会場: マレットジャパン(マレットジャパン オークションハウス)
セール: SALE#200910
日時: 2020年9月10日(木曜日)15:00~
落札総額: 124,970,000円(落札手数料含まず)
落札率: 77.5%
作品数: 作品数:209点(落札162点、 不落札48点)
今回は9月10日(木)に開催されたマレットジャパンのオークションについてレポートする。
マレットジャパンは、ジャンルにとらわれることなく、国内作家の高額作品および、国際市場性のある海外作家の高額作品を重点的に取り扱う、国内の主要なオークションハウスのひとつである。
本セールでは、国内外作家118名(国内:65名、海外:53名)209作品がセールにかけられた。出来高は、落札総額1億2,497万円(落札手数料含まず、以下同)、落札率は77.5%だった。
ロッカク アヤコ(1982年~)のキャンバス作品LOT145(180.0×140.6㎝)が、落札予想価格1,200~1,700万円のところ、2,000万円で落札された。今回のオークションでは最高額での落札となり、安定した人気である。
また前回のレポートでもコメントしたミスター・ドゥードゥル(1994年~)のキャンバス作品が2点出品され、LOT142「A Piece of ‘Rainbow Doodle’」(30.0×30.0㎝)は落札予想価格40~60万円のところ255万円、もう一点のLOT143「Doodling」(15.0×15.0㎝)が落札予想価格10~15万円のところ60万で落札された。ミスター・ドゥードゥルはイギリス出身のアーティストで2019年東京アートフェアに登場し、ハローキティとコラボレーションした作品は即完売、市場で話題の作家である。
今回は現代アートのマーケットでも高く評価されている陶芸家 桑田卓郎(くわた たくろう・1981年~)についてレポートする。
本セールでは、「ろくろ」を用いず制作した大ぶりの楽茶椀1点が出品された。LOT167「金彩垸」(高9.0cm 径12.1cm)で、落札予想価格10~15万円のところ、26万円で落札された。
桑田卓郎は1981年広島に生まれ2002年より陶芸家・財満進に師事、現在は岐阜県土岐市に工房を構えて活動している。古来の技法に独創性とポップな色彩表現を加え、伝統的な技術と美しさを蘇らせる作品を数多く制作しており、釉薬が粒状や縮れ状になる技法をデフォルメしつつわかりやすく伝える作風を特徴としている。
同作家の陶芸作品を抽出分析したACF美術品パフォーマンス指標注*を見てみると、2017年にオークション市場に登場して以来、ほとんどの作品が落札予想価格上限より高く落札されている現在活躍中であり、未だオークション市場での出品作品数はさほど多くない。手にとりやすい「ぐい呑み」などの小品に比べ、大振りの「茶碗」は制作に時間を要し、作家本来の持ち味が楽しめるため、人気度を測る上で参考になる。高額な大型作品が出品された時に、落札平均や中央値が大幅に左右されてしまうことがあるが(2020年はぐい吞みなどの低価格の小ぶりな作品の出品が多い)、今後も価格上昇が見込める作家と考えられる。
注*:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、桑田卓郎の作品は2017年からオークション市場に登場している為、2017年~2020年のデータをグラフ化している。
次回のマレットオークション開催予定
2020年11月19日(木)14:00~
会場:マレットジャパン オークションハウス
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
※YouTubeにて、ライブ配信も行っています。
【お問い合わせ先】
株式会社マレットジャパン
〒135-0016 東京都江東区東陽3-22-6 東陽町AXISビル1F
TEL:03-5635-1777 FAX:03-5635-1778
E-mail:info@mallet.co.jp
会場: SBI Art Auction / ライブ配信型オークション
セール: LIVE STREAM
日時: 2020年8月1日(土曜日)13:00~
落札総額:190,152,500円(落札手数料込み・税抜)
落札率:94.1%
作品数:286点(落札269点,不落札17点)
今回は、8月1日(土)に開催された会場を使用しないライブ配信型オークション「SBI Art Auction Live Stream」をレポートする。ライブ配信型オークションは、従来のオンラインのみのオークションとは異なり、実際にオークショニアがオークションを執り行う中、動画配信を見ながら、PCやスマホの画面越しにオンラインもしくは電話でオークション参加ができるというもので、Withコロナ時代にスタートした新しい形式のオークションである。
出来高は、全体落札総額1億9015万2500円(落札手数料含む・以下同)、全体落札率は94.1%と好記録を達成し、非常に活況なセールとなった。
最高額での落札となったのは、ロッカクアヤコの大型作品Lot.081《無題》(アクリル・キャンヴァス/140×100cm)。落札予想価格700~1000万円のところ、1782万5千円で落札された。ロッカクアヤコは2点の出品があったが、もう一方の作品Lot.082《無題》(アクリル・段ボール/80×54.6cm)は落札予想価格150~250万円のところ、391万円で落札されている。いずれも筆などを使わず、手で少女を描きあげたロッカクアヤコの特徴的な作品である。近年のオークションでは常に安定した結果を残しており、手堅い人気銘柄となっている。
次にMr. Doodleのオリジナル作品Lot.087《Hot Summer》(アクリル・キャンヴァス/縦横100cm)が続く。落札予想価格100~150万円のところ、落札予想価格上限を大きく上回る575万円で落札された。イギリス出身のMr. Doodleは、最近のオークション市場で高騰を見せている作家である。作家名の「Doodle」は、落書きのことを意味している。太めのペン1本で落書きをするように仕上げられた作品は、POPでわかりやすく楽しむことができ、鑑賞する者を魅了する。近年アパレルブランドとコラボレーションした製品展開などもあり、その注目度の高さも相場上昇の一因と考えられる。
Mr. Doodleの版画作品(Lot.034~037)とオリジナル作品(Lot.085~087)は、WEBのアクセス数が最も多く、電話もほぼ全て埋まっていたという。その状況を反映し、出品作品7点全てが落札予想価格上限を大幅に上回る価格で落札された。今後の値動きに期待が高まる。
今回は、土屋仁応(つちや よしまさ,1977-)に焦点を当てレポートする。
土屋仁応は、伝統的な仏像彫刻の技法を用いて、主に動物をモチーフとした作品を現代風に制作する木彫作家である。木彫とは思えない滑らかな質感と乳白ベースの独特な色彩と、目に内側から水晶をはめ込む玉眼という仏像彫刻の技法で仕上げられた、繊細かつ神秘的な作品を多く発表している。
国内外でも人気は高く、今回のセールでアクセス数が多かった作家の一人にもなっている。
本セールでは2点の木彫作品の出品があった。1点は高さ22㎝の猫の作品Lot.066《青猫》(檜に彩色、水晶)で、落札予想価格50~80万円のところ、212万7500円で落札された。続くLot.067《未来人》(樟に彩色、水晶)は、高さ28.5㎝の人型の作品で落札予想価格35~55万円のところ、92万円で落札されている。いずれも落札予想価格上限を超えた落札となった。
土屋の木彫作品の価格の推移を、2015~2019年のオークションデータを抽出したACFパフォーマンス指標で分析する。2017年に出品時の評価が下がっているが、これは出品されていた作品のサイズが他の出品作品に比べて小さかったことが影響していると考えられる。逆に2018年に評価が大きく上がっているが、これは他の出品作品に比べて大きいサイズの出品があったことと、2017年の好調なセール結果を加味したことによるものと推察される。
落札予想価格平均に上下動がみられるものの、落札価格平均は下落することなく、2015年から2019年にかけて右肩上がりで推移している。時価指数も同様の右肩上がりで好調だ。この上昇傾向がどこまで続くのか、今後も、動向を注視していきたい。
SBIアートオークションでは、次回10月に開催するセールも、ライブ配信型で行うことを予定している。
時代に即した新たな入札環境の定着化、コロナ下における消費行動の変化などが、国内におけるアート市場のより一層の活性化につながることを期待する。
●次回のSBIアートオークション開催予定●
2020年10月3日(土) モダン&コンテンポラリー・アート|LIVE STREAMオークション
※下見会はございません。
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
【お問い合わせ先】
SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-1 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp
会場: Shinwa Auction(シンワオークション) 銀座メディカルビル1F・B1F
セール: 近代美術 戦後美術&CONTEMPORARY ART / 近代美術PartⅡ / MANGA
日時: 2020年7月4日(土曜日)15:00~
落札総額:67,755,000円(落札手数料含まず)
落札率:80.84%
作品数:261点(落札211点,不落札50点)
7月4日(土)に開催されたシンワオークションについてレポートする。5月30日(土)に開催が予定されていたが、コロナの影響により延期となっていたセールである。セール内容は、戦後美術&コンテンポラリーアート、近代美術(PartⅡ)、MANGAとなっており、全体の出来高は、全体落札総額6775万5000円(落札手数料含まず・以下同)、全体落札率は80.84%で、好調なセールだった。中でも、MANGAを除く、近代美術&コンテンポラリーアート、近代美術(PartⅡ)では、219点の作品がセールにかけられ、その落札率は84.93%となっている。
今回のセールでは、近代美術・洋画の作品が好調で、落札価格上位を占めていた。
最高額を記録したのは、荻須高徳のLot630《ボーヴェ フランス》(6号、油彩・キャンヴァス)。荻須はパリで暮らし、パリの街角や都市風景を描き続けた作家で、その作品はフランスでも高く評価されている。本作もフランスの街角を描いた作品で、落札予想価格150~250万円を大幅に上回る440万円で落札された。
次いで、香月泰男によるLot631《蝉》(4号、油彩・キャンヴァス)。 黒と黄土色を基調とした背面に、蝉が描かれたその作品は、落札予想価格200~300万円に対して370万円の高値をつけた。
その次に、絹谷幸二のLot629《河口湖上日ノ出不二》(1号、アフレスコ)が続く。アフレスコ(フレスコ画)は、ヨーロッパの壁画技法で、絹谷はその技法を駆使した色鮮やかで躍動感に満ちた作品を得意としている。その中でも富士山をモチーフにした作品を多く手掛けており、本作もその1つである。落札予想価格120~180万円のところ、250万円で競り落された。以上の3作品は、Lot629、630、631と続いており、連続する高額落札は会場を沸かし、著名な日本洋画作家の堅調を印象づける結果となった。
コンテンポラリーアートでは、67点の作品がセールにかけられた。
その中から、抽象画家として活躍した浅野弥衛(あさの やえ、1914-1996)にスポットを当てレポートする。浅野弥衛は、“線の画家”とも呼ばれており、「ひっかき」という技で、シンプルな線を刻み、描くことで様々な表現が生まれ、独自性の高い作品となって評価されている。
今回、出品された作品は、正方形の紙にクレヨンを多色使いし、線描を重ね描いたLot611《無題》(56.0×56.0㎝)。落札予想価格35~60万円に対し、落札予想価格内の42万円で落札された。
浅野の2016年~2020年のオークションデータからドローイング作品を抽出したACFパフォーマンス指標により価格動向を分析する。
落札価格平均は、28万9000円をスタートに、僅かな変動が見られるものの、2019年までほぼ横ばい傾向で推移している。
落札価格による時価指数、パフォーマンス指標、いずれのグラフからも2020年に急騰したような印象を受けるが、この出品作品の大きめなサイズの作品、あるいは作品クオリティの高さという特徴が、その際立った上昇要因であったものと考えられる。浅野の作品は、4~6号サイズの出品が最も多く、大きい作品は比較的少ない。今後もサイズが大きく良質な作品の出品があれば、高い伸びを見せることがあるかも知れない。いずれにしても、落札予想価格下限平均を下回ることもなく、安定した作家銘柄といえるだろう。
●次回のシンワオークション開催予定●
2日間連続開催
近代陶芸 / 近代陶芸PartⅡ / 近代美術 / 戦後美術&CONTEMPORARY ART
2020年9月19日(土) 15:00~
BAGS JEWELRY&WATCHES / 近代美術PartⅡ
2020年9月20日(日) 13:00~
会場:銀座メディカルビル1F・B1F
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
【お問い合わせ先】
Shinwa Auction株式会社
〒104-0061 東京都中央区銀座7-4-12 銀座メディカルビル2F
TEL:03-3569-0032 E-mail:info@shinwa-auction.com
会場: SBI Art Auction(ヒルサイドフォーラム)
セール: 第37回モダン&コンテンポラリーアートオークション
日時: 2020年6月19日(金曜日)15:00~・6月20日(土曜日)13:00~
落札総額:753,457,000円(落札手数料込み・税抜)
落札率:90.4%
作品数:563点(落札509点,不落札54点)
今回は、6月19日(金)・20日(土)の2日間で開催されたSBIアートオークションについてレポートする。出来高は、全体落札総額7億5345万7000円(落札手数料含む・以下同)、全体落札率は90.4%と、好調なセールとなった。コロナ対策の一環として、ウェブや電話での入札を利用するよう事前告知もあったが、会場はコロナ禍以前と同等の賑わいを見せることもあり、活気を帯びた2日間となった。
本セールでは、落札金額1000万円を超える高額での落札作品が11作品あった。その上位には、草間彌生4作品、奈良美智3作品が含まれ、両作家の根強い人気が顕著に現れている。
最高額での落札となったのは、今回のオークションカタログの表紙を飾った作品で、奈良美智の代表作の一つである「あおもり犬」に似た白い犬のオブジェと犬小屋を組み合わせた立体作品Lot298「Dogs from Your Childhood」。落札予想価格4000~7000万円のところ、5290万円で落札された。
次に、草間彌生の代表的なモチーフ作品である「南瓜」のオリジナル作品が2作品続く。Lot293「南瓜(黄色)」(F4号、アクリル・キャンヴァス)は、落札予想価格3500~5000万円のところ、4140万円で落札された。 Lot294「かぼちゃ(赤色)」(F4号、アクリル・キャンヴァス)は、落札予想価格3000~5000万円のところ、3680万円で落札された。いずれも落札予想価格内での落札であったが、落札総額に大きく貢献する結果となった。
高額落札作品の中でも特筆すべきは、若手作家である井田幸昌による油彩・キャンヴァスの作品だ。今回は2作品の出品があったが、Lot315「End of today 7/3/2018-Home town sky」は、落札予想価格80-140万円に対して264万5000円、Lot316「Pig」は、落札予想価格200~300万円に対して1840万円と、いずれも落札予想価格を大幅に上回る価格での落札となり、会場を沸かせた。まだセカンダリーマーケットでの出品が少ない作家ではあるが、出品時には、常に予想価格を上回る価格での落札を見せており、今後の動向が大いに注目される作家の一人といえよう。
今回のレポートでは、戦後の日本を代表する書家である井上有一(いのうえゆういち,1916-1985)に焦点を当てる。井上有一は、「書」を現代芸術の文脈で表現することで、新たな書の世界観を確立し、国際的にも高い評価を得た作家である。中でも、一枚の紙に大筆で一文字のみを画く「一字書」を得意とし、多くの作品を残している。
今回、出品された作品は、縦長の和紙に墨で画いたLot277 「大賈深蔵」(127.5×58.5㎝)。
落札予想価格250~350円に対し、落札予想価格の上限に近い322万円で落札された。
本作品と同等サイズの井上の作品価格の推移を、2015~2020年のオークションデータを抽出したACFパフォーマンス指標(注*)で分析する。落札価格平均は、2015年から2020年にかけて緩やかな上昇トレンドで推移している。2015年は、落札価格平均が落札予想価格上限平均を上回り、その結果を受け、翌年以降は全体的に上昇していることがわかる。2017年にわずかに落ち込みをみせるも、2019年、2020年では300万円台に落ち着いている。また、落札中央値も200~300万円で推移し、安定した銘柄となっている。
注∗: 2018年は国内で同様作品の出品がなかった為、ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、2015~2020年から2018年を除いた5年間のデータからグラフ化している。
次回、SBIアートオークションでは、会場を使用しないライブ配信型オークション「SBI Art Auction Live Stream」を8月に開催する予定でいる。コロナ禍を経て計画された形式で、従来のオンラインのみのオークションとは異なり、実際にオークショニアがオークションを執り行う中、動画配信を見ながら、PCやスマホの画面越しにオンラインもしくは電話でオークション参加ができるというもの。オークションとは縁遠かったアートファンが、今までよりも気軽に参加できる機会ができた。
コロナ禍を考慮した新たな施策が、顧客の購買行動や消費の変化、価値観やライフスタイルの変化に
反応し、オークション市場にどのような影響をもたらすか注視していきたい。
●次回のSBIアートオークション開催予定●
2020年8月1日(土) 13:00~
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
【お問い合わせ先】
SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-1 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp
会場: Shinwa Auction(シンワオークション)
セール: 近代美術 戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術Part Ⅱ
日時: 2020年6月6日(土曜日)15:00~
落札総額:186,675,000円(落札手数料含まず)
落札率:87.78%
作品数:311点(落札273点、 不落札38点)
2020年5月25日、新型コロナウイルス危機に対する緊急事態解除が宣言された。業種別に自粛も徐々に解け、3密を避けるために開催が延期されていたアートオークションも、5月中旬に毎日オークションでセールが開催されたのを皮切りに、6月に入りセールが開催されるようになった。
今回は、6月6日(土)に開催されたシンワオークションについてレポートする。本オークションは、3月28日(土)に開催を予定していたオークションで、バッグ・ジュエリー・時計のセールに加え、戦後美術&コンテンポラリーアート、近代美術(Part II)のセール内容となっている。セール全体の出来高は、全体落札総額2億1065万円(落札手数料含まず※以下同)、全体落札率83.00%と、コロナ禍による影響が懸念された中、活況を呈した。中でも、戦後美術&コンテンポラリーアート、近代美術Part Ⅱ では、311点の作品がセールにかけられ、出来高は、落札総額1億8667万5千円、落札率は87.78%という高い水準であった。コロナ禍の経済悪化を感じさせない力強いセール結果となっている。
最高額での落札となったのは、モーリス・ユトリロのパリ郊外の見通しの良い通りをモチーフとした白の時代の油彩・キャンバスの作品Lot356「郊外の通り」で、落札予想価格1500~2500万円のところ、1650万円で落札された。次いで、加山又造のLot257「不二」(紙本・彩色)。富士山が金泥で描かれた作品で、落札予想価格1000~2000万円のところ、1550万円で落札された。同様に富士山が群青で描かれた作品Lot258「青富士」の出品があったが、落札予想価格500~1000万円に対し、落札予想価格上限を上回る1100万円の高額落札となっている。オークションカタログ内で「加山又造の富士」という特集が組まれ、作品の重要性が見開きページで解説されており、そのことも高額落札への後押しとなったかもしれない。
今回は、日本とフランスを拠点に国際的に活躍する韓国出身の現代美術家、李禹煥(リ・ウーファン,1936-)にスポットを当て、レポートする。
李禹煥は、1960年代末から70年代初めに日本で起こった芸術運動「もの派」の中心的な作家の一人で、理論的な基盤を築いた作家と言われる。 ガラスや鉄板などで構成され「対象物の配置のみ」のインスタレーションや、キャンバスに線や点を反復的に描いていく「From point」「From line」シリーズなどが代表作として広く知られている。
本セールでは、3点の版画作品が出品され、いずれも落札予想価格内、予想価格上限越えで落札されている。その中の1作品、Lot281 「IN MILANO 5」(150.0×89.0㎝)は、落札予想価格20~30万円に対し、上値の1.4倍の42万円で落札された。「IN MILANO 5」は、1992年に制作された5点組の版画(リトグラフ、ドライポイント)作品で、これまでも5点組や単品でセールにかけられることがあった。「IN MILANO」シリーズの単品作品の落札データを2015~2020年のオークションデータを抽出分析したACFパフォーマンス指標(注¹)で読み解く。
落札価格平均は、10数パーセント程度の上下変動があるものの、全体としては35~42万程度の横ばい傾向で落ち着いている。2019年まで落札予想価格上限下限内に収まりながらの推移となるが、2020年になり、落札予想価格上限を上回る結果となっている。出品時の評価は多少下がることがあっても、大きな下落もない堅実さが見て取れる。時価指数も同様の動きを見せ40万前後で推移しており、こちらからも安定した銘柄であることがわかる。海外でも評価が高く、オリジナル作品は億を超える落札もあった李禹煥の作品。 コレクションに検討してみてはいかがだろうか。
注¹:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、2017年は国内で同作品の出品がなかった為、2015~2020年から2017年を除いた5年間のデータからグラフ化している。
●次回のシンワオークション開催予定●
近代美術/近代美術PartⅡ 戦後美術&CONTEMPORARY ART / MANGA
2020年7月4日(土) 15:00(会場14:30)~
会場:銀座メディカルビル
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
※5月30日(土)開催予定だったオークションです。
【お問い合わせ先】
Shinwa Auction株式会社
〒104-0061 東京都中央区銀座7-4-12 銀座メディカルビル2F
TEL:03-3569-0032 E-mail:info@shinwa-auction.com