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オークションレポート

2018.08.28
【7/14】SBIアートオークション(代官山ヒルサイドフォーラム)

会場:          SBIアートオークション(代官山ヒルサイドフォーラム)

セール:        Modern and Contemporary Art, No. 28

日時:          平成30年7月14日(土曜日) 13:00~

 

落札総額:   332,723,750円 (Premium込み)

落札率:     84.5%

作品数:     落札360点、不落札66点

 

今回は7月14日(土)に代官山ヒルサイドフォーラムで開催されたSBIアートオークションについてレポートする。SBIアートオークションは国内外作家の現代アートを取り扱うオークションである。当日、会場に用意されたおよそ80席はほぼ満席で、後方に立ち見客が多くみられ、現代アートへの注目の高さがうかがわれた

 

今回は国内作家作品291点、海外作家作品135点の合計481点がセールにかけられ、その内訳は絵画作品(写真等含む)341点、その他立体彫刻作品(グッズ等も含む)85点となっている。

 

出来高は、落札総額が3億3272万3千円(落札手数料15%含む)、落札率は84.5%であった。また今回、落札予想価格の上限を超えて落札された作品は全体の45.4%にのぼり、落札価格総額は落札予想価格上値の総額に対し95.5%という結果を残した。平均落札価格が92万4千円との結果からみても手にしやすい価格帯での良品が多く出品されていたことが伺え、競り状況としても活況であった。

 

今回のセールで印象的だったのが、評価が上がってきている若手作家がみられたことだ。ロッカクアヤコを筆頭に五木田智央、タカノ綾、名和晃平、桑久保徹など30~40歳代の作家で脚光を浴び始めている作家たちの作品が落札予想価格上限を超えて高値で落札されていた。日本の現代アート市場では1950年代以降の「具体」や「もの派」、1980年代以降の宮島達男や柳幸典、2000年以降の草間彌生、村上隆、奈良美智などの作家銘柄が長く市場の中核を形成してきた中で若手作家が台頭することは困難であったが、昨今のセールをみると近い将来、彼ら若手作家が市場をけん引していく日が来ることを期待せずにはいられない。

 

では、今回のセールで主だったものを紹介していく。

 

最初に注目したのが、先月フランス・パリのルーブル美術館にあるガラスピラミッドで立体彫刻作品の新作お披露目を行った名和晃平だ。今回のセールでは2009年制作のミッキーマウス、ミニーマウスをモチーフにした立体作品「PixCell [Toy-Mickey Mouse(from Mickey’s Rival)]」と「PixCell [Toy-Minnie Mouse(Comic Ver.)]」が出品され、それぞれ60~90万円の落札予想価格に対し大幅に超える155万2千円、149万5千円で落札された。また、名和晃平の主要な使用メディアでもあるガラスビーズの2003年制作の立体作品「PixCell-Toy-Stealth」は落札予想価格200~300万円のところ345万円で落札された。落札予想価格を大幅に超える価格での落札がみられたが、今後もこの流れが続いていくのか注目される。

 

主に少女をモチーフにエロティックな中に不思議さとグロテスクな一面も見せる作風のタカノ綾は2点が出品された。2002年に制作された15.5×21.0cmの紙に水彩とボールペンで描かれた作品「めぐが標識の上であそぶ」が落札予想価格10~15万円のところ50万6千円で落札。もう1点2003年に制作された25.3×31.0cmの紙に水彩の作品「架空の映画のための衣装しょう②」が落札予想価格20~30万円のところ88万5千円で落札。ともに落札予想価格高値のおよそ3倍の値を付けた。

 

若手作家の中で、価格上昇率で目を見張るのがロッカクアヤコ。段ボールやキャンバスに筆を使わず手指でペインティングする独特の手法で、作風はカラフルで可愛しさがある中に、大きくシンボリックな独特な目つきの少女をモチーフにした作品を多く描いている。そんな彼女の作品が注目され、市場でも評価されてきている。

今回のセールでは段ボールに描かれた作品1点とキャンバス作品2点が出品された。

2007年制作の87.0×77.0cmの段ボールにアクリルでペイントされた作品が落札予想価格80~140万円のところ224万2千円で落札。また2009年制作のキャンバスにアクリルでペイントされた130.0×90.0cmの作品「無題」が落札予想価格300~500万円のところ1069万5千円で落札。会場、電話、書面入札と多くのビットが入り大いに盛り上がった。同じくもう1点、2007年制作のキャンバスにアクリルでペイントされた53.0×65.2cmの作品「無題」も落札予想価格200~300万円のところ632万5千円で落札された。今回のセールで初めてオークション市場で1000万円を超えて落札されたロッカクアヤコの作品だが、今回出品されたような1辺が1mを超える大型の作品の落札価格を中央値で見ると、2013年の時点ではまだ100万円を切る価格帯であったが、その3年後の2016年にはおよそ倍の199万円まで上昇、更に2年間かけ2018年においては3.5倍以上の740万円まで価格が上昇している。(指標グラフ参照)。この5年で7倍以上の価格上昇となったのである。30歳代の若手作家の中では群を抜いて注目されてきている証だろう。現在ドイツ・ベルリンを拠点に、先月までオランダで個展を開催していたロッカクアヤコ。日本、ヨーロッパを活動の中心に置いていた彼女だが、最近ではアジアマーケットでも注目されつつあり相場上昇の一因になっているとみられる。今後の市場動向に大いに注目していきたい。

 

その他、今回のセールでは安定した高値で不動の人気を誇る草間彌生の作品も14点(グッズを除く)出品された。その14点の内、落札予想価格上値を超えての落札が9点となり、相変わらずの人気をうかがわせた。落札予想価格上値の平均が296万4千円に対し落札価格平均が322万5千円という結果からみて上昇相場が続いていることがみてとれる。目立ったところでは版画作品で1982年に制作された65.5×51.0cmのリトグラフにコラージュの作品「かぼちゃ(Kusama4)」が落札予想価格350~550万円のところ610万円で落札。数多くある草間彌生の版画作品の中で、南瓜をモチーフにした最初の作品とあってか人気が集中し高値で落札された。

 

また今回、過去のセールの状況と変化がみられたのがカウズだ。目が「×」印のキャラクターの立体作品を多く手掛け、ユニクロTシャツブランド「UT」とコラボもしており日本でもなじみの深い作家である。2~3年ほど前までは落札予想価格を大きく超えての落札は、さほど見られなかったが今回のセールでは27点と多数作品が出品(内21点がマルチプル作品)され、そのうち23点が落札予想価格上限を超えての落札となり、落札予想価格上値の2倍を超えて落札された作品も5点あった。落札予想価格上値の平均が96万6千円に対し落札価格の平均が123万4千円であることからも人気の高さを裏付けるものになった。大手企業とコラボすることで認知度が上がりファンを形成することでこのような高値を付けたとみられるが、今後もこの流れが続いていくのか注視していきたい。

 

次回SBIアートオークションは2018年10月27日 土曜日 13:00~代官山ヒルサイドフォーラムでの開催を予定しています。

※開催日時は事前の告知なしで変更になる可能性がございます。

【お問い合わせ先】

SBIアートオークション株式会社

〒135-0063 江東区有明3-6-11 TFTビル東館7階

TEL:03-3527-6692 FAX:03-3529-0777  Email:artauction@sbigroup.co.jp

担当:加賀美、塚田

 

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