会場: マレットジャパン オークションハウス
セール: SALE#211209 Modern and Contemporary Art
日時: 2021年12月9日(木曜日)14:00~
落札総額: 195,050,000円(落札手数料含まず)
落札率: 79.3%
作品数: 241点(落札191点、不落札50点)
12月9日(木)に開催されたマレットジャパンの近現代美術のオークションをレポートする。今回のオークションでは、絵画作品57点、版画作品(写真含む)148点、その他、陶芸作品や樹脂などによる立体作品36点、合計241点が出品された。落札率79.3%、落札総額1億9505万円(落札手数料含まず・以下同)だった。
セール冒頭では、「プリント・リバイバル(版画復興)」と呼ばれた動向(概念)をクローズアップし、1960~1990年代のアメリカの版画市場に貢献したフランク・ステラやサム・フランシスら名だたる作家の版画の名品を22点取り揃え、盛り上がりをみせた。
中でも、5点の作品が出品されたデイヴィット・ホックニーは、いずれも活発な入札が行われ、熱い視線が注がれた。本セールでの高額落札ランキング上位3位まで、ホックニーが占める結果となった。最高額で落札されたのは、ホックニーの代表的なモチーフであるプールを描いた作品LOT.014 《リトグラフの水(線、クレヨンと2種類のブルーの淡彩)》(54.5×73.0㎝、リトグラフ、ed.85)で、落札予想価格400~600万円のところ、1250万円で落札された。次点となったのは、明るい色彩と独特な視点描写によるパノラマの様なスケール感が印象的な作品LOT.012《ホテル・アカトラン、2週間後;「ムーヴィング・フォーカス」より》(73.0×188.0㎝、リトグラフ、ed.98)で、落札予想価格600~800万円のところ、1050万円で落札されている。3番目は、LOT.013《ブルー・ギター(版画集)》で、落札予想価格200~300万円のところ、760万円での落札となった。本作は、詩人ウォレス・スティーブンがピカソの絵にインスパイアされて制作した詩集にホックニーが挿絵を手掛けた詩画集で、エッチング、アクアチントなどの銅版画作品20点が収められている。1点もしくは数点セットでの出品は見かけるものの、20点全てが揃ったコンプリートセットが出品される機会は少なく、希少な出品だった。
落札価格上限を大幅に上回る落札金額で注目を集めたのは、細川真希によるヨハネス・フェルメールの《天文学者》のオマージュ作品、LOT.105《天文学者のように》(27.3×27.3㎝、キャンバス・アクリル)。落札予想価格30~40万円のところ、落札予想価格上限の約4.8倍となる195万円で落札された。細川は、近年のオークションでも熱を帯びた入札が展開される作家で、今後の動向も注目される。
今回は、中国(北京)を拠点に活躍する中国人画家、劉野(リュウ・イエ、1964-)をレポートする。劉野は、美や感情、希望など、主に内面的な世界観をテーマにした作品を制作している。また、ピエト・モンドリアンやポール・クレーなどの西洋の抽象画をオマージュする作品も多く描いている。中国だけでなく、ヨーロッパやアメリカなどでも広く作品を展示しており、国際的に活躍する現代美術家である。
今回のセールでは、LOT.63 《Chorus of Angels》(60.0×70.0㎝、シルクスクリーン・キャンバス)1点の出品があった。天使のコーラス隊を描いた作品は落札予想価格60~80万円のところ、落札予想価格を大幅に上回る300万円で落札された。
同一作品の落札データを抽出したACF指標より、その動向を読み解く。2017年、落札予想価格平均は72~100万円程度で設定され、落札予想価格を上回る116万円程度で落札されている。その後2018年、落札予想価格平均、落札価格平均ともに若干下降をみせ、2019年には横ばいで推移となる。2020年は、2017年と同等程度の落札予想価格平均にも関わらず、落札価格平均は倍近く上昇する。2019年10月、香港のオークションで《Smoke》(178×356.5㎝、キャンバス・アクリル)という作品が高額落札(665万ドル)されたことが、上昇の後押しとなっているのかもれない。2021年には更に上昇し、落札予想価格上限平均の2.66倍となった。近年、高騰傾向にある人気作品の今後の動向を注視していきたい。
※1ドルは、115円で換算
●次回のマレットジャパンオークション開催予定●
2022年3月3日(木)14:00~
会場:マレットジャパン オークションハウス
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
※YouTubeにて、ライブ配信も行っています。
【お問合せ先】
株式会社マレットジャパン
〒135-0016 東京都江東区東陽3-22-6 東陽町AXISビル1F
TEL:03-5635-1777 FAX:03-5635-1778
E-mail:info@mallet.co.jp
会場: 代官山ヒルサイドフォーラム
セール: Modern and Contemporary Art + NFT
日時: 2021年10月29日(金曜日)15:00~
2021年10月30日(土曜日)13:00~
落札総額: 1,668,943,250円(落札手数料含む)
落札率: 97.1%
作品数: 377点(落札366点、不落札11点)
今回は、10月29日(金)・30日(土)の2日間に渡って開催されたSBIアートオークションについてレポートする。落札率97.1%、落札総額16億6894万3250円(落札手数料含む・以下同)。200点近くの作品が落札予想価格上限を超える価格で落札され、盛況なセールとなった。
1日目は、落札予想価格平均88~138万円程度の作品が出品された。マルチプル作品を中心に147点の出品があった。単日の落札総額は、2億5356万9250円、落札率は97.3%を記録している。最高額で落札されたのは、草間彌生のカボチャモチーフの立体作品LOT.020 《カボチャ》(27.0×27.0×25.5㎝、ブロンズ、ed.100)だった。落札予想価格650~950万円のところ、1437万5000円で落札されている。草間作品は、この日だけでも全23点の出品があったが、落札総額は1億567万3500円となっており、圧倒的な勢いをみせた。
2日目には、オリジナル作品を中心に、作品落札予想価格平均250~407万円程度の作品が230点出品された。単日の札落総額は14億1537万4000円、落札率は97.0%だった。最高額を記録したのは、1日目と同じ草間彌生による作品LOT.259《花》(45.8×38.0㎝、アクリル・キャンバス)で、落札予想価格3500~5500万円のところ、1億4950万円で落札された。2日間での最高落札額作品となっている。草間作品は、他に5点のオリジナル作品の出品があったが、いずれも高額落札となっており、落札総額は、2億9934万5000円に達した。2日間の草間だけの落札総額は、4億501万8500円となっている。国内の現代アートを牽引し、国際的にも評価が確立されている草間の人気は留まることを知らない。
また、2日目には国内のアートオークションでは初となるNFTアートのセールの開催もあり、関心を集めた。NFTは、「Non-Fungible Token:非代替性トークン」の略。データ管理にブロックチェーン技術を活用し、真証性を証明することができるようになったデジタルアートがNFTアートである。今回、NFTアートは8点の出品があったが、いずれも落札されている。今後、NFTアートがどこまで発展し、定着するものとなるのか、今後の展開が注目される。
今回は、日本にアンフォルメル絵画を紹介した画家、今井俊満(いまい としみつ、1928-2002)をピックアップし、レポートする。今井は、紺綬褒章、レジオンドヌール勲章、フランス文化勲章など受章歴も多く、国際的にも評価が高い日本を代表する作家のひとりである。抽象画から具象画まで、年代に応じて大きく異なる画風の作品を発表し、晩年まで独自の世界観を表現し続けた。
今回のセールでは、2点の作品が出品されている。LOT.288 《赤い太陽》(130.3×162.0㎝、油彩・キャンバス)は、落札予想価格400~700万円のところ、1897万5000円で落札された。もう1点は、LOT.284《「マン・レイ」シリーズより「レイヨグラム黄 No;6」》(72.7×53.0㎝、エナメル・コラージュ・キャンバス)の作品で、落札予想価格15~25万円のところ、60万9500円で落札。いずれも落札予想価格上限を大きく上回る価格での落札となっている。
出品作品のうち、今井がマン・レイをオマージュした作品シリーズである《「マン・レイ」シリーズより「レイヨグラム黄 No;6」》について、同一シリーズ、同一サイズの出品データを抽出したACF指標より、その動向を読み解く。 2016年、落札予想価格平均は40~60万円程度で設定され、落札予想価格内の48万円程度で落札されている。その後、落札予想価格平均は2018年にやや右肩下がりとなる。2019年には2016年と同等程度まで上昇し、2020年には横ばいとなっている。2021年前半に不落札が続いた為、落札予想価格平均は大きく下降しており、合わせて落札価格平均も下降している。直近の国内オークションの出品では落札予想価格20~30万円のところ、23万円での落札となっており、落札価格の振り幅が大きい。
先にも紹介した通り、今井は様々な画風の作品を手掛けている。作品シリーズによって、その価値も異なる。購入予算と照らし、お好みの作品を選出するのも楽しみのひとつかもしれない。
※2017年は、出品がなかった為2017年を除いてグラフ化している。
※2021年は12月10日までのデータを含め、グラフ化している。
- 次回のSBIアートオークション開催予定●
第48回SBIアートオークション|モダン&コンテンポラリーアートセール
2022年1月28日(金)/ LIVE STREAM
2022年1月29日(土)/ Modern and Contemporary Art
【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-1 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp
会場: Shinwa Auction(シンワオークション) 銀座メディカルビル1F・2F・B1F
セール: 戦後美術&CONTEMPORARY ART
日時: 2021年10月9日(土曜日)15:00~
落札総額: 128,960,000円(落札手数料含まず)
落札率: 90.05%
作品数: 201点(落札181点、 不落札20点)
今回は、10月9日(土)に開催されたシンワオークションについてレポートする。
絵画や版画の平面作品165点、フィギュアなどの立体作品32点、スニーカーやポットなどのコラボグッズ4点、全201点がセールにかけられた。全体の出来高は、1億2896万円(落札手数料含まず・以下同)。落札予想価格上限を上回る高値で落札される作品は36点と少なかったものの、不落札となったのはわずか20点で、落札率90.05%の活気のあるセールとなった。
今回のセールでは、アフターと呼ばれる作品の出品が目立った。出品作品の34.8%がアフターだった。アフターは、作家本人ではなく、他人の手による制作物とされている。作家本人が監修をしている場合もあるが、作家の死後、著作権継承者の監修、許可のもとで、ギャラリーや百貨店などが制作したものなども含まれている。オリジナル作品と比べて安価となる為、作品購入の敷居は低い。人気作家の作品を気負いなく楽しみたい人には貴重な作品となる。既に評価が高い作家の高額作品だけでなく、アフターも織り交ぜた出品構成は、オークション初心者も気軽に参加でき、アート作品購入の機会が身近となるような内容だった。
最高額で落札されたのは、最終LOTの石田徹也による作品LOT.202《無題》(32.5×49.0㎝、キャンバス・アクリル)で、落札予想価格2000~4000万円のところ2500万円で落札された。2005年に31歳の若さで急逝した石田の希少価値のあるオリジナル作品に注目が注がれた。
次いで、高額落札となったのは、LOT.188バンクシーの《Get Out While You Can》(50.0×34.8cm、シルクスクリーン)で、落札予想価格700~1000万円のところ、840万円で落札された。今回のセールでは、50点にのぼるバンクシー作品の出品があった。その内、48点はアフターやアフターの複数点組みでの出品となっている。予想価格上限を上回る価格で落札された作品も多く、バンクシーの人気を色濃く印象付ける結果となった。
今回は、アメリカの現代美術家ジェフ・クーンズ(Jeff Koons、1955-)に焦点を当て、レポートする。クーンズは、キッチュ(安っぽいもの、俗悪なもの)という美意識を露骨なまでに表現した作風で知られている。2019年5月にニューヨークで開催されたオークションでは、1m大のステンレス製彫刻《ラビット》が約100億円で落札され、大きな話題となった。存命作家の最高落札額となった記録は、現在も不動のものとなっている。世界でも有名な現代芸術家のひとりと言えよう。
本セールでは、アフター3点組作品1点含む、合計4点の立体作品の出品があった。いずれの作品も落札予想価格内で落札されている。LOT.185~187はバルーンアートのうさぎ、スワン、サルを形どった999点限定の磁器による作品。磁器の表面にはミラー状の反射加工を施し、複雑な箇所も精巧に仕上げ、ステンレス鋼で制作された大型のオリジナル彫刻を忠実に再現している。
それぞれ落札予想価格100~150万円のところ、110万円で落札された。その中でも、うさぎの作品《Balloon Rabbit (Red)》(H27.4×W14.0×D18.4㎝)をピックアップし、ACF美術品パフォーマンス指標注*で動向を読み解く。落札金額平均は、2017年の186万円から始まり、2018年には200万円程度まで上昇するが2019年に165万円まで下降し、2020年からは180万円前後横ばい、落札予想価格上限平均付近を上下動しながら推移している。落札価格の中央値も、2019年の158万円を底に180万円前後で推移している。今回の落札価格110万円は、お買い得価格だったように見受けられる。
注:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、2017~2021年10月までのオークションデータからグラフ化している。
●次回のシンワオークション開催予定●
2022年1月29日(土)15:00~
会場:銀座メディカルビルB1F・1F・2F
※Shinwa Auction LIVE ライブビッディング
パソコン・スマートフォンからリアルタイムでオークションへご参加いただけます。
(前日15時までの申し込みが必要)
【お問合せ先】
Shinwa Auction株式会社
〒104-0061 東京都中央区銀座7-4-12 銀座メディカルビル2F
TEL:03-3569-0032 E-mail:info@shinwa-auction.com
会場: インターネット配信
セール: LIVE STREAM
2021年9月17日(金曜日)15:00~
2021年9月18日(土曜日)13:00~
落札総額: 345,845,250円(落札手数料含む)
落札率: 96.4%
作品数: 411点(落札396点、不落札15点)
9月17日(金)・18日(土)の2日間に渡って開催されたSBIアートオークションのライブ配信型オークション「LIVE STREAM」についてレポートする。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う新たな試みとして、2020年8月から始まった動画配信での同オークションは、オークションの形式のひとつとして浸透し、アート作品の購入層や購入機会を拡げる結果となっている。
出来高は、落札総額3億4584万5250円(落札手数料含む・以下同)、落札率は、96.4%に達し活気のあるセールとなった。
1日目は、落札予想価格平均35~56万円程度の作品が出品された。マルチプル作品を中心に194点の出品があったが、不落札はわずか4点。単日の落札総額は、1億5499万1250円、落札率は97.9%を記録している。この日、最高額で落札されたのは、バンクシーのLOT.124 《Barcode》(50.0×70.0㎝、シルクスクリーン)。落札予想価格500~800万円のところ、655万5000円で落札された。本作品に続き、3点のバンクシー作品が出品された。次のLOT.125《Toxic Mary》(70.0×50.0㎝、シルクスクリーン)が、落札予想価格250~350万円のところ、609万5000円で落札されており、2番目の高額落札となっている。国内外で注目度も高く、人気が沸騰しているバンクシーの好況が続いている。
2日目には、オリジナル作品を中心に、作品落札予想価格平均38~63万円程度の作品が217点出品された。落札206点、不落札11点、落札率94.9%。単日の札落総額は1億9085万4000円だった。最高額を記録したのは、草間彌生のLOT.283《Nets》(15.8×22.7㎝、アクリル・キャンバス)で、落札予想価格1000~2000万円のところ、2760万円で落札された。2日間の最高落札額作品となっている。サイズは小さいながらも、草間を代表的なモチーフの一つである「網目」モチーフのオリジナル作品は、希少価値が高い作品といえよう。 草間の作品は、2日間で、他にもオリジナル1点、マルチプル6点の出品があったが、いずれも落札予想価格上限付近から上限超えで落札されている。8点の落札総額は5819万円で、落札総額の17%も占めており、アートシーンにおける草間の絶大な評価と人気を示す結果となった。
今回は、アメリカ出身の画家であり彫刻家のフランク・ステラ(1936-)をピックアップし、レポートする。ステラは、視覚芸術において無駄な装飾をなくし、表現の要素を最小限にそぎ落とした“ミニマル・アート”の先駆者である。一定の規則で黒いストライプを描いた「ブラック・ペインティング」シリーズが代表作となっている。平面作品だけでなく、コラージュやレリーフ、立体作品など多岐にわたる形態で作品を制作し、年代ごとに作風を大きく変化させ、新たな芸術スタイルを発表しており、戦後のアメリカ美術の動向を体現した作家の一人と評されている。
今回のセールでは、版画作品が1点出品された。動きのある背景に、ステラの絵画を特徴づける幾何学的パターンで表現された花のようなモチーフを色彩豊かに描いた作品LOT.146《Polar Co-ordinates VII》(96.5×97.8㎝、リトグラフ・シルクスクリーン・活版印刷、ed.100)は、落札予想価格80~140万円のところ、落札予想価格を上回る218万5000円で落札されている。
《Polar Co-ordinates VII》の同一作品の出品データを抽出したACF指標より、その動向を読み解く。2016年、落札予想価格平均は70~100万円程度で設定され、150万円程度で落札されている。後、落札予想価格平均は2018年までやや右肩下がりとなる。2020年には上昇し、翌年に再び下降を見せ、2016年と同等程度となる。落札予想価格の上下動は、同シリーズの他作品の落札データが影響されていることも推察される。落札価格は150万円をスタートに上下動をみせ推移するが、いずれの年も落札予想価格上限平均、それ以上で落札されており、注目されている作品であることが見て取れる。
10月29日、30日に開催されるSBIアートオークションでは、同一シリーズの《Polar Co-ordinates IV》が出品予定となっている。落札予定価格は80~120万円。その動向に関心が高まる。
※2019年は、該当作品の出品が無かった為、2019年を除いてグラフ化している。
※2021年は9月末日までのデータを含め、グラフ化している。
- 次回のSBIアートオークション開催予定
第47回SBIアートオークション|モダン&コンテンポラリーアートセール
2021年10月29日(金)15:00~ / Modern and Contemporary Art
2021年10月30日(土)13:00~ / Modern and Contemporary Art + NFT
【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-1 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp
落札総額: 181,050,000円(落札手数料含まず)
落札率: 76.7%
作品数: 241点(落札185点、 不落札56点)
7月22日(木)に開催されたマレットジャパンの近現代美術のオークションをレポートする。
現代美術の絵画を中心に、国内作家55名、海外作家47名による作品がセールにかけられた。出来高は、落札総額 1億8105万0000円(落札手数料含まず・以下同)、落札率は76.7%だった。
落札予想価格を大幅に上回る落札で盛り上がりを見せたのは、細川真希の作品LOT.225《武者修行饂飩》(116.7×91.0㎝、キャンバス・アクリル)。落札予想価格70~100万円のところ、落札予想価格上限の4.2倍となる420万円で落札された。もう1点、LOT.223《相対建設の巻》(60.6×91.0㎝、キャンバス・アクリル)も競り上がり、落札予想価格上限の3.96倍で落札されている。細川は、最近のオークションで急激な人気の高まりを見せており、今後も活躍が期待される若手作家でのひとりである。
最高額での落札となったのは、今回のオークションカタログで表紙を飾った李禹煥のオリジナル作品LOT.103《Untitled》(57.0×76.5㎝、紙・グワッシュ)で、落札予想価格500~700万円のところ、950万円で落札された。他にも、紙・黒鉛作品1点、版画作品8点の出品があったが、全ての作品が落札予想価格内もしくは落札予想価格上限超えで落札されている。10点の落札総額は、2073万円で、本セール内の落札総額ランキングで2位を記録している。
次いで、高額落札となったのは奈良美智のオリジナル作品LOT.111《Look》(13.5×48.4㎝、封筒・色鉛筆・インク)は、落札予想価格500~700万円のところ、820万円で落札された。今回のセールでは、出品点数が3点だったにも関わらず、落札総額ランキングは4位となっている。国際的にも活躍する奈良の作品は常に注目度が高く、他のオークションにおいても高額落札が目立つ。
今回は、ドイツ・ベルリンを拠点に国際的に活動している現代美術家、塩田千春(しおた・ちはる、1972-)にスポットを当てる。空間に黒や赤の細い毛糸を張り巡らしたインスタレーションが代表的な作品として知られている。2019年に森美術館(東京・六本木)で開催された大規模な個展「塩田千春展:魂がふるえる」では、66万人を超える来場者数を記録し、話題となった作家である。
本セールでは、水彩作品1点と版画作品6点が出品された。4点が落札予想価格上限越えで落札され、2点は落札予想価格下限、落札予想価格上限と同額での落札されている。
中でも、落札予想価格20~30万円のところ、34万円で落札されたLOT.141《Between two hands》(シート30×40㎝、リトグラフ、Ed.40)をピックアップし、動向を読み解く。
同サイズ、同技法を抽出したACFパフォーマンス指標注*をみると2019年から2021年まで落札価格上限を超えて落札されている。 2019年の落札データは、海外オークションの出品データで、落札予想価格平均は25万円前後となっている。2020年より国内オークションでの出品がみられるが、落札予想価格平均は10~15万円と低目の設定であった。しかしながら、落札予想価格上限平均の2倍以上の価格で落札される好結果を残している。2021年には、更なる上昇を見せ、右肩上がりの推移となり、時価指数も同様に上昇している。
現在、先に紹介した個展「塩田千春展:魂がふるえる」が台北市美術館(台湾)で開催されている。この後、アジア、太平洋地域を回る予定となっている。既にグローバルで活躍する作家がどこまでの上昇をみせるのか、推移を見守りたい。
注*:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、国内外主要オークションの2019年から2021年9月までのデータからグラフ化している。
●次回のマレットジャパンオークション開催予定●
2021年10月7日(木) 14:00~
会場:マレットジャパン オークションハウス
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
※YouTubeにて、ライブ配信も行っています。
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