品の都度大きく落札価格を上昇させている。不落札も無く、常に落札予想価格上限を上回る価格で落札されている人気の作品である。2022年の伸びがそのまま続き200万円台で推移するのか、落札予想価格付近の100万円台に転じることになるのか、今後の動向を注視していきたい。
*: 2015、2016、2020、2021年は出品データが無かった為、除いてグラフ化している。

 

●次回のマレットジャパンオークション開催予定●
2023年3月2日(木)11:00~ M-Live(オンライン)オークション
2023年3月2日(木)15:00~ マレットオークション
会場:マレットジャパン オークションハウス
※YouTubeのライブ配信やオンラインによる同時入札も行っています。

【お問合せ先】
株式会社マレットジャパン
〒102-0083 東京都千代田区麹町1-3-1 ニッセイ半蔵門ビル1F
TEL:03-5216-2480  FAX:03-5216-2481
E-mail:info@mallet.co.jp

2022.12.28

会場: 丸ビルホール(東京・丸の内)

セール: マンガ/近代美術/近代美術PartⅡ/コンテンポラリーアート

日時: 2022年11月12日(土)15:00~

落札総額:1,214,800,000円(落札手数料含まず)

落札率:92.80%

作品数:347点(落札322点、不落札25点)

 

11月12日(土)にシンワオークションのセールが開催された。本セールでは、マンガ(47点)、近代美術(64点)、近代美術PartⅡ(206点)、コンテンポラリーアート(30点)の4ジャンルより、絵画・書・工芸などの良品が合計347点出品され、うち322点の作品が落札された。落札総額は12億1480万円(落札手数料含まず・以下同)、落札率92.8%の好結果となった。

大きな競り上がりをみせた作品が際立ったのは、中川一政のコレクション76点を含む近代美術PartⅡのセールだった。LOT.71伊東深水の優れた描写力による美人画(3点組・新版画)は、落札予想価格2~5万円のところ、落札予想価格上限に対し230倍の1150万円で落札された。また、風景版画に定評がある川瀬巴水の作品も勢いある結果を残している。関東大震災後の東京風景を描いた20枚のシリーズのうちの1枚であるLOT.116《芝増上寺》(38.3×26.0㎝、新版画)は、落札予想価格2~5万円に対し落札予想価格上限の31倍の155万円で落札され、新版画の好調が印象に残るセールとなった。

コンテンポラリーアートは、大型作品や既に国内外で高い評価を得ている作家の作品を揃え、落札総額を4億9123万円まで伸ばしている。落札予想価格を大幅に上回る作品は少なかったものの、27点の作品が順当に落札された。セール終盤には、高額落札が続き、注目を集めた。本セールでトップロットを飾った作品は、抽象画の先駆者として知られる山口長男の大作LOT351《圧》(182.5×182.3㎝、油彩・板)。落札予想価格7000万~1億4000万円のところ、落札予想価格内の1億3500万円で落札されている。

今回は、世界的なアーティストのひとり草間彌生(くさま・やよい、1929‐)にスポットを当てる。草間は、絵画や彫刻、インスタレーション、パフォーマンスアートだけでなく、詩や文学、ファッションなど様々な分野において独創的な世界観で輝かしい功績を残している。2016年には、その功績が高く評価され、文化勲章を受章している。水玉模様や網模様などを絵画や立体に反復・増殖させて描く作品で知られ、中でも、カボチャをモチーフにした作品は格別の人気を博している。
本セールでは、オリジナル作品3点、マルチプル作品6点、全9点の作品が出品された。全ての作品が落札され、その落札総額は、1億5070万円を記録した。最高落札となったのは、LOT350《かぼちゃ》(24.5×33.3㎝、アクリル・キャンバス)で、落札予想価格7000万~1億円のところ、1億700万円で落札された。他にもカボチャをモチーフにした作品は高額で落札され、版画作品は落札予想価格上限の1.5~1.9倍程度で落札されている。
今回はそのカボチャモチーフの版画作品のうち、LOT331《かぼちゃ(RY)》(27×32.5㎝、シルクスクリーン)をピックアップし、出品が見られた直近5年分の落札データをまとめたACF美術品パフォーマンス指標で読み解く。

2212ACF美術品パフォーマンス指標

2212ACF美術品時価指数

2013~2016年では、落札予想価格80~120万円に対し、100万円前後で落札されていた。2019~2021年には、落札予想価格が150~200万円まで上昇し、落札価格も240~420万円に上昇した。2022年は落札予想価格300~450万円に上昇し、870万円前後で落札されている。版画作品ではあるが、10年間で9倍以上の伸び率を示している。草間彌生の作品は、国内のオークションだけでなく、海外のオークションにおいても堅調で、世界中のコレクターからも注目が集まる。芸術価値、資産価値がともに高い草間の評価は不動のものといえよう。

最近では、ハイブランド“ルイ・ヴィトン”と10年ぶりとなるコラボレーションコレクションを発表することが話題となっている。そのプレローンチイベントが始まり、東京都内各所では特別なインスタレーションを公開中である。草間の活躍は続く。

 

●次回のシンワオークション開催予定●
2023年1月28日(土)15:00~
近代美術/コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ オークション

Shinwa Auction|シンワオークション
【お問合せ先】
Shinwa Auction株式会社
〒104-0061 東京都中央区銀座7-4-12 銀座メディカルビル2F
TEL:03-3569-0032   E-mail:info@shinwa-auction.com

2022.11.28

セール: Modern and Contemporary Art

日時: 2022年10月28日(金曜日)13:00~・29日(土曜日)13:00~

落札総額:1,458,625,500円(落札手数料含む)

落札率:95.1%

作品数:308点(落札293点、不落札15点)

 

10月28日(金)・29日(土)の2日間、代官山のヒルサイドフォーラムにて、SBIアートオークションによるモダン&コンテンポラリーアートの今年最後のオークションが開催された。本セールでは、国内外で活躍する現代美術家による作品が308点出品された。落札総額は14億5862万5500円(落札手数料含む・以下同)、落札率は95.1%と高記録を達成している。落札作品の半数以上が落札予想価格上限を超えて落札されており、落札予想価格上限に対し3~5倍程度の伸びをみせた作品もあった。国内外のアートコレクターから多くの入札が集まり、2022年のラストを飾るにふさわしい活気に満ちたセールとなった。

1日目は、落札予想価格平均77~125万円程度のマルチプル作品を中心に148点の出品があった。単日の落札総額は2億3623万3000円。不落札はわずか3点で落札率は97.9%となっている。2日目は、落札予想価格平均399~638万円程度のオリジナル作品を中心に160点の出品があった。単日の落札総額は、12億2239万2500円で、落札率は92.5%となっている。2日間通しての高額落札ランキングには、草間彌生、ロッカクアヤコ、村上隆などお馴染みの名前が並んだ。中でも、注目を集めたのは、ペインティング作品オークション初出品(毎日オークションでは2020~2022年に5点のポスターの出品があったが、いずれも不落札)となった武田鉄平の作品。本セールのカタログ表紙にもなっていた抽象的な肖像画LOT.153《絵画のための絵画012》(91.0×72.7㎝、アクリル・油彩・紙・パネル)が、落札予想価格150~250万円のところ、4830万円で落札され、本セールでの高額落札ランキング5位に入った。新進気鋭の若手作家の作品が驚異の伸びをみせ、会場を沸かせた。

今回は、岡﨑乾二郎(おかざき・けんじろう、1955-)をピックアップし、レポートする。岡﨑は、造形作家で数多くの国際展にも出品し、国内外で名を馳せる作家の一人である。抽象表現を基礎とした絵画を中心に、彫刻、建築、映像など幅広いジャンルで作品を展開しているほか、美術批評を主に執筆活動も行っており、美術批評家としても知られている。

今回のセールでは、オリジナル作品が2点出品された。LOT.200《恥ずべきことを恥じず恥ずかしくないことを恥じる、石ではなく体は、その上で消えていった雪のことを決して忘れない。立派な大理石はぼろぼろになるまで何百年もかかる(その間、あたまの上に広がっているのは空だけ)。石像として立つより(どうにもならぬ)体をあずかり、ひょっこり斃れるまで(わずかの年月)波と空のあはひにいて、戯れる。》(91.0×72.5×5.5㎝、アクリル・キャンバス)は、落札予想価格150~250万円のところ、575万円で落札されている。大型のキャンバスに数色の絵具を厚めに擦り付けるように描かれた抽象絵画は、落札予想価格上限の2倍の伸びをみせた。岡﨑の作品は、タイトルが詩的である点もスタイルのひとつで、大型作品になるとLOT.200 の作品のように非常に長いタイトルがつけられている。視覚と言語の両面から奥深く岡﨑の世界観を感じることができる。

続いて出品されたLOT.201《依怙贔屓(えこひいき)/気を揉む樅の木》(23.0×16.5×3.0㎝、アクリル・キャンバス)は、落札予想価格50~100万円のところ、126万5000円で落札された。小さいキャンバスにダークカラーの絵具をしっかり塗りつけた本作は、“ゼロ・サムネイル”シリーズという0号やサムホールサイズの抽象画を削り出しの木枠にはめ込んだ作品シリーズの1点である。
今回は、ゼロ・サムネイルシリーズの動向をACFパフォーマンス指標で読み解く。

2211ACF美術品パフォーマンス指標

2211ACF美術品時価指数

2016年の出品では、落札予想価格平均20~30万円のところ、落札予想価格内の25万円程度で落札されている。以降の3年間は出品が見られず、久しぶりの出品となった2020年では、落札価格が100万円近くまで上昇した。翌2021年は、作品1点のみの落札データになるが、落札価格は前年の2倍近くまで上昇している。大幅な上昇を見せた2021年の作品は、ライトカラーの数色による大らかな印象の抽象画が木枠にはめ込まれた作品だった。今回の出品作品のようなダークカラーの作品より、評価が高い傾向にあるのかもしれない。同じシリーズでも、作風によって人気や評価の違いが出てくることがある。2022年では、落札予想価格平均が50~95万円まで上昇している。それに対し、落札価格平均は112万円程度まで下降を見せた。しかしながら、落札予想価格上限は超えて落札されており、安定している。作風の違いによる上下動はあるかもしれないが、現状では100万円前後がひとつの目安というところであろう。

●次回のSBIアートオークション開催予定●
第55回SBIアートオークション
LIVE STREAM:2023年1月27日(金)
Modern and Contemporary Art:2023年1月28日(土)

【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-11 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692  FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp

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