会場: Shinwa Auction(シンワオークション) 銀座メディカルビル1F・B1F
セール: 近代美術 戦後美術&CONTEMPORARY ART / 近代美術PartⅡ / MANGA
日時: 2020年7月4日(土曜日)15:00~
落札総額:67,755,000円(落札手数料含まず)
落札率:80.84%
作品数:261点(落札211点,不落札50点)
7月4日(土)に開催されたシンワオークションについてレポートする。5月30日(土)に開催が予定されていたが、コロナの影響により延期となっていたセールである。セール内容は、戦後美術&コンテンポラリーアート、近代美術(PartⅡ)、MANGAとなっており、全体の出来高は、全体落札総額6775万5000円(落札手数料含まず・以下同)、全体落札率は80.84%で、好調なセールだった。中でも、MANGAを除く、近代美術&コンテンポラリーアート、近代美術(PartⅡ)では、219点の作品がセールにかけられ、その落札率は84.93%となっている。
今回のセールでは、近代美術・洋画の作品が好調で、落札価格上位を占めていた。
最高額を記録したのは、荻須高徳のLot630《ボーヴェ フランス》(6号、油彩・キャンヴァス)。荻須はパリで暮らし、パリの街角や都市風景を描き続けた作家で、その作品はフランスでも高く評価されている。本作もフランスの街角を描いた作品で、落札予想価格150~250万円を大幅に上回る440万円で落札された。
次いで、香月泰男によるLot631《蝉》(4号、油彩・キャンヴァス)。 黒と黄土色を基調とした背面に、蝉が描かれたその作品は、落札予想価格200~300万円に対して370万円の高値をつけた。
その次に、絹谷幸二のLot629《河口湖上日ノ出不二》(1号、アフレスコ)が続く。アフレスコ(フレスコ画)は、ヨーロッパの壁画技法で、絹谷はその技法を駆使した色鮮やかで躍動感に満ちた作品を得意としている。その中でも富士山をモチーフにした作品を多く手掛けており、本作もその1つである。落札予想価格120~180万円のところ、250万円で競り落された。以上の3作品は、Lot629、630、631と続いており、連続する高額落札は会場を沸かし、著名な日本洋画作家の堅調を印象づける結果となった。
コンテンポラリーアートでは、67点の作品がセールにかけられた。
その中から、抽象画家として活躍した浅野弥衛(あさの やえ、1914-1996)にスポットを当てレポートする。浅野弥衛は、“線の画家”とも呼ばれており、「ひっかき」という技で、シンプルな線を刻み、描くことで様々な表現が生まれ、独自性の高い作品となって評価されている。
今回、出品された作品は、正方形の紙にクレヨンを多色使いし、線描を重ね描いたLot611《無題》(56.0×56.0㎝)。落札予想価格35~60万円に対し、落札予想価格内の42万円で落札された。
浅野の2016年~2020年のオークションデータからドローイング作品を抽出したACFパフォーマンス指標により価格動向を分析する。
落札価格平均は、28万9000円をスタートに、僅かな変動が見られるものの、2019年までほぼ横ばい傾向で推移している。
落札価格による時価指数、パフォーマンス指標、いずれのグラフからも2020年に急騰したような印象を受けるが、この出品作品の大きめなサイズの作品、あるいは作品クオリティの高さという特徴が、その際立った上昇要因であったものと考えられる。浅野の作品は、4~6号サイズの出品が最も多く、大きい作品は比較的少ない。今後もサイズが大きく良質な作品の出品があれば、高い伸びを見せることがあるかも知れない。いずれにしても、落札予想価格下限平均を下回ることもなく、安定した作家銘柄といえるだろう。
●次回のシンワオークション開催予定●
2日間連続開催
近代陶芸 / 近代陶芸PartⅡ / 近代美術 / 戦後美術&CONTEMPORARY ART
2020年9月19日(土) 15:00~
BAGS JEWELRY&WATCHES / 近代美術PartⅡ
2020年9月20日(日) 13:00~
会場:銀座メディカルビル1F・B1F
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
【お問い合わせ先】
Shinwa Auction株式会社
〒104-0061 東京都中央区銀座7-4-12 銀座メディカルビル2F
TEL:03-3569-0032 E-mail:info@shinwa-auction.com
会場: SBI Art Auction(ヒルサイドフォーラム)
セール: 第37回モダン&コンテンポラリーアートオークション
日時: 2020年6月19日(金曜日)15:00~・6月20日(土曜日)13:00~
落札総額:753,457,000円(落札手数料込み・税抜)
落札率:90.4%
作品数:563点(落札509点,不落札54点)
今回は、6月19日(金)・20日(土)の2日間で開催されたSBIアートオークションについてレポートする。出来高は、全体落札総額7億5345万7000円(落札手数料含む・以下同)、全体落札率は90.4%と、好調なセールとなった。コロナ対策の一環として、ウェブや電話での入札を利用するよう事前告知もあったが、会場はコロナ禍以前と同等の賑わいを見せることもあり、活気を帯びた2日間となった。
本セールでは、落札金額1000万円を超える高額での落札作品が11作品あった。その上位には、草間彌生4作品、奈良美智3作品が含まれ、両作家の根強い人気が顕著に現れている。
最高額での落札となったのは、今回のオークションカタログの表紙を飾った作品で、奈良美智の代表作の一つである「あおもり犬」に似た白い犬のオブジェと犬小屋を組み合わせた立体作品Lot298「Dogs from Your Childhood」。落札予想価格4000~7000万円のところ、5290万円で落札された。
次に、草間彌生の代表的なモチーフ作品である「南瓜」のオリジナル作品が2作品続く。Lot293「南瓜(黄色)」(F4号、アクリル・キャンヴァス)は、落札予想価格3500~5000万円のところ、4140万円で落札された。 Lot294「かぼちゃ(赤色)」(F4号、アクリル・キャンヴァス)は、落札予想価格3000~5000万円のところ、3680万円で落札された。いずれも落札予想価格内での落札であったが、落札総額に大きく貢献する結果となった。
高額落札作品の中でも特筆すべきは、若手作家である井田幸昌による油彩・キャンヴァスの作品だ。今回は2作品の出品があったが、Lot315「End of today 7/3/2018-Home town sky」は、落札予想価格80-140万円に対して264万5000円、Lot316「Pig」は、落札予想価格200~300万円に対して1840万円と、いずれも落札予想価格を大幅に上回る価格での落札となり、会場を沸かせた。まだセカンダリーマーケットでの出品が少ない作家ではあるが、出品時には、常に予想価格を上回る価格での落札を見せており、今後の動向が大いに注目される作家の一人といえよう。
今回のレポートでは、戦後の日本を代表する書家である井上有一(いのうえゆういち,1916-1985)に焦点を当てる。井上有一は、「書」を現代芸術の文脈で表現することで、新たな書の世界観を確立し、国際的にも高い評価を得た作家である。中でも、一枚の紙に大筆で一文字のみを画く「一字書」を得意とし、多くの作品を残している。
今回、出品された作品は、縦長の和紙に墨で画いたLot277 「大賈深蔵」(127.5×58.5㎝)。
落札予想価格250~350円に対し、落札予想価格の上限に近い322万円で落札された。
本作品と同等サイズの井上の作品価格の推移を、2015~2020年のオークションデータを抽出したACFパフォーマンス指標(注*)で分析する。落札価格平均は、2015年から2020年にかけて緩やかな上昇トレンドで推移している。2015年は、落札価格平均が落札予想価格上限平均を上回り、その結果を受け、翌年以降は全体的に上昇していることがわかる。2017年にわずかに落ち込みをみせるも、2019年、2020年では300万円台に落ち着いている。また、落札中央値も200~300万円で推移し、安定した銘柄となっている。
注∗: 2018年は国内で同様作品の出品がなかった為、ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、2015~2020年から2018年を除いた5年間のデータからグラフ化している。
次回、SBIアートオークションでは、会場を使用しないライブ配信型オークション「SBI Art Auction Live Stream」を8月に開催する予定でいる。コロナ禍を経て計画された形式で、従来のオンラインのみのオークションとは異なり、実際にオークショニアがオークションを執り行う中、動画配信を見ながら、PCやスマホの画面越しにオンラインもしくは電話でオークション参加ができるというもの。オークションとは縁遠かったアートファンが、今までよりも気軽に参加できる機会ができた。
コロナ禍を考慮した新たな施策が、顧客の購買行動や消費の変化、価値観やライフスタイルの変化に
反応し、オークション市場にどのような影響をもたらすか注視していきたい。
●次回のSBIアートオークション開催予定●
2020年8月1日(土) 13:00~
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
【お問い合わせ先】
SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-1 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp
会場: Shinwa Auction(シンワオークション)
セール: 近代美術 戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術Part Ⅱ
日時: 2020年6月6日(土曜日)15:00~
落札総額:186,675,000円(落札手数料含まず)
落札率:87.78%
作品数:311点(落札273点、 不落札38点)
2020年5月25日、新型コロナウイルス危機に対する緊急事態解除が宣言された。業種別に自粛も徐々に解け、3密を避けるために開催が延期されていたアートオークションも、5月中旬に毎日オークションでセールが開催されたのを皮切りに、6月に入りセールが開催されるようになった。
今回は、6月6日(土)に開催されたシンワオークションについてレポートする。本オークションは、3月28日(土)に開催を予定していたオークションで、バッグ・ジュエリー・時計のセールに加え、戦後美術&コンテンポラリーアート、近代美術(Part II)のセール内容となっている。セール全体の出来高は、全体落札総額2億1065万円(落札手数料含まず※以下同)、全体落札率83.00%と、コロナ禍による影響が懸念された中、活況を呈した。中でも、戦後美術&コンテンポラリーアート、近代美術Part Ⅱ では、311点の作品がセールにかけられ、出来高は、落札総額1億8667万5千円、落札率は87.78%という高い水準であった。コロナ禍の経済悪化を感じさせない力強いセール結果となっている。
最高額での落札となったのは、モーリス・ユトリロのパリ郊外の見通しの良い通りをモチーフとした白の時代の油彩・キャンバスの作品Lot356「郊外の通り」で、落札予想価格1500~2500万円のところ、1650万円で落札された。次いで、加山又造のLot257「不二」(紙本・彩色)。富士山が金泥で描かれた作品で、落札予想価格1000~2000万円のところ、1550万円で落札された。同様に富士山が群青で描かれた作品Lot258「青富士」の出品があったが、落札予想価格500~1000万円に対し、落札予想価格上限を上回る1100万円の高額落札となっている。オークションカタログ内で「加山又造の富士」という特集が組まれ、作品の重要性が見開きページで解説されており、そのことも高額落札への後押しとなったかもしれない。
今回は、日本とフランスを拠点に国際的に活躍する韓国出身の現代美術家、李禹煥(リ・ウーファン,1936-)にスポットを当て、レポートする。
李禹煥は、1960年代末から70年代初めに日本で起こった芸術運動「もの派」の中心的な作家の一人で、理論的な基盤を築いた作家と言われる。 ガラスや鉄板などで構成され「対象物の配置のみ」のインスタレーションや、キャンバスに線や点を反復的に描いていく「From point」「From line」シリーズなどが代表作として広く知られている。
本セールでは、3点の版画作品が出品され、いずれも落札予想価格内、予想価格上限越えで落札されている。その中の1作品、Lot281 「IN MILANO 5」(150.0×89.0㎝)は、落札予想価格20~30万円に対し、上値の1.4倍の42万円で落札された。「IN MILANO 5」は、1992年に制作された5点組の版画(リトグラフ、ドライポイント)作品で、これまでも5点組や単品でセールにかけられることがあった。「IN MILANO」シリーズの単品作品の落札データを2015~2020年のオークションデータを抽出分析したACFパフォーマンス指標(注¹)で読み解く。
落札価格平均は、10数パーセント程度の上下変動があるものの、全体としては35~42万程度の横ばい傾向で落ち着いている。2019年まで落札予想価格上限下限内に収まりながらの推移となるが、2020年になり、落札予想価格上限を上回る結果となっている。出品時の評価は多少下がることがあっても、大きな下落もない堅実さが見て取れる。時価指数も同様の動きを見せ40万前後で推移しており、こちらからも安定した銘柄であることがわかる。海外でも評価が高く、オリジナル作品は億を超える落札もあった李禹煥の作品。 コレクションに検討してみてはいかがだろうか。
注¹:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、2017年は国内で同作品の出品がなかった為、2015~2020年から2017年を除いた5年間のデータからグラフ化している。
●次回のシンワオークション開催予定●
近代美術/近代美術PartⅡ 戦後美術&CONTEMPORARY ART / MANGA
2020年7月4日(土) 15:00(会場14:30)~
会場:銀座メディカルビル
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
※5月30日(土)開催予定だったオークションです。
【お問い合わせ先】
Shinwa Auction株式会社
〒104-0061 東京都中央区銀座7-4-12 銀座メディカルビル2F
TEL:03-3569-0032 E-mail:info@shinwa-auction.com
先月に引き続き、コロナ禍においてアートマーケットの現状についてレポートする。
臨時休館を行っていた各地の美術館・博物館では、日本博物館協会の感染拡大防止ガイドラインや国際美術館会議の新型コロナに関する注意事項などに則り、感染拡大の防止を図りながら、開館の動きを見せている。既に、ドイツ・イタリア・フランスなどでは、ギャラリーや小規模な博物館・美術館が条件付きで再開しており、それぞれの国のガイドラインに従ったチケットのオンライン購入や展示室内でのソーシャル・ディスタンスの確保などの感染リスクへの対策が、参考になるかもしれない。
自粛によりセール開催が延期されていた国内のオークションハウスで、一早くセールを開催したのは、毎日オークションである。
毎日オークションでは、4月11日(土)に開催を予定していた「第637回絵画・版画・彫刻オークション」が5月15日(金)・16日(土)の2日間で開催された。
感染リスクへの具体的な対策として、スタッフの検温、手指の消毒、マスク着用の徹底はもちろんのこと、スタッフとの接触が想定される箇所には、透明カーテンや会場内やアクリル板の設置、扉開放による換気など環境も整備された。事前の案内では、WEB・書面・電話などでの入札を推奨し、来場者数を減らすとともに、下見会やオークションへの来場を完全予約制とし人数制限が行われた。来場者には、検温と手指のアルコール消毒とマスク着用厳守の協力が求められ、来場者の安全、スタッフの安全、施設管理、パブリック・コミュニケーションいずれの観点においても、十分な注意を払っての開催となった。
今回のオークションでは、958点の美術品がセールにかけられた。出来高は、落札総額9,992万8千円(手数料含まず)、落札率は、72.7%であり、コロナ禍における大きな影響を感じさせない結果となった。
熊谷守一の水墨淡彩画LOT551「猫」が、落札予想価格70~100万円のところ、220万円で落札され、本セールでの最高額での落札となった。次に高額落札だったのは、草間彌生のシルクスクリーン作品LOT720「かぼちゃ(GT)」で、落札予想価格100~150万円のところ、210万円で落札された。両作家とも、複数の出品があるが、いずれも落札予想価格下値を下回る落札もなく、手堅い落札結果となった。
6月には、毎日オークションはじめ、SBIアートオークション、SHINWA AUCTION、マレットジャパン オークションと国内のオークションハウスで順延となっていたセールの開催が予定されている。
また、SBIアートオークションでは、2020年8月頃を目処に会場を使用しない無観客でのオークションの開催を計画しているという。これは従来のオンラインのみのオークションとは異なり、実際にオークショニアがオークションを執り行い、顧客は家で動画配信を見ながら、画面越しにオンラインまたは電話でオークションに参加できるというもの。コロナ禍を機に計画された、新しいオークション形式の提案である。出品作品は、これまでのモダン&コンテンポラリーアートオークションの特色を踏襲しながら、新規顧客にも参加しやすいラインナップを取りそろえる予定だという。“無観客オークション”という新しい試みに注目したい。
海外のオークションハウス、サザビーズやクリスティーズでは、ビット期間を設けて入札方式でのオンラインでのオークションを行っている。5月4日~14日にオンラインで開催されたサザビーズのコンテンポラリー・アート・デー・オークションでは、1370万ドル(約14億6800万円)の売上があり、オンライン販売での可能性の大きさに期待が高まる。
依然、アート市場全体としては、コロナ禍による作家活動やマーケットの停滞が続いており、そのダメージは計り知れない。活躍の場が減ったアーティスト、再開が難しくなっている美術館、画廊などへの確実な支援が緊急課題となる。再開した美術館やオークションハウスでも、今回のような緊急事態を見据えたニューノーマルへの適切な対応が求められている。
新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大により、経済の各業界に影響が現れている。
経済全体が落ち込みを見せる中でも、コロナ特需というべき活況を呈している業界もあるが、アートマーケットにおいて、どのような現状になっているかレポートする。
4月7日に7都道府県に発令された、特別措置法に基づく「緊急事態宣言」により、多くのイベントなどへ自粛要請が出された。
その発表の前後、国内で開催を予定していたオークションは、延期となっている。
早々と延期となったオークションは、3月28日(土)に開催予定だったシンワオークションの「近代美術/近代美術パートⅡオークション」「戦後美術&コンテンポラリーアートオークション」である。「緊急事態宣言」発令前の、迅速な延期判断であった。シンワオークションでは、開催日前週の金曜日までに「緊急事態宣言」が解除されなかった場合、再度開催日の変更を行うという脚注とともに延期日程を5月16日(土)と案内している。
毎日オークションは、4月11日(土)「第637回絵画・版画・彫刻オークション」を5月9日(土)に延期する。4月25日(土)に開催予定だったSBIアートオークションの「第37回モダン&コンテンポラリーアートオークション」は、6月19日(金)と20日(土)の開催に向けて準備を進めている。マレットジャパン オークションは、次回のオークション日時が5月14日(木)のところ、開催予定を5月21日(木)にすると、先々の予定ながら早くも日程の延期を行っている。
これまで経験してきたいくつかの大不況時には、オークション会社ではセールの規模の縮小があったものの開催時期の延期はほとんど行われておらず、今回のコロナ禍での事態はマーケットにどのような影響を与えるものかは未知数である。セールの延期や中止という事態は、美術資産の流動性の喪失を意味するものではあるが、考え方によれば、株式市場におけるサーキットブレーキの役割をもたらしているとみることもできるかもしれない。
そうした中、オークション会社によっては、YouTubeなどでオークションのライブ配信や、Web上でのプライベートセールを行っているが、今後は、今まで以上にリモートによるセール開催が検討されるかもしれない。オンライン、電話、ウェブサイトを通じた入札など多様なチャンネル利用の奨励が進むことになるであろう。
海外のセールに関しては、クリスティーズが3月中旬 NY アジア・アートウィーク ・5月中旬 NY 20世紀アートウィーク ・5月中旬ジュネーヴラグジュアリーセール ・5月下旬香港セールを延期としている。サザビーズは4月上旬に予定されていた香港のオークションを5月に延期している。
アートフェアも次々と延期となっている。
3月に開催されたオランダのアートフェア「TEFAFマーストリヒト」では、出展者が新型コロナウイルスに感染した為に、会期中に閉幕するという事態も起こった。
アジア最大のアートフェア「アート・バーゼル香港」、同じく香港で開催の「アートセントラル」、アラビア半島最大のアートフェア「アート・ドバイ」等、3月中旬、下旬に開催予定だったアートフェアが延期を発表しており、その開催時期はいずれも未定である。
密集・密接・密閉「3密」環境から切り離すのが難しい場所となる多くの美術館も、政府の要請に従い、長期の臨時休館を余儀なくされている。美術館は、企画展を開催するまでに準備日数が必要となるため、「緊急事態宣言」解除後も、すぐに開館することが容易ではない。
そんな中でも、オンラインビューイング、バーチャル・ギャラリー、SNSの活用などでアートを多くの方に楽しんでもらおうと試みている美術館やアートフェアもある。普段、こうした施設を訪れる機会がないという方も、これを機に、アクセスしてみるのもいいだろう。
いずれにしても、アートマーケットは軒並み停滞しており、厳しい現状となっている。
先行き不透明で予測ができない状況の中、新しい価値観・環境下で、その存在意義や在り方を追考する時なのかもしれない。