会場: Shinwa Auction(シンワオークション) 銀座メディカルビル1F・2F・B1F
セール: 戦後美術&CONTEMPORARY ART
日時: 2021年10月9日(土曜日)15:00~
落札総額: 128,960,000円(落札手数料含まず)
落札率: 90.05%
作品数: 201点(落札181点、 不落札20点)
今回は、10月9日(土)に開催されたシンワオークションについてレポートする。
絵画や版画の平面作品165点、フィギュアなどの立体作品32点、スニーカーやポットなどのコラボグッズ4点、全201点がセールにかけられた。全体の出来高は、1億2896万円(落札手数料含まず・以下同)。落札予想価格上限を上回る高値で落札される作品は36点と少なかったものの、不落札となったのはわずか20点で、落札率90.05%の活気のあるセールとなった。
今回のセールでは、アフターと呼ばれる作品の出品が目立った。出品作品の34.8%がアフターだった。アフターは、作家本人ではなく、他人の手による制作物とされている。作家本人が監修をしている場合もあるが、作家の死後、著作権継承者の監修、許可のもとで、ギャラリーや百貨店などが制作したものなども含まれている。オリジナル作品と比べて安価となる為、作品購入の敷居は低い。人気作家の作品を気負いなく楽しみたい人には貴重な作品となる。既に評価が高い作家の高額作品だけでなく、アフターも織り交ぜた出品構成は、オークション初心者も気軽に参加でき、アート作品購入の機会が身近となるような内容だった。
最高額で落札されたのは、最終LOTの石田徹也による作品LOT.202《無題》(32.5×49.0㎝、キャンバス・アクリル)で、落札予想価格2000~4000万円のところ2500万円で落札された。2005年に31歳の若さで急逝した石田の希少価値のあるオリジナル作品に注目が注がれた。
次いで、高額落札となったのは、LOT.188バンクシーの《Get Out While You Can》(50.0×34.8cm、シルクスクリーン)で、落札予想価格700~1000万円のところ、840万円で落札された。今回のセールでは、50点にのぼるバンクシー作品の出品があった。その内、48点はアフターやアフターの複数点組みでの出品となっている。予想価格上限を上回る価格で落札された作品も多く、バンクシーの人気を色濃く印象付ける結果となった。
今回は、アメリカの現代美術家ジェフ・クーンズ(Jeff Koons、1955-)に焦点を当て、レポートする。クーンズは、キッチュ(安っぽいもの、俗悪なもの)という美意識を露骨なまでに表現した作風で知られている。2019年5月にニューヨークで開催されたオークションでは、1m大のステンレス製彫刻《ラビット》が約100億円で落札され、大きな話題となった。存命作家の最高落札額となった記録は、現在も不動のものとなっている。世界でも有名な現代芸術家のひとりと言えよう。
本セールでは、アフター3点組作品1点含む、合計4点の立体作品の出品があった。いずれの作品も落札予想価格内で落札されている。LOT.185~187はバルーンアートのうさぎ、スワン、サルを形どった999点限定の磁器による作品。磁器の表面にはミラー状の反射加工を施し、複雑な箇所も精巧に仕上げ、ステンレス鋼で制作された大型のオリジナル彫刻を忠実に再現している。
それぞれ落札予想価格100~150万円のところ、110万円で落札された。その中でも、うさぎの作品《Balloon Rabbit (Red)》(H27.4×W14.0×D18.4㎝)をピックアップし、ACF美術品パフォーマンス指標注*で動向を読み解く。落札金額平均は、2017年の186万円から始まり、2018年には200万円程度まで上昇するが2019年に165万円まで下降し、2020年からは180万円前後横ばい、落札予想価格上限平均付近を上下動しながら推移している。落札価格の中央値も、2019年の158万円を底に180万円前後で推移している。今回の落札価格110万円は、お買い得価格だったように見受けられる。
注:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、2017~2021年10月までのオークションデータからグラフ化している。
●次回のシンワオークション開催予定●
2022年1月29日(土)15:00~
会場:銀座メディカルビルB1F・1F・2F
※Shinwa Auction LIVE ライブビッディング
パソコン・スマートフォンからリアルタイムでオークションへご参加いただけます。
(前日15時までの申し込みが必要)
【お問合せ先】
Shinwa Auction株式会社
〒104-0061 東京都中央区銀座7-4-12 銀座メディカルビル2F
TEL:03-3569-0032 E-mail:info@shinwa-auction.com
会場: インターネット配信
セール: LIVE STREAM
2021年9月17日(金曜日)15:00~
2021年9月18日(土曜日)13:00~
落札総額: 345,845,250円(落札手数料含む)
落札率: 96.4%
作品数: 411点(落札396点、不落札15点)
9月17日(金)・18日(土)の2日間に渡って開催されたSBIアートオークションのライブ配信型オークション「LIVE STREAM」についてレポートする。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う新たな試みとして、2020年8月から始まった動画配信での同オークションは、オークションの形式のひとつとして浸透し、アート作品の購入層や購入機会を拡げる結果となっている。
出来高は、落札総額3億4584万5250円(落札手数料含む・以下同)、落札率は、96.4%に達し活気のあるセールとなった。
1日目は、落札予想価格平均35~56万円程度の作品が出品された。マルチプル作品を中心に194点の出品があったが、不落札はわずか4点。単日の落札総額は、1億5499万1250円、落札率は97.9%を記録している。この日、最高額で落札されたのは、バンクシーのLOT.124 《Barcode》(50.0×70.0㎝、シルクスクリーン)。落札予想価格500~800万円のところ、655万5000円で落札された。本作品に続き、3点のバンクシー作品が出品された。次のLOT.125《Toxic Mary》(70.0×50.0㎝、シルクスクリーン)が、落札予想価格250~350万円のところ、609万5000円で落札されており、2番目の高額落札となっている。国内外で注目度も高く、人気が沸騰しているバンクシーの好況が続いている。
2日目には、オリジナル作品を中心に、作品落札予想価格平均38~63万円程度の作品が217点出品された。落札206点、不落札11点、落札率94.9%。単日の札落総額は1億9085万4000円だった。最高額を記録したのは、草間彌生のLOT.283《Nets》(15.8×22.7㎝、アクリル・キャンバス)で、落札予想価格1000~2000万円のところ、2760万円で落札された。2日間の最高落札額作品となっている。サイズは小さいながらも、草間を代表的なモチーフの一つである「網目」モチーフのオリジナル作品は、希少価値が高い作品といえよう。 草間の作品は、2日間で、他にもオリジナル1点、マルチプル6点の出品があったが、いずれも落札予想価格上限付近から上限超えで落札されている。8点の落札総額は5819万円で、落札総額の17%も占めており、アートシーンにおける草間の絶大な評価と人気を示す結果となった。
今回は、アメリカ出身の画家であり彫刻家のフランク・ステラ(1936-)をピックアップし、レポートする。ステラは、視覚芸術において無駄な装飾をなくし、表現の要素を最小限にそぎ落とした“ミニマル・アート”の先駆者である。一定の規則で黒いストライプを描いた「ブラック・ペインティング」シリーズが代表作となっている。平面作品だけでなく、コラージュやレリーフ、立体作品など多岐にわたる形態で作品を制作し、年代ごとに作風を大きく変化させ、新たな芸術スタイルを発表しており、戦後のアメリカ美術の動向を体現した作家の一人と評されている。
今回のセールでは、版画作品が1点出品された。動きのある背景に、ステラの絵画を特徴づける幾何学的パターンで表現された花のようなモチーフを色彩豊かに描いた作品LOT.146《Polar Co-ordinates VII》(96.5×97.8㎝、リトグラフ・シルクスクリーン・活版印刷、ed.100)は、落札予想価格80~140万円のところ、落札予想価格を上回る218万5000円で落札されている。
《Polar Co-ordinates VII》の同一作品の出品データを抽出したACF指標より、その動向を読み解く。2016年、落札予想価格平均は70~100万円程度で設定され、150万円程度で落札されている。後、落札予想価格平均は2018年までやや右肩下がりとなる。2020年には上昇し、翌年に再び下降を見せ、2016年と同等程度となる。落札予想価格の上下動は、同シリーズの他作品の落札データが影響されていることも推察される。落札価格は150万円をスタートに上下動をみせ推移するが、いずれの年も落札予想価格上限平均、それ以上で落札されており、注目されている作品であることが見て取れる。
10月29日、30日に開催されるSBIアートオークションでは、同一シリーズの《Polar Co-ordinates IV》が出品予定となっている。落札予定価格は80~120万円。その動向に関心が高まる。
※2019年は、該当作品の出品が無かった為、2019年を除いてグラフ化している。
※2021年は9月末日までのデータを含め、グラフ化している。
- 次回のSBIアートオークション開催予定
第47回SBIアートオークション|モダン&コンテンポラリーアートセール
2021年10月29日(金)15:00~ / Modern and Contemporary Art
2021年10月30日(土)13:00~ / Modern and Contemporary Art + NFT
【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-1 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp
落札総額: 181,050,000円(落札手数料含まず)
落札率: 76.7%
作品数: 241点(落札185点、 不落札56点)
7月22日(木)に開催されたマレットジャパンの近現代美術のオークションをレポートする。
現代美術の絵画を中心に、国内作家55名、海外作家47名による作品がセールにかけられた。出来高は、落札総額 1億8105万0000円(落札手数料含まず・以下同)、落札率は76.7%だった。
落札予想価格を大幅に上回る落札で盛り上がりを見せたのは、細川真希の作品LOT.225《武者修行饂飩》(116.7×91.0㎝、キャンバス・アクリル)。落札予想価格70~100万円のところ、落札予想価格上限の4.2倍となる420万円で落札された。もう1点、LOT.223《相対建設の巻》(60.6×91.0㎝、キャンバス・アクリル)も競り上がり、落札予想価格上限の3.96倍で落札されている。細川は、最近のオークションで急激な人気の高まりを見せており、今後も活躍が期待される若手作家でのひとりである。
最高額での落札となったのは、今回のオークションカタログで表紙を飾った李禹煥のオリジナル作品LOT.103《Untitled》(57.0×76.5㎝、紙・グワッシュ)で、落札予想価格500~700万円のところ、950万円で落札された。他にも、紙・黒鉛作品1点、版画作品8点の出品があったが、全ての作品が落札予想価格内もしくは落札予想価格上限超えで落札されている。10点の落札総額は、2073万円で、本セール内の落札総額ランキングで2位を記録している。
次いで、高額落札となったのは奈良美智のオリジナル作品LOT.111《Look》(13.5×48.4㎝、封筒・色鉛筆・インク)は、落札予想価格500~700万円のところ、820万円で落札された。今回のセールでは、出品点数が3点だったにも関わらず、落札総額ランキングは4位となっている。国際的にも活躍する奈良の作品は常に注目度が高く、他のオークションにおいても高額落札が目立つ。
今回は、ドイツ・ベルリンを拠点に国際的に活動している現代美術家、塩田千春(しおた・ちはる、1972-)にスポットを当てる。空間に黒や赤の細い毛糸を張り巡らしたインスタレーションが代表的な作品として知られている。2019年に森美術館(東京・六本木)で開催された大規模な個展「塩田千春展:魂がふるえる」では、66万人を超える来場者数を記録し、話題となった作家である。
本セールでは、水彩作品1点と版画作品6点が出品された。4点が落札予想価格上限越えで落札され、2点は落札予想価格下限、落札予想価格上限と同額での落札されている。
中でも、落札予想価格20~30万円のところ、34万円で落札されたLOT.141《Between two hands》(シート30×40㎝、リトグラフ、Ed.40)をピックアップし、動向を読み解く。
同サイズ、同技法を抽出したACFパフォーマンス指標注*をみると2019年から2021年まで落札価格上限を超えて落札されている。 2019年の落札データは、海外オークションの出品データで、落札予想価格平均は25万円前後となっている。2020年より国内オークションでの出品がみられるが、落札予想価格平均は10~15万円と低目の設定であった。しかしながら、落札予想価格上限平均の2倍以上の価格で落札される好結果を残している。2021年には、更なる上昇を見せ、右肩上がりの推移となり、時価指数も同様に上昇している。
現在、先に紹介した個展「塩田千春展:魂がふるえる」が台北市美術館(台湾)で開催されている。この後、アジア、太平洋地域を回る予定となっている。既にグローバルで活躍する作家がどこまでの上昇をみせるのか、推移を見守りたい。
注*:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、国内外主要オークションの2019年から2021年9月までのデータからグラフ化している。
●次回のマレットジャパンオークション開催予定●
2021年10月7日(木) 14:00~
会場:マレットジャパン オークションハウス
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
※YouTubeにて、ライブ配信も行っています。
【お問合せ先】
株式会社マレットジャパン
〒135-0016 東京都江東区東陽3-22-6 東陽町AXISビル1F
TEL:03-5635-1777 FAX:03-5635-1778
E-mail:info@mallet.co.jp
会場: インターネット配信
セール: LIVE STREAM
2021年7月3日(土曜日)13:00~
2021年7月4日(日曜日)13:00~
落札総額: 442,387,750円(落札手数料含む)
落札率: 94.4%
作品数: 408点(落札385点、不落札23点)
7月3日(土)・4日(日)の2日間に渡って開催されたSBIアートオークションのライブ配信型オークション「LIVE STREAM」についてレポートする。
出来高は、落札総額4億4238万7750円(落札手数料含む・以下同)、落札率は、94.4%に達した。落札予想価格上限を超えて落札された作品は全体の65%を占め、大いに盛り上がるセールとなった。SBIアートオークションでは、2021年に入り既に3回のセールが開催されているが、いずれも落札率90%越えの結果を残しており、活況が続いている。
1日目は、国内外で既に高い評価を得ている、草間彌生、アンディ・ウォーホル、ロッカクアヤコなどの作品を中心に、落札予想価格平均79~126万円程度の作品が201点出品された。落札187点、不落札14点、落札率93%。単日の落札総額は、3億7605万5750円だった。
LOT.088、KYNEのオリジナル作品《Untitled》(116.7×91.3㎝、アクリル/キャンバス)が、落札予想価格600~900万円のところ、2070万円で落札され、本セール最高額での落札となった。次に高額落札となったのは、バンクシーのLOT.051《Soup Can: Original》(55.0×35.0㎝、シルクスクリーン)で、落札予想価格500~800万円のところ、2012万5000円で落札された。いずれも落札予想価格上限を大幅に上回る落札結果となり、エキサイティングな競りとなった。
2日目には、高騰傾向にあるTIDE、花井祐介、ミスター・ドゥードゥルなどの版画作品を中心に、作品落札予想価格平均12~21万円程度の作品が207点出品された。国内外の新進作家の絵画や写真作品だけでなく、バンクシーやKAWSのアート系フィギュアも多く出品され、その価格帯からもオークションビギナーも楽しめるセール内容となっていた。落札198点、不落札9点、落札率95.6%。単日の札落総額は6633万2000円だった。 細川真希のLOT.281《聞こえるのは水》(130.5×97.5、アクリル/キャンバス)が、落札予想価格30~60万円のところ310万5000円で落札され、2日目の最高落札となっている。
アクセス数が最多となったのは、LOT.054インベーダー《LOW RES MONA LISA》(50.0×35.0㎝、シルクスクリーン)、LOT.118青島千穂《Untitled》(17.0×9.5×14.0㎝、セラミック)だった。次点に、KYNE、バンクシー、愛☆まどんな、三島 喜美代、イサム・ノグチ、小松美羽、ロッカク、バックサイドワークス、下田ひかり、Mr. Doodle、マサキ、TIIDE、松山智一、李禹煥、草間彌生、奈良美智、花井祐介が並ぶ。オークション出品歴が浅い作家も多くランクインしており、新しい流れを感じさせる結果となった。
今回は、イギリス生まれの現代美術家ダミアン・ハースト(1965-)に焦点を当て、レポートする。
ハーストは、ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(1990年代の若手コンテンポラリー系アーティストの総称)の先駆け的な存在で、イギリスのアートシーンに最も貢献した存在と言われている。生と死を主なテーマとし、多くの作品を手掛けている。中でも、死んだ動物(サメ、牛など)をホルマリン漬けにしたシリーズ《自然史》が、代表作となっている。
今回のセールでは、5点の出品があった。いずれの作品も、落札予想価格内もしくは落札予想価格上限超えで落札されており、安定したセール結果となっている。5点のうち最高額での落札となったのは、ピンクのグリッター(ラメ)を背景にミニーマウスを大きさの異なるドットを組み合わせ、色と形だけでシンプルにリメイクした作品LOT.036《Minnie(Pink Glitter)》(87.5×70.0㎝、シルクスクリーン・グリッター、ed.150)で、落札予想価格150~250万円のところ、276万円で落札された。
本作と同一シリーズでブルーのグリッターを背景にミッキーマウスを描いた《Mickey(Blue Glitter)》の出品データを抽出したACF指標より、その動向を読み解く。2017年から2021年まで、落札予想価格平均は150~250万円で設定されている。落札価格平均は、2017年に約270万円を記録して以降2019年まで右肩下がりに推移し、2021年には上昇に転じている。上下動があるものの落札予想価格上限平均付近で推移している。推移時価指数も250万円前後で、大幅な上下動はなく推移している。総じて安定した銘柄といえよう。
現在、ハースト初のフランス開催となる個展がカルティエ財団現代美術館(パリ)で開かれている。コロナ禍で生まれた新シリーズ『Cherry Blossoms』の全107点が展示され、注目を集めている。国際的にも評価が高い存命アーティストの今後の活躍が期待される。
※2020年は、該当作品の出品が無かった為、2020年を除いてグラフ化している。
※《Mickey》《Minnie》2点セットで出品されていた場合は、1点当たりを算出し、データ化している。
●次回のSBIアートオークション開催予定●
第46回SBIアートオークション|LIVE STREAM AUCTION
2021年9月17日(金)15:00~
2021年9月18日(土)13:00~
【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-1 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp
会場: マレットジャパン オークションハウス
セール: SALE#210520
日時: 2021年5月20日(木曜日)14:00~
落札総額: 159,355,000円(落札手数料含まず)
落札率: 80.7%
作品数: 234点(落札189点、 不落札45点)
5月20日(木)に開催されたマレットジャパンの近現代美術のオークションをレポートする。
国内作家68名、海外作家57名による作品がセールにかけられ、その内訳は、絵画作品67点、版画作品(写真含む)149点、その他、陶芸やブロンズなどによる立体作品18点、合計234点となっている。出来高は、落札総額1億5935万5000円(落札手数料含まず・以下同)、落札率は80.7%だった。
最高額での落札となったのは、花を投げる暴徒を描いたバンクシーの作品LOT.145《Love is in the Air》(46.8×67.0㎝、シルクスクリーン)で、落札予想価格1000~1500万円のところ、1800万円で落札された。本作は、パレスチナのベツレヘムにある建物に描かれたステンシル作品を版画にしたもので、バンクシーを代表する作品の1つである。
次いで、高額落札となったのもバンクシーの作品で、爆弾を抱きしめる少女が描かれたLOT.023《Bomb Love(Bomb Hugger)》(66.8×45.8㎝、シルクスクリーン)は、落札予想価格350~450万円のところ、落札予想価格上限の2.4倍となる1080万円での落札となった。
バンクシーの作品は他にも、防弾チョッキを着た子どもたちが笑顔でかけてくる様子を描いたLOT.018 《Jack and Jill》(45.0×65.0㎝、シルクスクリーン)が、落札予想価格350~450万円のところ820万円で落札されるなど、活気ある競りでの高額落札が目立ち、バンクシーの人気の高さを強く印象付けるセールとなった。
今回は、韓国で生まれ日本で活動する現代美術家、李禹煥(リ・ウーファン,1936-)にスポットを当てる。李禹煥は、1960年代後半に起こった芸術運動「もの派」の中心となり活躍した作家の一人で、日本国内はもとより海外からも高い評価を得ている。
本セールでは、6点の版画作品が出品された。5点が落札予想価格上限越えで落札され、1点は落札予想価格下限と同額での落札となった。中でも、好調な競りをみせたLOT.028~030《ある黙示録より》シリーズをピックアップし、ACF美術品パフォーマンス指標(注*)で読み解く。
《ある黙示録より》シリーズは、エディション数50部のリトグラフによる8点1組の版画集で、太い刷毛を使いワンストロークで描かれたようなモノクロの線や点と、描かないことによって生み出された余白が表現されている。落札予想価格はいずれも1点あたり60~80万円だった。LOT.030 《ある黙示録より 3》が100万円、LOT.028 《ある黙示録より 8》とLOT.029《ある黙示録より 7》が95万円で落札された。いずれも落札予想価格上限を上回る価格で落札された。
ACFパフォーマンス指標をみると2016年と2017年では落札予想価格下限近く20万円前後で落札されている。2019年になると落札予想価格は若干下降をみせるが、落札価格平均は落札予想価格上限平均を上回り、2017年よりも落札価格平均が上昇していることがわかる。1年空けて2021年には、落札予想価格も落札価格平均も高騰している。今回のセールでも落札価格は95~100万円となっており、グラフと同等の価格となっている。
高騰をみせた現在の落札価格ベースで今後も推移することになるのか、これからも動向を注視していきたい。
注*:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、2018年と2020年は国内で同作品の出品がなかった為、該当年を除いた2016~2021年4月までの4年間のデータからグラフ化している。
●次回のマレットジャパンオークション開催予定●
2021年10月上旬
会場:マレットジャパン オークションハウス
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
※YouTubeにて、ライブ配信も行っています。
【お問合せ先】
株式会社マレットジャパン
〒135-0016 東京都江東区東陽3-22-6 東陽町AXISビル1F
TEL:03-5635-1777 FAX:03-5635-1778
E-mail:info@mallet.co.jp