会場: Shinwa Auction(シンワアートミュージアム)
セール: 近代美術 戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術Part II
日時: 2020年2月1日(土曜日)15:00~
落札総額:227,985,000円(落札手数料含まず)
落札率:81.05%
作品数:285点(落札231点、 不落札54点)
2月1日(土)にシンワアートミュージアム(東京・銀座)で開催されたシンワオークションについてレポートする。シンワオークションは、戦後美術から現代美術まで、国内外作家を問わず、幅広いジャンルの良質な作品がセールにかけられており、アートコレクターからも注目される国内主力のオークションハウスである。
2020年初開催となった本オークションでは、絵画作品269点、立体・その他の作品16点、285点の作品がセールにかけられた。出来高は、落札総額2億2798万5千円(落札手数料含まず・以下同)、落札率は81.05%という高水準であった。
1000万円を超える高額落札となった作品が4点あった。最高落札となった作品は、ベルナール・ビュッフェ「スペイン貴族」で、落札予想価格3500~4500万円のところ、落札予想価格下限の3500万円で落札された。次いで、モーリス・ユトリロ「郊外の教会」1550万円、マルク・シャガール「“青い風景の中のカップル”のための習作1969-1971」1200万円が続く。いずれもフランスの画家による油彩・キャンバス、鑑定書付きの作品である。オークション後半に連続でセールにかけられた3点であったが、高額落札の結果に熱い視線が注がれた。
4点目は、アメリカのリアリズム絵画の巨匠と知られるアンドリュー・ワイエスの作品「3本の煙突」で、落札予想価格300~400万円のところ、予想価格上限の2.75倍となる1100万円での落札となった。森の中に佇む古い家と納屋という何気ない風景を卓越した描写力で繊細に描いた水彩作品である。技法的に高値がつきにくいとされる水彩画であるが、高額落札の結果となったのは、ワイエスの水彩画に対する評価の高さといえるであろう。
今回は、山口長男(やまぐちたけお,1902-1983)に焦点を当て、レポートする。
山口長男は、日本の抽象絵画の先駆的な開拓者の一人と言われ、国内だけではなく、国際展への出品も多く、1960年代には、ニューヨーク近代美術館に所蔵されるなど、世界的にも注目された作家である。数ある作品の中でも、黒の地色の上に、黄土色や赤茶色の絵具を幾度となく塗り重ねた油彩作品に定評がある。
本セールでは、1972年に制作された作品、「引」(45.5×38.0㎝)が出品された。
支持体には板が用いられ、赤茶色の油彩を塗り重ねた前述した油彩の特徴的な作品である。落札予想価格400~600万円のところ、落札予想価格内の480万円で落札されている。
山口の2015~2019年10号サイズ以下油彩・抽象画作品のオークションデータを抽出分析したACFパフォーマンス指標を読み解く。落札価格平均は、2015年のみ落札予想価格上限平均を上回る結果となっている。以降は、この結果を受け、落札予想価格の評価も上がり、落札予想価格上限下限内に収まり、安定した推移となっている。2017年以降は250~280万円程度となり、ほぼ横ばい傾向で落ち着いている。
次回のシンワオークションでは、1975年に制作された板・油彩作品「線」の出品が予定されている。60.5×91.1cmと大型の作品で、落札予想価格は1000~1400万円。大きさが異なる作品のセール結果も合わせ、今後も動向を注視していきたい。
●次回のシンワオークション開催予定●
近代美術/近代美術PartⅡ 戦後美術&CONTEMPORARY ART
2020年3月28日(土) 15:00(開場14:30)~
会場:銀座メディカルビル1F・B1F
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
【お問い合わせ先】
Shinwa Auction株式会社
〒104-0061 東京都中央区銀座7-4-12 銀座メディカルビル2F
TEL:03-3569-0032 E-mail:info@shinwa-auction.com
会場: SBIアートオークション(代官山ヒルサイドフォーラム)
セール: MODERN AND CONTEMPORARY ART
日時: 2020年2月1日(土曜日)13:00~
落札総額:577,530,000円(落札手数料含む)
落札率:89.2%
作品数:436点(落札389点、 不落札47点)
今回は2月1日(土)に開催されたSBIアートオークションのオークションについてレポートする。
今回のセールでは、国内外作家193名(多作家出品は1名でカウント)、400作品以上がセールにかけられた。草間彌生、奈良美智などの国際的に活躍するアーティストの他、KYNE、井田幸昌、マサキといった最近のオークションにて、高値で落札されている若手作家の作品も出品された。
出来高は、落札総額5億7753万000円(落札手数料含む)、落札率は89.2%と高い水準であった。
最高額で落札されたのは、草間彌生の代表モチーフが描かれたアクリル・キャンバスの作品「南瓜」で、落札予想価格4000~7000万円のところ、7,245万円(落札手数料含む)で落札された。
次いではマサキのアクリル・キャンバス作品の「Nafea Faa Ipoipo(When Will You Marry?)Ⅱ」で
落札予想価格500万~800万のところ、落札予想価格上限を大幅に上回る1,667万5千円で落札された。マサキは鼻血を出したスマイルマークや目が特徴的なピカソやマティスなどの名画コピーで知られる。今後も価格が上昇していくか注目したいアーティストだ。
さて今回は、フランス人ストリートアーティストのインベーダーに注目したい。インベーダーは70~80年代のレトロゲームを連想させるピクセルアートが特徴だ。作品の多くはビデオゲームのキャラクターで、都市に展示された作品を「侵略」と称して記録化している。東京の街中にも作品があるので、興味のある方はどこにあるのか探しに行ってはどうだろか。
本セールでは、シルクスクリーンの版画作品6点、ミクロモザイクタイルのマルチプルオブジェ作品が1点、刺繍バッジの無限定マルチプル作品1点の合計8点が出品された。後者のマルチプル作品2点は不落札であったが、シルクスクリーンの作品はすべて、落札予想価格上限に対し144%~241%の高額での落札結果となった。
Lot No. 93: 「Sea of Smile」(シルクスクリーン、49.4 × 34.5 cm)落札予想価格30万 – 50万/落札価格72万4,500円(144%)、Lot No. 95: 「Hollyweed (Brown pot)」(シルクスクリーン、54.8 × 41.5 cm)落札予想価格20万 – 30万/落札価格72万4,500円(241%)など。
インベーダーのマルチプル作品(シルクスクリーンとタイルのマルチプル作品)を抽出分析したACF美術品パフォーマンス指標を見てみると、2016年から2020年2月にかけての落札価格の平均は、2016年は予想落札価格下限を若干下回るが、その後は予想落札価格上限を大幅に上回り、右肩上がりに推移している。
インベーダーの作品の価格がバンクシー、KAWSに並んでいくのか今後も注目したい。
次回のSBIアートオークション開催予定:未定
【お問い合わせ先】
SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-11 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp
会場: マレットジャパン(マレットジャパン オークションハウス)
セール: SALE 2019.12.05
日時: 2019年12月05日(木曜日)15:00~
落札総額: 122,535,000円(落札手数料含まず)
落札率: 70.7%
作品数: 作品数:225点(落札159点、 不落札66点)
今回は12月5日(木)に開催されたマレットジャパンのオークションについてレポートする。
マレットジャパンは、ジャンルにとらわれることなく、国内作家の高額作品および、国際市場性のある海外作家の高額作品を重点的に取り扱う、国内の主要なオークションハウスのひとつである。
本セールでは、国内外作家107名(国内:59名、海外:48名)225作品がセールにかけられた。出来高は、落札総額1億2,253万5千円(落札手数料含まず、以下同)、落札率は70.7%だった。
ロッカクアヤコのキャンバス作品(116.5×91.0㎝)が、落札予想価格600~800万円のところ、1,150万円で落札され、今回のオークションでは最高額での落札となった。
次いで戦後世界的に高い評価を得た数少ない日本の書家である井上有一の作品「吸」が落札予想価格250~450万円のところ上限に近い440万円で落札された。また草間彌生のマルチプル作品が8点出品され、どれも落札予想価格上限を上回る落札結果であり、安定した人気をみせた。
今回は、本セールで最高額の落札となったロッカクアヤコ(1982年~)ついてレポートする。
4回目のレポートで油彩について書いたが、改めてマルチプル作品に注目したい。
本セールでは、前述の最高額で落札された作品の他にマルチプル作品1点、油彩が1点出品された。LOT 番号128「無題」(58.2×78.0㎝/リトグラフ)がマルチプル作品で、落札予想価格50~70万円のところ、63万円で落札、LOT番号222「作品」(41.0×45.0㎝/ダンボール・アクリル)は落札予想価格150~200万円のところ、200万円で落札されている。
ロッカクアヤコは筆などを一切使わず、手で直接キャンバスやダンボールにかわいらしい色使いで少女をはじめとするモチーフを描く作風が特徴のアーティストである。2004年村上隆主催のGEISAIでスカウト賞を受賞し注目され、2006年スイス・アートバーゼル出展時に行ったライブペインティングでは100枚以上を描き、完売。それをきっかけに欧米での人気が高まり、現在はオランダで活動している。
ロッカクアヤコの作品は、2020年3月に行われる東京アートフェア(GALLERY TARGET)に出展予定とされているので、興味のある方には良い機会となるかもしれない。
同作家のマルチプル作品を抽出分析したACF美術品パフォーマンス指標注*を見てみると、2016年までは横ばい、2019年に落札価格の平均が若干下落するが、全体的にみると2017年から落札価格の平均は右肩上がりに推移している。同じく時価指数も同じ動きをしている。
ロッカクアヤコのマルチプル作品はこれまであまり制作されておらず、また近年作品は大型化している。オリジナル・マルチプル作品とも今後も価格の動向に一層注目していきたい。
注*:ACF美術品パフォーマンス指標・時価指数ともに、2017年は国内でマルチプル作品の出品がなかった為、2014年~2019年から2017年を除いた5年間のデータからグラフ化している。
次回のマレットオークション開催予定
2020年2月28日(金)15:00~
会場:マレットジャパン オークションハウス
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
※YouTubeにて、ライブ配信も行っています。
【お問い合わせ先】
株式会社マレットジャパン
〒135-0016 東京都江東区東陽3-22-6 東陽町AXISビル1F
TEL:03-5635-1777 FAX:03-5635-1778
E-mail:info@mallet.co.jp
会場: SBIアートオークション(代官山ヒルサイドフォーラム)
セール: MODERN AND CONTEMPORARY ART
日時: 2019年11月1日(金曜日)16:00~ / 2019年11月2日(土曜日)13:00~
落札総額:925,991,500円(落札手数料含む)
落札率:85.9%
作品数:533点(落札458点、 不落札75点)
今回は11月1日(金)と2日(土)の2日間に渡り開催されたSBIアートオークションのオークションについてレポートする。
今回のセールでは、国内外作家240名(多作家出品は1名でカウント)、500作品以上がセールにかけられた。出来高は、落札総額9億2599万1500円(落札手数料含む)、落札率は前回(91.4%)には及ばなかったが85.9%に達し、現代アート市場が引き続き堅調であることが感じられた。
最高額で落札されたのは、草間彌生のアクリル・キャンバスの作品「A.PUMPKIN(Y)」で、落札予想価格6000~9000万円のところ、落札予想価格上限の9,000万円(落札手数料込みで1億350万円)で落札された。本作品のモチーフであるかぼちゃは草間彌生の代表作品であり、安定した人気がある。
今回は、原始的でミステリアスな生命体をモチーフとする加藤泉(1969―)に注目し、レポートする。
現在、原美術館とハラミュージアムアークで個展を同時開催中(2020年1月13日まで)の加藤泉の作品は、一度見たら忘れない作風である。丸の内ストリートギャラリー(丸の内仲通り、東京)にも作品があるので、見たことがある人もいるのではないだろか。
本セールでは、ドローイング1点、水彩・コラージュ作品1点、油彩が1点出品された。LOT番号216「無題」(21.0×14.8cm)はドローイング作品で、落札予想価格15~25万円のところ、50万6千円(落札手数料含む、以下同)で落札、水彩・コラージュ作品であるLOT番号217「無題」(28.5×19.0cm)は落札予想価格30~50万円のところ、138万円で落札されている。
LOT番号218「作品」は、24.3×33.3cmの油彩作品で、落札予想価格50~80万円のところ、大幅に上回る230万円で落札されている。
ACF美術品パフォーマンス指標を見てみると、2015年から2019年にかけての落札価格の平均は、2017年は予想落札価格上限を若干下回るが、その後は予想落札価格上限を上回り、右肩上がりに推移している。
今回セールにかけられた3作品もすべて落札予想価格上値を上回る価格で落札されている。近年では油彩の他にも、ファブリックを使った作品にも取り組んでおり、今後ますます注目されると思われる。
人気はどこまで続くのか、注視していきたい。
次回のSBIアートオークション開催予定
2020年2月1日(土)
会場:代官山ヒルサイドフォーラム
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
【お問い合わせ先】
SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-11 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp
会場: BA-TSU ART GALLERY & B-SIDE
セール: Harajuku Auction Vol.2
日時: 2019年10月26日(土曜日)15:00~
落札総額: 446,959,000円(落札手数料含む)
落札率: 91.4%
作品数: 209点(落札191点、 不落札18点)
今回は10月26日(土)に開催されたSBIアートオークションのHarajukuオークションについてレポートする。
本オークションは、原宿を拠点に様々なクリエイティブ事業を展開しているen one Tokyoと共催のオークションで、昨年11月の開催に引き続き、2回目の開催となる。原宿カルチャーに焦点を当て、ストリートカルチャーから音楽、デザイン、ポップアート、現代アートを代表する作家の作品まで、幅広いジャンルの作品を多数取り揃えている。
今回のセールでは、国内外作家80名(多作家出品は1名でカウント)、209作品がセールにかけられた。出来高は、落札総額4億4695万9000円(落札手数料含む、以下同)、落札率は91.4%に達し、非常に活況なセール結果となった。
最高額で落札されたのは、カウズのアクリル・キャンバス、2点組のオリジナル作品「KIMPSONS SERIES(TWO WORKS)」で、落札予想価格1800~2800万円のところ、7245万円で落札された。本作品は、今回のオークションの案内状のメイン作品にも選ばれており、案内状を手にした人にとっては早くから印象に残る作品となっていた。カウズの作品は、技法も様々で、今回は出品数も多く40点近い作品がセールにかけられた。そのほとんどの作品は、落札予想価格上限を超えて落札され、人気の高さがうかがえた。
今回は、落書きをストリートアートと呼ばれる美術様式として世界に認めさせた、アメリカを代表する伝説的なアーティスト、キース・へリング(1958-1990)に注目し、レポートする。
キース・へリングの作品は、ファッションブランドのデザインにも影響を与え、様々なブランドとコラボレーションしたアイテムを発表している。シンプルなラインと明度が高い鮮やかな色彩で構成された作品は、雑誌や広告などのメディア媒体で使われることも多い。アーティスト名こそ知らずとも、その作品を一度は目にしたことがあるのではないだろうか。
本セールでは、2点の版画作品が出品された。LOT 番号136「Dog」は、115.5×89.2 cmのモノクロームのリトグラフ作品で、落札予想価格400~600万円のところ、632万5千円で落札された。LOT番号137「Lucky Strike」は、29.5×20.7 cmのカラフルなシルクスクリーン作品で、落札予想価格80~120万円のところ、138万円で落札されている。
「Lucky Strike」(3号)とサイズが近い8号以下の同作家の版画作品を抽出分析したACF美術品パフォーマンス指標を見てみると、2014年から2017年にかけての落札価格の平均は、2015年から2016年のほぼ横ばい傾向を含みつつ、右肩上がりに推移している。2018年には、落札価格の平均が約80万円まで下落するが、各年ともに落札予想価格下限を下回ることなく推移しており、安定したパフォーマンスであることがうかがえる。今回セールにかけられた2作品も落札予想価格上値を上回る価格で落札されている。この持続的な安定を今後も実現できるか注視していきたい。
次回のSBIアートオークション開催予定
2020年2月1日(土)
会場:代官山ヒルサイドフォーラム
※開催日時は事前の告知なしに変更になる場合がございます。
【お問い合わせ先】
SBIアートオークション株式会社
〒135-0063 東京都江東区有明3-6-11 TFTビル東館7F
TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777
E-mail:artauction@sbigroup.co.jp