会場: 代官山ヒルサイドフォーラム
セール: MODERN AND CONTEMPORARY ART
日時: 2021年4月23日(金曜日)15:00~
2021年4月24日(土曜日)13:00~
落札総額: 1,038,570,750円(落札手数料含む)
落札率: 96.9%
作品数: 319点(落札309点、不落札10点)
今回は、4月23日(金)・24日(土)の2日間に渡って開催されたSBIアートオークションについてレポートする。前回のオークションはライブ配信型のオークションだったが、今回は、代官山のヒルサイドフォーラムを会場とし、従来通り、観衆の中で開催された。出来高は、落札総額10億3857万750円(落札手数料含む・以下同)、落札率は、96.9%に達した。落札予想価格上限を超えて落札された作品が、全体の63%を占め、非常に活気に満ちたオークションとなった。
1日目は、落札予想価格平均75~116万円程度の作品が149点出品された。草間彌生や奈良美智の版画作品、李禹煥や関根伸夫など“もの派”として知られる作家の作品を中心に勢いのある若手作家作品がセールにかけられた。落札139点、不落札10点、落札率93.3%。単日の落札総額は、2億3005万7500円だった。初日、最高額で落札されたのは草間の富士山を描いた7点組の木版画LOT.083《七色の富士》で、落札予想価格2000~3000万円のところ3450万円で落札された。草間は、他にも代表的なモチーフとなる《かぼちゃ》を含む10点にも及ぶ版画作品の出品があったが、いずれも落札予想価格を上回る価格で落札され、変わらぬ人気をみせた。
2日目には、アンディウォーホル、バンクシーなどの海外作家やオークションではお馴染みとなったロッカクアヤコ、山口歴などの作家を中心に、落札予想価格平均168~278万円程度の作品が170点出品された。落札総額は8億851万3250円まで伸び、不落札は0点、落札率100%と記録的なセールとなった。最高額で落札されたのは、オークションカタログの表紙に採用されていた奈良美智のオリジナル作品LOT.217 《Lollipop》(41.5×35.5cm、アクリル/紙)。ロリポップキャンディを咥えている三白眼の大きな目の少女を描いた本作は、自身の画集第2弾「Slash with a knife」の表紙を飾った作品で、注目度も高く、白熱した競りを見せた。落札予想価格1500~2500万円のところ、7705万円まで競り上がり、落札予想価格上限の約3倍まで高騰した。
アクセス数が最多となったのは、奈良美智、くらやえみ、大谷工作室、LYとなっており、次点に、Haroshi、金昌烈(キム・チャンギョル)、平子雄一、ロッカクアヤコ、花井祐介、朴栖甫(パク・ソボ)、KYNE、ジュリアン・オピー、ダミアン・ハーストが名を連ねた。国内の新進作家や韓国の作家のランクインが目立った。近年、韓国ではアートシーンが活気づいており、2022年には世界的なアートフェア「フリーズ」がソウルで開催されることが決まっている。韓国のアートマーケットへの注目が集まっているようだ。
今回のセールで、最高額での落札となった奈良美智(なら・よしとも、1959‐)にスポットを当て、レポートをする。奈良は、少女や動物などをモチーフとした作品を絵画、彫刻、インスタレーションなど多彩な表現方法で発表している。ネオポップアートを代表する作家のひとりして、世界的にも高い評価を得ている。
本セールでは、18点(杉戸洋とのコラボレーション作品2点を含む)の出品があった。いずれの作品も、落札予想価格内もしくは落札予想価格上限超えて落札されており、安定銘柄となっている。
奈良については、2018年2月にシルクスクリーン作品「Star Island」に焦点を当て、レポートしているが、今回は、LOT.073《Broken Treasures》(42×29.5㎝、木版画、ed.50)をピックアップし、同一作品の出品データを抽出した2017~2021年(※1)のACF美術品パフォーマンス指標より、その動向を読み解く。
落札予想価格は、2017年に130~210万円でスタートし、以降2021年まで、落札予想価格200~300万円で設定されている。2018年のみ落札予想価格内での落札となるが、2019年以降は落札予想価格上限を超えて落札され、全体的に右肩上がりで推移している。2021年では460万円までの高騰がみられた。今回の落札結果(落札予想価格250~350万円、落札価格552万円)を踏まえても、上昇傾向にあることがわかる。
6月20日には、台湾で初開催された個展「奈良美智特展」が閉幕したばかりである。盛況を博した展示は、台湾各地の美術館を巡回することも決まっている。グローバルで活躍する作家の活動、活動から広がるマーケットの動向を今後も注視していきたい。
※1:2021年は、1月までのオークションデータを用いてグラフ化している。
●次回のSBIアートオークション開催予定●
第45回SBIアートオークション|LIVE STREAM AUCTION
2021年7月3日(土)13:00~
2021年7月4日(日)13:00~
【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-1 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp
会場 : インターネット配信
セール: LIVE STREAM / 2021年4月2日(金曜日)13:00~
2021年4月3日(土曜日)13:00~
落札総額: 177,289,750円(落札手数料込み)
落札率: 92.6%
作品数: 378点(落札350点、 不落札28点)
4月2日(金)・3日(土)に開催されたSBIアートオークション「Live Stream」についてレポートする。会場を使用せず、インターネットでライブ配信されるオークションは、コロナ禍を機に始まった新しいオークションの形式で、本セールで4回目の開催となる。過去3回の開催における落札率はいずれも90%越えを記録しており、活況を呈している。今回も、落札率は92.6%と非常に好調な結果となった。
1日目は、Mr doodle、BANKSY、KAWS、村上隆などの作家を中心に、落札予想価格平均18~30万円程度の作品が175点出品された。落札160点・不落札15点、落札率91.4%。単日の落札総額は、5904万6750円(落札手数料込み・以下同)だった。
最高額で落札されたのは、KAWSとラグジュアリーブランドであるディオールが、2019年の春夏コレクションでコラボレーションした際に500体限定で制作したぬいぐるみ、LOT.019 《BFF Dior Plush Pink and Black》だった。黒とピンクの2色展開されていたこのぬいぐるみは1色で出品されることもあるが、今回は2色セットでの出品となっている。希少なアイテムと人気が高く、2020年に入り高騰傾向にある。その好調は続き、落札予想価格150~250万円に対し、529万円まで上昇し、盛り上がる競りとなった。
2日目には、草間彌生、奈良美智、TIDEなどの作家を中心に、落札予想価格平均23~38万円程度の作品が203点出品された。落札190点・不落札13点で、落札率は94.4%だった。落札総額は1億1824万3000円まで伸び、初日と合わせると1億7728万9750円となった。
最高額で落札されたのは、TIDEの猫をモチーフとしたキャラクターのモノクロ作品LOT.268《ZONE OUT》(80×100㎝、アクリル・キャンバス)で、落札予想価格200~300万円のところ、885万5000円で落札された。TIDEは、他にもCATシリーズを中心に6点の出品があったが、いずれも落札予想価格上限の2~4倍程度の金額で落札されており、注目の高さがうかがえる結果となった。
本セールで最多となる68作品の出品があった村上隆(むらかみ・たかし、1962‐)にスポットを当て、レポートをする。村上については、2021年2月のレポートで「ドラえもん」シリーズをレポートしたが、今回は、出品作品の中からLOT.134《727》(67×100㎝、シルクスクリーン、ed.100)をピックアップし、その動向を読み解く。
《727》は、村上が描くキャラクターの中でも有名な「DOB君」をモチーフにした作品。日本画のような平面的な背景の中にDOB君がアニメのように描かれている。村上が提言する伝統的な日本美術と現代のアニメや漫画などにみられる二次元的な絵画空間や余白の使い方などに類似点を見出した “スーパーフラット”という概念が巧に表現された作品で、オリジナル作品はMoMAに収蔵されており、MoMAコレクションに選出されていることでも知られている。
落札予想価格40~70万のところ、83万9500円で落札された。同一作品の出品データより、2016~2019年の指標(ACF美術品パフォーマンス指標)を見てみると、2016~2018年まで、落札予想価格40~60万円前後、落札価格70万円前後とほぼ横ばいで推移している。2019年には落札予想価格に上昇が見られるも、落札予想価格内に収まり、やや右肩下がりの結果となっている。2020年には出品がなく、本セールの出品で再び調子を戻した。時価指数から50~70万円がだいたいの目安と見てとれる。
出品された68作品の中には、《727》のシリーズ作品もあった。LOT.165《727×777》(65.7×98㎝、オフセット印刷、ed.300)は、落札予想価格10~15万円のところ、32万2000円で落札されている。同一のシリーズでも、技法やエディション数が異なる場合がある。それにより落札価格帯が変わってくる為、シリーズで出ている作品を購入する際は、いろいろ比べて検討してみるのもよいだろう。
●次回のSBIアートオークション開催予定●
第45回SBIアートオークション|LIVE STREAM AUCTION
2021年7月3日(土)
2021年7月4日(日)
【お問合せ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-1 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777
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会場: マレットジャパン オークションハウス
セール: SALE#210318
日時: 2021年3月18日(木曜日)14:00~
落札総額: 163,010,000円(落札手数料含まず)
落札率: 78.7%
作品数: 226点(落札178点、 不落札48点)
3月18日(木)に開催されたマレットジャパンの近現代美術のオークションをレポートする。
国内作家63名、海外作家54名による作品がセールにかけられ、その内訳は、絵画作品62点、版画作品(写真含む)151点、その他、陶芸やブロンズなどの立体作品13点、合計226点となっている。出来高は、落札総額1億6301万円(落札手数料含まず・以下同)、落札率は78.7%。落札された作品の半数近くが、落札予想価格上限を超える価格で落札された。
最高額で落札されたのは、ロッカクアヤコの少女と猫を描いたオリジナル作品LOT.93《作品》(100.4×100.2㎝、キャンバス・アクリル)で、落札予想価格800~1300万円のところ、落札予想価格上限の約1.7倍となる2200万円の高値で落札された。ロッカクアヤコは他にも4点1組の版画集《早生まれ行進曲》が1点ずつ個別で出品されていたが、いずれも落札予想価格100~150万円のところ、落札予想価格上限を超えて落札されている。国内外での評価も高く、市場で安定した人気を誇る作家となった。
次いで高額落札となったのは、バンクシーが、「硫黄島の星条旗」という報道写真をモチーフに制作した作品LOT.32《Flag(Silver)》(46.9×66.7㎝、シルクスクリーン)で、落札予想価格300~400万円のところ、落札予想価格上限の約1.6倍となる640万円で競り落とされた。バンクシーはロッカクアヤコ同様、継続的に支持を得ており、国内外のオークションでお馴染みの作家である。
今回は、イギリス出身の現代美術家ジュリアン・オピー(1958-)にスポットを当てる。
オピーは、絵画だけでなく、立体、映像、インスタレーションなど様々な表現方法で作品を発表している。人物や風景を点や太線で簡略化し描いたピクトグラムのような作品が特徴的で、シンプルな描画と色彩からなる確立された作風は評価も高く、世界中の主要美術館に作品が所蔵されている。
本セールでは、4点の出品があった。一番高額で落札されたのは、見る角度によって絵柄が立体的になり、動いて見える表現が可能となるレンチキュラーパネルに点と太線で抽象化された女性が描かれた作品LOT.33《Sara Dancing in Sparkly Top》(レンチキュラーアクリルパネル、インクジェット)で、落札予想価格250~350万円のところ、290万円で落札された。オークションの事前情報でも、絶え間なく変化する図が興味深い注目作品として取り上げられた1点で、関心度は高かったと思われる。
他、LOT.30《Watching Suzanne(back)No.2》(アクリルパネル、シルクスクリーン)は、落札予想価格100~150万円のところ、150万円で落札。続くLOT.31《New York Couple 2:「New York Couples」より》(シルクスクリーン、コラージュ)は150~200万円のところ、160万円と、いずれも落札予想価格内で落札された。オークションの後半でセールにかけられたLOT.173《Woman taking off man’s shirt, 2003》(シルクスクリーン)は、落札予想価格15~25万円のところ、落札予想価格下限に届かない10万円での落札となった。本作は、無限定の版画作品であり、希少性が低いため、予想価格設定も低めである。
LOT.30《Watching Suzanne》の価格の推移を分析する。
《Watching Suzanne》は、女性の身体を力強い線で描いた作品で、後ろ姿(back)と前からの姿(front)の2種類あり、それぞれ10点セットで発表されている。オークションでは今回のように1点で出品されることが多い為、1点での出品を基に、近年最後の出品となった2018年から5年間遡り2014年までのデータをグラフ化した。ACFパフォーマンス指標をみてみると2016年に下降をみせるも、常に落札予想価格上限を上回り推移している。2017年には、2015年と並ぶまでに回復し、2018年には、更に右肩上がりの推移となっている。今回の落札結果からも上昇トレンドであることがわかる。
好調な作品がある一方でLOT.173《Woman taking off man’s shirt, 2003》のように落札予想価格に届かない低調な作品もある。LOT.173は、ここ最近の出品では不落札が続いていた為、落札予想価格も下降傾向にあった。
作家の人気動向だけではなく、作品の種類や技法、希少性を把握したうえで、動向を細かく注視していくことが重要であると考えられる。
●次回のマレットジャパンオークション開催予定●
2021年5月20日(木)14:00~
会場:マレットジャパン オークションハウス
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
※YouTubeにて、ライブ配信も行っています。
【お問合せ先】
株式会社マレットジャパン
〒135-0016 東京都江東区東陽3-22-6 東陽町AXISビル1F
TEL:03-5635-1777 FAX:03-5635-1778
E-mail:info@mallet.co.jp
会場: SBI Art Auction
セール: LIVE STREAM / 2021年1月29日(金曜日)13:00~
Modern and Contemporary Art / 2021年1月30日(土曜日)13:00~
落札総額: 880,917,250円(落札手数料込み)
落札率: 94.8%
作品数: 640点(落札607点、 不落札33点)
1月29日(金)・30日(土)と、2日間連続で開催されたSBI Art Auctionのセールについてレポートする。
1日目の開催は、会場を使用しないライブ配信型のオークション「Live Stream」。落札予想価格の平均が15~24万円程度の比較的買いやすい作品が300点出品された。落札286点・不落札14点、落札率95.3%と活況で、単日の落札総額は、9804万9000円(落札手数料込み・以下同)だった。
2日目には、従来の会場を使用した形式でのオークション「Modern and Contemporary Art」が代官山のヒルサイドフォーラムで開催された。落札予想価格の平均が88~140万円程度の作品が340点出品され、落札321点・不落札19点で、落札率は94.4%だった。落札総額は7億8286万8250円まで伸び、初日と合わせると8億8091万7250円となった。経済が不安定となったコロナ禍においても、現代アート市場は活況を呈している。
最高額で落札されたのは、斎藤義重のLOT.561《作品》、ドリルされた合板、油彩による作品。落札予想価格300~500万円に対して3335万円まで競り上がった。落札予想価格上限の6.67倍にまで伸びた高額落札に会場が沸いた。次に高額での落札となった作家は、ロッカクアヤコ、井田幸昌、マサキ、ミスター、奈良美智、Mr. Doodle、バンクシー、草間彌生、小松美羽…と続いている。今回のセールでアクセス数も多かった人気の作家たちである。
今回は、イギリスで20世紀を代表するアーティストの1人と言われるデイヴィット・ホックニー(イギリス・1937-)に焦点を当て、レポートする。ホックニーは、ポップ・アート運動にも参加し、大きな影響を与えたことでも知られ、油彩やドローイングだけでなく、版画、フォトコラージュ、舞台美術など多岐にわたる作品を手掛け、優れた作品を残している。近年では、iPhoneやiPadを用いて描いた作品も発表するなど、表現の幅を広げている。
本セールでは、“My Window”シリーズ2点、“ブルー・ギター”シリーズ2点、合計4点の出品があった。 “My Window”シリーズは、iPhone , iPadを用いて窓越しの景色を描写した作品で、明るい陽光を感じさせる色調には、ホックニーらしさが溢れている。1点のインクジェットプリントの版画作品と120点の作品を収めた作品集とオリジナルケースがセットになったアートエディション。LOT.536《My Window, Art Edition(No.751-1000)》、LOT.537《My Window, Art Edition(No.251-500)》は、落札予想価格100~150万円のところ、LOT.537は212万7500円、LOT.536は、201万2500円で落札された。
“ブルー・ギター”シリーズは、詩人ウォレス・スティーブンとピカソの絵にインスパイアされて制作された詩画集からの作品である。いずれもエッチング、アクアチントによるエディション200の版画作品となっており、LOT.534《明暗法で(9)「ブルー・ギター」より》は、落札予想価格15~25万円のところ、43万7000円で落札された。LOT.535《パレード(6)「ブルー・ギター」より》は、落札予想価格20~30万円のところ、36万8000円で落札された。
“ブルー・ギター”シリーズの最近の5年間の指標(ACF美術品パフォーマンス指標)を見てみると、
2016年の落札価格平均、16万4000円から始まり、以降25万円付近で上下動をみせながら、落札予想価格上限付近を推移している。2020年に下降を見せるが、落札予想価格内で収まっている。落札中央値の推移を示す落札価格による時価指数は、2016年の約17万円から始まり、20~30万円の間で安定している。今回のセール結果から、上昇にも期待が持てる。
現存している作家の今後の活動と合わせ、パフォーマンス動向も注視していきたい。
※シリーズの中で、代表作《老いたギタリスト》という作品は評価が高く、データ上で異常値となる為、
除いてグラフ化している。
●次回のSBIアートオークション開催予定●
【LIVE STREAM AUCTION】 Modern and Contemporary Art
2021年4月2日(金) 13:00-
2021年4月3日(土) 13:00-
【お問い合わせ先】SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-1 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp
会場: マレットジャパン オークションハウス
セール: SALE#210128
日時: 2021年1月28日(木曜日)14:00~
落札総額: 140,020,000円(落札手数料含まず)
落札率: 85.32%
作品数: 259点(落札221点、 不落札38点)
1月28日(木)に開催されたマレットオークションについてレポートする。全体の出来高は、1億4002万円(落札手数料含まず・以下同)、落札率は85.32%だった。絵画作品だけでなく、ガレやドームの芸術性の高いガラス工芸作品やパリを拠点に活動する写真家・オノデラユキのポートレート作品など、世界各国から集められた多様な美術品259点がセールにかけられた。
最高額で落札されたのは、具体美術作家として知られている松谷武判の作品LOT.72《流動-89》(117×89㎝)で、落札予想価格400~600万円のところ、落札予想価格上限と同額の600万円で落札された。白いキャンバスに漆黒の合成ボンドを垂らしたモノクロの世界で、存在感のある躍動が表現された本作は、松谷の世界観が強く感じられる作品であり、高額での落札となった。松谷は、他にも3点の出品があったが、内2点は不落札で、作品によって評価が分かれる結果となった。
次に高額落札となったのは、アクリル絵の具を使い、手で直接段ボールに少女を描き上げたロッカクアヤコのオリジナル作品LOT.79《無題》(81×33㎝)で、落札予想価格200~300万円のところ530万円で落札された。ロッカクは、他にもオリジナル1点、マルチプル3点の出品があったが、いずれも落札予想価格上限を上回る金額での落札となり、安定した人気を誇っている。
今回は、日本を代表する現代美術家のひとりである村上隆(むらかみ・たかし、1962-)にスポットを当てる。村上は、海外で開催されたオークションで、美少女や青年の等身大フィギュアが高額落札されたことで世界的にもその名を知られている。村上が描く「DOB君」「かいかい」「きき」「お花」などのキャラクターは、若者を中心に人気があり、有名ブランドやアーティストとコレボレーションすることも多く、国内においてもその認知度は高い。
本セールでは、「DOB君」「お花」「ドラえもん」シリーズ等14点の出品があった。
中でも、LOT.110~113の「ドラえもん」をモチーフとしたオフセットプリント作品4LOTをピックアップし、動向を読み解く。「ドラえもん」をモチーフとした作品は、2002年に開催された『THEドラえもん展』で藤子・F・不二雄に制作を依頼されたことに始まり、後の『THEドラえもん展』でも展開されたシリーズである。
LOT.110《藤子・F・不二雄先生とドラえもんがお花畑に居る/ドラえもんの日常/お花畑の中のドラえもん》の3点セットは、落札予想価格15~20万円のところ、15万円で落札された。LOT.111《ドラえもん ありがとう/さぁ!いくぞ!/えいえいおー!》の3点セットは、LOT.110と同じ落札予想価格だったが、不落札だった。続く、LOT.112《お花畑の中の「どこでもドア」/「どこでもドア」でお花畑にやってきた!》の2点セットは、落札予想価格10~15万円のところ、11万円で落札、LOT.113《藤子・F・不二雄先生とタイムマシンで何処までも!/どこでもドア いろいろあるよ》の2点セットは、落札予想価格12~17万円のところ、13万円での落札となった。1点の不落札を除き、落札予想価格内で落札された。
同一条件(ドラえもんシリーズ・オフセットプリント・エディション1000)の作品を抽出分析したACF美術品パフォーマンス指標注*を見てみると、オークション市場に登場した2017年には、落札予想価格上限を超えて落札され、2019年では、落札予想価格上限に近い価格での落札となっている。2020年に全体的に上昇したように見受けられるが、これは今回のような複数セットでの出品によるもので、1点当たりでみるとほぼ横ばい傾向にある。ドラえもんシリーズは、複数で出品されることが多く、2020年10月には、11点で出品されたこともあった。この安定した値動きが、上昇と下降どちらに推移していくのか、その動向を今後も注視していきたい。
注*:選出の作品は2017年からオークション市場に登場している為、ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、2017年からのデータをグラフ化している。また、2018年には出品が無かった為、2018年を除いたグラフとなっている。
●次回のマレットジャパンオークション開催予定●
2021年3月18日(木)14:00~ Modern and Contemporary Art
2021年3月20日(土・祝) 14:00~ 特別セール
「村上春樹氏の草稿・署名本(黒河内コレクションより)」
会場:マレットジャパン オークションハウス
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
※YouTubeにて、ライブ配信も行っています。
【お問合せ先】
株式会社マレットジャパン
〒135-0016 東京都江東区東陽3-22-6 東陽町AXISビル1F
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E-mail:info@mallet.co.jp