会場: マレットジャパン オークションハウス
セール: SALE#2200908 Modern and Contemporary Art
日時: 2022年9月8日(木曜日)14:00~
落札総額: 236,020,000円(落札手数料含まず)
落札率: 76.23%
作品数: 244点(落札186点、不落札58点)
2022年6月に江東区から千代田区半蔵門へオフィスを移転したマレットジャパンの移転後初となるオークションが9月8日(木)に開催された。国内作家82名、海外作家61名による近現代美術の作品が244点出品された。洋画、日本画などの絵画作品の他、立体、陶芸、写真など作品種も豊富に揃ったセールだった。会場だけでなく、オンラインからのビッドも活発に展開され、落札総額は2億3602万円(落札手数料含まず・以下同)、落札率は76.23%を記録した。
勢いのある競りで注目を集めたのは、3点のオリジナル作品の出品があった今津景。今津は、作品のコンセプトに基づいて収集した画像データをコンピューターに落とし込み、それらを画像編集ソフトで画面構成し、独自の仮想空間を構築。その仮想空間を元に、キャンバスに油彩で描きあげるという独自のスタイルで作品を手掛けている。最近のオークションで値動きが目立つ作家のひとりである。LOT.237《Green Relax》(72.5×90.6㎝、キャンバス・油彩)は、落札予想価格30~40万円のところ、280万円で落札され、落札予想価格上限の7倍と大幅な伸びをみせた。続く2点も順当に落札され、LOT.238《作品》(145.0×97.0㎝、キャンバス・油彩)は400万円、LOT.239《Broadcaster》(130.3×162.1cm、キャンバス・油彩)は、410万円での落札を記録し、いずれも落札予想価格上限の約3~4倍という大きな競り上がりを見せた。次世代を担う注目の若手作家の今後の活躍に期待が高まる。
トップロットを飾ったのは、最終LOTで出品されたロッカクアヤコの作品。LOT.245《Untitled》(105.5×100.0㎝、キャンバス・アクリル)は、落札予想価格2500~3500万円のところ、上限を大きく上回る4800万円で落札された。ロッカクは、他にセラミックの立体作品やラグなど、全4点が出品されている。トップロットを記録した作品以外は、落札予想価格内に留まった。ロッカクの出品だけで落札総額は6450万円を記録し、今回の全落札総額の27.3%を占める結果となった。ロッカクの堅調は続く。以降の高額落札には、カシニョール、草間彌生、ユトリロ、今井麗が名を連ね、600~800万円台での落札となっている。今回のセールでは、フランス人作家の優品が多く出品され、好結果を残している。
今回は、匿名をテーマに日本で活躍するアーティスト AUTO MOAI(おーともあい、1990年~)に焦点を当てる。AUTO MOAIは、デザイン系の専門学校でグラフィックなどを学び、2015年より作品制作を開始。現在に至るまで、ミュージシャンのCDジャケットや人気アパレルブランドへのアートワーク提供、イベントフライヤーも多数手掛けており、イラストレーターとしても認知度が高い。2021年には、香港や韓国でも個展を開催し、国際的にも活躍の場を広げている。
“消費される匿名の20代の女性”をメインモチーフにしたAUTO MOAIの作品には、表情を持たない人物が多く存在する。社会における個人の希薄さをテーマに、他人と自分、夢と現実など全ての境界線を取り払ったフラットな世界を表現するため、人物には表情を描かないという。
本セールには2点が出品された。1点は、表情を持たない女性の全身像をモノクロで描いた版画作品のLOT.084《作品》(9.3-13.2×3.7-13.3㎝、シルクスクリーン、5点セット)で、落札予想価格10~15万円のところ、21万円で落札された。もう1点のLOT.241《ルビールーム》(72.5×60.5cm、キャンバス・油彩)は近年手掛けるようになった油彩作品で落札予想価格70~100万円で出品されたが、不落札に終わった。過去数回の出品があったLOT.084《作品》をピックアップし、ACF指標より動向を読み解く。
2021年2月の初出品から今回まで、落札予想価格は変わらず10~15万円で出品されている。初出品時の落札価格は30万円で、予想価格上限の2倍を記録した。2021年4月、9月と右肩下がりで16万円まで下降するが、1年後となる今回のセールで21万円まで上昇し、調子を戻している。下降はみられたものの、常に落札予想価格上限を超えて推移しているのは高い支持を得ているからであろう。AUTO MOAIの象徴的な作品に人気が集まっている。今後、更なる上昇を見せるのか動向を注視していきたい。
●次回のマレットジャパンオークション開催予定●
2022年12月1日(木)
会場:マレットジャパン オークションハウス
※YouTubeにて、ライブ配信も行っています。
【お問合せ先】
株式会社マレットジャパン (6月20日より住所が変わりました)
〒102-0083 東京都千代田区麹町1-3-1 ニッセイ半蔵門ビル1F
TEL:03-5216-2480 FAX:03-5216-2481
E-mail:info@mallet.co.jp
セール: BID FOR SUMMER
日時: 2022年7月15日(金曜日)13:00~・16日(土曜日)13:00~
落札総額:851,701,500円(落札手数料含む)
落札率:93.9%
作品数:329点(落札309点、不落札20点)
7月15日(金)・16日(土)の2日間に渡って開催されたSBIアートオークションについてレポートする。両日とも、会場を設けないとして開催された。開催前の2 日間、通常のオークションと同様に下見会も行われ、作品の状態などを実際に確認できる機会も設けられた。本セールでは、国内外で活躍する現代美術の作品が329点出品され、落札総額8億5170万1500円(落札手数料含む・以下同)、落札率は93.9%を記録している。落札作品の70%ほどが、落札予想価格上限を超えて落札されており、活気のあるセールとなった。
1日目は、落札予想価格平均27~43万円と、購入しやすい価格帯のマルチプル作品を中心に163点の出品があった。単日の落札総額は1億889万9250円、落札率は95.7%と盛況なセールとなった。わずか7点の不落札には、セール終盤に多く出品された写真作品が目立った。最高落札額を記録したのは、LOT.050小松美羽《干支神獣》(I.53.0×53.0、シルクスクリーン、Ed.50)。お馴染みの十二支の各モチーフに、小松独自の解釈による「猫」のモチーフを加えた13点の《干支神獣》コンプリート版は、落札予想価格500~800万円のところ、1380万円で落札された。次点には、ロッカクアヤコのLOT.045《早生まれ行進曲》(S.44.5×59.5㎝、シルクスクリーン、Ed.66)が続く。落札予想価格150~250万円のところ、575万円で落札されている。
2日目は、落札予想価格平均158~248万円程度のオリジナル作品を中心に166点の出品があった。単日の落札総額は7億4280万2250円で、落札率は92.2%だった。マルチプル作品で好結果を残していたロッカクアヤコが、オリジナル作品でも金額を伸ばし、今回のオークションのトップロットとなった。ロッカクらしい色鮮やかな色彩の中につり目の少女を描いた作品LOT.194《Untitled》(100.0×150.0㎝、アクリル・キャンバス)は、落札予想価格4000~7000万円のところ、上限の倍以上となる1億8400万円で落札された。2022年5月にクリスティーズ(香港)において、約1億4000万円の落札で自身のオークションレコードを更新したばかりだったが、本作でその記録を更新している。ロッカクの勢いは止まらず、次点もロッカクアヤコの作品が続く。LOT.193《Untitled》(90.0×60.0㎝、アクリル・キャンバス)は、落札予想価格2500~3500万円のところ、8395万円で落札された。ロッカクアヤコの作品は2日間で5点の出品があったが、いずれも落札予想価格を上回る価格で落札されている。安定した人気の高さがうかがえる結果となった。
両日にわたり出品があったKYNE(キネ、1988-)をクローズアップする。2006年頃から地元である福岡を拠点にグラフィティアーティストとして活動を開始したKYNE。ストリートアートから注目を集め、現在では、ファインアート界においても知名度が高いアーティストのひとりである。余計な表現をそぎ落とし、平面にモノクロでクールな表情の女性をシンプルに描く表現が特徴的で、1980年代の大衆文化の影響を受けた作風に多くのファンが魅了されている。
今回のセールでは、合計6点(山口歴とのコラボレート作品1点を含む)の出品があった。いずれも落札予想価格上限を超えて落札されており、評価を高める結果となっている。中でも、コーヒーカップを手に持つ女性を描いたLOT.009《Untitled》(S.48.0×60.0㎝、シルクスクリーン、Ed.100)の動向をACF指標により読み解く。本作は、2018年に雑誌『Casa BRUTUS』 のカフェとロースター特集号で表紙を飾った作品で、KYNE作品の中でも人気が高い作品である。落札予想価格150~250万円のところ、460万円で落札されている。
2019年の出品では、落札予想価格平均10~20万円のところ90万円近くで落札され、落札予想価格上限平均の4倍を超える価格での落札となっている。以降、落札予想価格平均、落札価格平均ともに右肩上がりで推移し、2022年には落札予想価格平均が、落札価格平均は330万円程度まで上昇する。時価指数中央値も年毎に100万円単位で順調に価格を上昇させている。この好調がどこまで続くか、今後の動向が期待される。
●次回のSBIアートオークション開催予定●
第53回SBIアートオークション|LIVE STREAM AUCTION
2022年9月16日(金)・17日(土)
【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-11 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp
会場: Shinwa Auction(シンワオークション) 銀座メディカルビル1F・2F・B1F
セール: マンガ/近代美術/近代美術PartⅡ/コンテンポラリーアート
日時: 2022年7月9日(土曜日)13:00~
落札総額: 586,555,000円(落札手数料含まず)
落札率: 81.04%
作品数: 480点(落札389点、 不落札91点)
7月9日(土)にシンワオークションのMANGA、近代美術、近代美術PartⅡ、コンテンポラリーアートのセールが、銀座メディカルビルにて開催された。落札総額は、5億8655万5000円(手数料含まず・以下同)、落札率は81.04%となっている。ジャンルそれぞれの点数内訳は、マンガ作品92点、近代美術127点、近代美術PartⅡ187点、コンテンポラリーアート74点で、合計480点もの美術品が出品された。絵画、彫刻だけでなく、陶芸、小判、碁盤・碁石セットなどバラエティに富んだ内容で、多くのコレクターを楽しませるセールとなった。
全作品の中でトップロットを記録したのは、近代美術より出品されていた佐藤玄々のLOT.410《大慈大悲救世観世音菩薩》(H83.3×W26.2×D26.2cm、木彫・彩色)。高い技術力による緻密な彫刻と装飾性に富んだ色彩で仕上げられた菩薩像は、落札予想価格1000~2000万円に対して1億1500万円で落札された。落札価格上限の5.75倍の大きな伸びで、会場を沸かせた。佐藤は、日本橋三越本店1F中央ホールに展示されている《天女像 まごころ》や竹橋駅2番出口そばにあるブロンズ《和気清麻呂像》などの作者として知られている。日本を代表する彫刻家の希少な優品に注目が集まった。
コンテンポラリーアートでは、27名の作家による作品が74点出品された。他のジャンルよりも、出品数は少なかったものの、落札総額は1億3499万円を記録している。落札率は80.08%だった。コンテンポラリーアート内で、トップロットとなったのは、草間彌生のLOT.485《蝶》(14.1×17.8㎝、キャンバス・アクリル)で、落札予想価格2000~3000万円のところ、2800万円で落札された。小さい作品にも関わらず、最終ロットにふさわしい好結果を残した。次いで、アンディ・ウォーホルの作品(LOT.479~482)が、4点が続く。1983年当時、世界で絶滅危惧種とされていた10の動物をモチーフにしたシルクスクリーン作品(96.5×96.5㎝、Ed.150)の中から、カエル、蝶、オラウータン、白頭ワシの出品があった。いずれも落札予想価格300~500万円のところ、落札予想価格上限に対し、3~5倍程度の1600~2700万円で落札され、4点の落札総額は8500万円となっている。ウォーホルの作品は、上昇傾向を見せており、好調が続いている。
今回は、小松美羽(こまつ・みわ、1984-)をクローズアップし、レポートする。小松は、迫力ある構図やサイケデリックな色合いで、目力の強い狛犬や龍などの神獣を独創的に描く作風で知られ、国内外で高い評価を得ている若手現代作家。自身の個展会場などで行うライブペインティングが人気が高く、躍動感あふれるパフォーマンスではたくさんの観客を魅了している。“美しすぎるアーティスト”としてテレビなどメディアへの出演も多く、知名度も高い作家のひとりである。
本セールでは、お馴染みの十二支の各モチーフに、小松独自の解釈による「猫」のモチーフを加えた13点の《干支神獣》シリーズより、2点の出品があった。LOT.452《干支神獣 子》、LOT.453《干支神獣 酉》(各イメージ52.9×53.0㎝、シルクスクリーン、ed.50 )は、落札予想価格50~80万円のところ、落札予想価格内の74万円で落札されている。
同一シリーズの落札データを抽出したACF指標により、その動向を読み解く。
初出品の2020年では、落札予想価格平均が約20~30万円に対し、200万円程度で落札されており、驚異的な落札結果となった。その結果を受け2021年には、落札予想価格平均は若干上昇するが、落札価格平均は100万円程度まで下降する。2022年7月10日までのデータでは、落札予想価格平均は横ばい、落札価格平均は90万程度となる。出品当初の過度な跳ね上がりにより、右肩下がりのグラフになっているが、常に落札予想価格上限を上回る落札価格で推移してきた。また、15日(金)に開催されたSBIアートオークションでは、《干支神獣》13点のコンプリート版が出品され、落札予想価格500~800万円のところ、1200万円で落札された。コンプリートの希少性もある為、比較は難しいが、単純に点数で換算すると1点あたり92万円程度となり、今回の落札額より高値での落札となっている。2022年、最終的に落札予想価格上限付近での堅調推移となるか、これからの展開が期待される。
●次回のシンワオークション開催予定●
2022年9月17日(土)
近代美術/近代美術PartⅡ/コンテンポラリーアート オークション
近代陶芸/近代陶芸PartⅡ
Shinwa Auction|シンワオークション (shinwa-auction.com)
【お問合せ先】
Shinwa Auction株式会社
〒104-0061 東京都中央区銀座7-4-12 銀座メディカルビル2F
TEL:03-3569-0032 E-mail:info@shinwa-auction.com
会場: マレットジャパン オークションハウス
セール: SALE#220519 Modern and Contemporary Art
日時: 2022年5月19日(木曜日)14:00~
落札総額: 204,469,150円(落札手数料含む)
落札率: 75.5%
作品数: 208点(落札157点、不落札51点)
マレットジャパンの近現代美術のオークションが5月19日(木)に開催された。
国内作家48名、海外作家77名による版画、絵画、立体、陶芸など208点の作品が出品された。今まで会場入札、書面・電話での入札のほか、海外サイト(Invaluable)を通じてのみ行っていたライブビッドが、今回のセールより、マレットジャパン独自のオンライン同時入札(ONLINE LIVE BID)システムが導入され、パソコンやスマートフォンを通じて外出先でも気軽にオークションに参加することが出来るようになった。セールの落札総額は2億446万9150円(落札手数料含む・以下同)、落札率は75.5%だった。KAWSのフィギュアや村上隆のマルチプル作品がやや不調だったものの、ピエール・スーラージュやウアンディ・ウォーホル、ディヴィッド・ホックニーなど海外作家の版画作品などが好調で活気のあるセールとなった。
本セールで、最高落札額を記録したのは、ロッカクアヤコの作品。背景は控えめに眼差しが印象的な少女を描いた大型作品LOT.073《Untitled》(120.0×75.5cm、段ボール・アクリル)は、落札予想価格600~800万円のところ、落札予想価格上限を上回る1572万7500円で落札された。ロッカクの堅調が続いている。次点となったのは、李禹煥のLOT.064《From Winds》(27.2×22.0cm、キャンバス・岩彩)で、落札予想価格300~400万円のところ、720万円で落札された。1980年代の代表作シリーズの1点でもある本作は、小さめの作品ながら、大きな競り上がりをみせた。3番目には、バンクシーがランクインしている。LOT.003《Pulp Fiction》(41.7×62.7cm、シルクスクリーン、ed.600)は、落札予想価格400~600万円のところ815万5000円で落札された。映画「パルプ・フィクション」の有名なワンシーンをオマージュした作品で、二人の俳優が拳銃を構えるべき手にはバナナが描かれている。バンクシーらしい風刺が込められた本作は、版画作品の中でも人気を博す1点である。
既に高い評価を得ている作家が好成績を収め、評価を堅固する結果となった。
落札価格上限を大幅に上回る落札金額で注目を集めたのは、LOT.080~082まで、3点のオリジナル作品の出品があった今井麗。近年、活躍が目立つ作家の一人で、トーストや果物、ぬいぐるみなど、日常の身近なモチーフを油彩で描くことで知られている。トーストが置かれた食卓の席につくクマが描かれたLOT.080《お預けのクマ》(45.0×38.2cm、キャンバス・油彩)は、落札予想価格60~90万円のところ、733万9500円で落札された。3作品とも落札予想価格上限の約7~8倍の金額で落札される高騰をみせ、今後の価格上昇にも期待が寄せられる。
今回は、細川真希に焦点を当てる。細川真希(ほそかわ・まき、1980年~)は、西洋美術の哲学や学術的技法などにこだわらず、自由に描かれたPOPな作風が人気で、近年のオークションでも熱を帯びた入札が展開されている若手現代作家の一人である。
本セールでは4点のオリジナル作品が出品された。いずれも落札予想価格上限を上回る金額で落札された。最も高額落札となったのは、フェルメールの《水差しを持つ女》をオマージュした作品LOT.083《窓辺で水差しを持つ女のように》(91.0×91.0cm、キャンバス・アクリル)で、落札予想価格200~300万円のところ、512万6000円で落札された。細川は、他にも名画をオマージュした作品を多く制作しているが、オークションでは人気が高く、いずれも好結果を残している。
細川のオリジナル作品から、数回の出品歴があった1点をピックアップし、ACF指標より、その動向を読み解く。作品は、大きな目の少女を画面サイズ大に描いた《I Hear Sound of Water》(130.0×97cm、キャンバス・アクリル)。2018年、国内のNew art Est-Ouestオークションに初出品された作品で、落札予想価格15~25万円のところ、落札予想価格下限を下まわる約13万円の落札だった。しかし、3年後の2021年、SBIアートオークションに出品された際、落札価格は約310万円まで上昇。翌2022年には、約680万円と驚異の伸びをみせた。
細川の作品は、国内オークションよりも韓国、香港オークションでの流通が目立つ。2022年のデータも韓国で開催されたオークションの結果である。国内よりも早く人気の高まりがあった分、落札予想価格、落札価格ともに高騰傾向が強く表れている。過熱気味の価格高騰の反面、既に沸点に達したかのような停滞気味の結果も散見され、韓国では上げ止まりの傾向にあることも考えられる。現在の主たる換金市場が韓国となっている作家が、自国のマーケットでどこまでの活躍を見せるか今後の動向に関心が向けられる。
●次回のマレットジャパンオークション開催予定●
2022年9月8日(木)14:00~
会場:マレットジャパン オークションハウス
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
※YouTubeにて、ライブ配信も行っています。
【お問合せ先】
株式会社マレットジャパン (6月20日より住所が変わりました)
〒102-0083 東京都千代田区麹町1-3-1 ニッセイ半蔵門ビル1F
TEL:03-5216-2480 FAX:03-5216-2481
E-mail:info@mallet.co.jp
会場: 羽田空港第1ターミナル内 ギャラクシーホール
セール:United Asian Auctioneers
Shinwa Auction× LARASATI Auctioneers × iART auction ×
KUANGSHI × A|A|A|A × ISE COLLECTION オークション
日時: 2022年3月30日(水曜日)
DAY SALE 14:00~ / EVENING SALE 18:00~
落札総額: 3,145,720,000円(落札手数料含まず)
落札率: 82.01%
作品数: 239点(落札196点、 不落札43点)
3月30日(水)、シンワオークションの主導により、国内外の複数のオークションハウスが参画し、保税蔵置場(保税地域)を活用した保税アートオークションが開催された。保税蔵置場とは、関税法に規定する保税地域の一種で、その保税地域に指定された場所では、外国貨物の積卸し、運搬、蔵置などの行為ができるというもの。輸出入にかかかる余計な手続きや課税などが不要となる為、取引がスムーズに行われるようになる。海外コレクターには、利便性が高まる。本セールでは、9点の作品が保税対象での出品となっていた。
今回は、デイセール(14時開始)、イブニングセール(18時開始)の2部制で行われたセールのうち、イブニングセールについてレポートする。イブニングセールでは、NFT3点、絵画51点、立体2点、合計56点の作品が出品された。出品作品数は少なかったものの、高額作品の出品が多く、落札総額は、30億7058万円、落札率は95.86%(不落札4点)と盛況なセールとなった。
セール終盤には、落札予想価格が数千万円台となる著名作家による作品・貴重な優品が連続して出品された。会場だけでなく、電話、パソコン・スマートフォンからの入札で熱い競りが展開された。最高落札額を記録したのは、オークションの最終LOTで目玉作品にもなっていたアンディ・ウォーホルのLOT.356《Silver Liz(Ferus Type)》(101.6×101.6㎝、キャンバス・シルクスクリーン)。ハリウッド映画の黄金時代を代表する女優の一人であるエリザベス・テイラーをモチーフにした作品で、落札予想価格23億~34億5千万円と高額設定の中、落札予想価格下限同額の23億円で、会場参加者によって落札された。国内オークションでも記録的な高額落札に、落札直後には会場から拍手が沸き上がった。
次点となったのは、LOT.352山口長男の《五つの線》(180.0×180.0㎝、板・油彩)。1954年「二科展」、1955年「サンパウロ・ビエンナーレ展」などに出品された作品。落札予想価格7000万~1億2000万円のところ、落札予想価格上限を上回る1億4500万円で落札された。次いで高額落札となったのは、LOT.355ポール・デルポー《灰色の都市》(138.4×156.6㎝、キャンバス・油彩)。古代建築の街と裸婦を描いた作品は、落札予想価格1億2000万~2億円のところ、落札予想価格下限同額の1億2000万円での落札となった。既に評価が高い作家の100㎝を超える大型のオリジナル作品が好結果を残した。
今回は、アンディ・ウォーホル(1928-1987)をクローズアップする。ウォーホルは、世界的にも有名なアメリカの代表的なポップアーティスト(大量生産・大量消費の大衆文化を主題としている)である。代表的な作品には、キャンベルスープのスープ缶をモチーフにした作品があり、アートに興味がない人も一度は目にしたことがあるのではないだろうか。
ウォーホルの作品は世界の各オークションハウスで多数が取引されており、没後30年を経過しても今なお人気が高く、安定して取引されている。
本オークションでは、先の最高落札額作品の他、シルクスクリーン作品6点、合計7点の出品があった。いずれも落札予想価格下限もしくは上限を超えて落札され、ウォーホルの落札総額は、23億5085万円となっている。
LOT.325《Joseph Beuys in Memoriam》(81.3×60.6㎝、シルクスクリーン)をピックアップし、ACF美術品パフォーマンス指標注で動向を読み解く。本作は、ヨーゼフ・ボイス(ドイツの現代美術家)を追悼して制作された作品で、迷彩柄を背景に第二次世界大戦でも従軍したボイスの肖像が描かれている。落札予想価格100~200万円のところ、落札予想価格上限の3倍となる600万円での落札となった。
同一作品の落札データを遡ると、2014年に初出品されたが不落札となっており、2015年以降、1年1~2作品ペースでの出品があった。2018年は、落札予想価格150~190万円のところ、落札予想価格上限を上回る280万円で落札されている。以降、落札予想価格は多少上下動しながら、2022年には100~200万円程度となる。落札価格は2021年まで落札予想価格上限の1.2~1.5倍程度、300万円前後で推移していた。今回の上昇は、応札による異常な高騰ともみてとれるが、今後、ウォーホル作品全体的に上昇傾向がみられるかもしれない。
その後、5月9日、クリスティーズ・ニューヨークで開催されたオークションでは、ウォーホルの代表作の一つであるマリリン・モンローをモチーフにしたシルクスクリーン作品《Shot Sage Blue Marilyn》が1億9504万ドル(約253億円)で落札された。20世紀の作品では史上最高額での落札となり、話題を集めた。
POPアートの先駆けとして、後世の作家にも多大なる影響を残したウォーホル。既に高い評価を得て安定した推移をみせていた作家の再評価は、価値と安定性をより一層高めることになった。今度の動向も注視していきたい。
注:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、落札手数料を含む。
直近5年間のデータをグラフ化している。
●次回のシンワオークション開催予定●
2022年7月9日(土)
近代美術/近代美術PartⅡ/MANGA オークション
コンテンポラリーアート オークション
Shinwa Auction|シンワオークション (shinwa-auction.com)
【お問合せ先】
Shinwa Auction株式会社
〒104-0061 東京都中央区銀座7-4-12 銀座メディカルビル2F
TEL:03-3569-0032 E-mail:info@shinwa-auction.com