会場: シンワオークション(シンワアートミュージアム)
セール: 近代美術 戦後美術&コンテンポラリーアート/近代美術PartⅡ
日時: 平成30年5月19日(土曜日) 15:00~
落札総額: 673,965,000円(落札手数料含まず)
落札率: 84.85%
作品数: 落札308点、不落札55点
今回は4月19日(土)にシンワアートミュージアムで開催されたシンワアートオークションについてレポートする。シンワオークションの特徴としては国内外のすべてのジャンルの作品が出品されているが、特に日本画、洋画については力を入れているように見受けられ、良質な作品が多数出品されている。
今回は国内作家作品312点、海外作家作品51点の合計363点がセールにかけられ、その内訳は絵画作品(油彩・水彩・日本画)221点、版画97点、立体彫刻その他が45点となっている。
出来高は落札総額6億7396万5千円(落札手数料含まず)、落札率は84.85%であり、前回今年3月に同会場にて行われたセールと比較すると点数は46点ほど、落札率が4.4%ほど減ってはいるものの、落札総額は1億3900万円ほど増加、落札平均価格は前回およそ146万1千円に対し218万8千円と増加している。また、落札予想価格上限を超えての落札は28.1%となっており全体を通して活況なセール状況をうかがわせる。
日本画では東山魁夷の作品については版画作品2点、彩色作品2点が出品されたがすべての作品で落札予想価格上限を超えての落札。版画作品では「明宵」「夏山白雲」の2点がそれぞれ落札予想価格20万円~30万円のところ「明宵」が38万円、「夏山白雲」が50万円と落札予想価格上値を超えての落札。また紙本・彩色作品では昭和58年制作の「明宵」(31.3cm×44.2cm)は1500万円~2,000万円の落札予想価格に対し3,100万円で、昭和37年制作の「湖静寂」(46.2cm×61.3cm)は1500万円~3,000万円の落札予想価格に対し3,700万円で落札と、事前入札、電話、会場からのビットが入り活況な競りとなっていた。
洋画では今年没後50年を迎えても今なお人気が高い藤田嗣治(※フランス帰化)の作品も版画1点、水彩画2点、油彩画3点合計6点がセールにかけられ、内4点が落札予想価格上限を超えての落札となった。特に版画作品「眠る親子猫『猫』より」は50万円~80万円の落札予想価格に対し320万円で落札、小品ながら油彩作品の「夏に咲くバラ」(24.1×19.2cm)が1,000万円~1,500万円の落札予想価格に対し1,750万円、同じく油彩作品の「少女と猫」(18.0×14.2cm)も2,000万円~3,000万円の落札予想価格に対し3,400万円と活発にビットが入っていた。
そして小磯良平の1969年制作の油彩画「若い娘の肖像」(90cm×90cm)においては電話、そして会場内での白熱したビットにより落札予想価格2500万円~4,000万円のところ6,600万円で落札され大いに盛り上がっていた。
今回のセールの傾向として垣間見えたのが日本画、洋画共に決まりきった伝統的なモチーフの作品へのビットがあまり多くなく、逆に同じジャンル、同じ作家の中であっても今までは比較的安価であったが、現代に通じるモダンなモチーフの作品に人気が集まり、落札予想価格を超えての落札が多く見受けられた。それは昨今の日本の住宅やオフィスのインテリアのモダン化も影響していると考えられ、改めて評価されてきているのかもしれない。今回のセールに出品された日本画の中では手塚雄二の53×41cmの作品「光月幸」が100万円~180万円の落札予想価格に対し260万円で落札、川端龍子の45.6×56.6cmの作品「富士飛龍」が20万円~40万円の落札予想価格に対し90万円で落札された。また、洋画の中では熊谷守一の15.6×22.5cmの作品「裸婦」が落札予想価格500万円~800万円のところ920万円で落札された。
また戦後美術・現代アートのセールでは、人気作家草間彌生の作品が版画10点(シルクスクリーン9点・エッチング1点)、立体オブジェ(マルチプル)6点、油彩画1点の計17点が出品された。版画作品では10点中8点が、立体オブジェも6点中5点が、落札予想価格上限を超えての落札となり相変わらずの草間人気をうかがわせていた。草間彌生の版画作品の中でも南瓜をモチーフにしたものが不動の人気を誇っているが、近年相場が高騰。それにつられて今までは「南瓜」の作品と比較して安値で推移してきた「果物」や「花」をモチーフにした作品も人気が高まってきた。
今回も「果物」のモチーフ作品が2点セールにかけられたが、それぞれ100万円~150万円の落札予想価格に対して210万円、220万円と予想を超えての落札になっている。
また、今回エディション部数が少ないシルクスクリーン/キャンバスの版画作品(2007年制作)「朝のめざめ」(130.7cm×162.2cm)もセールにかけられた。会場と電話からのビットの応酬により落札予想価格500万円~800万円のところ2,600万円で落札。美術品二次市場にめったに出てこない貴重な作品ということもあり高値で落札されていた。
また1点出品された油彩作品2006年制作の油彩作品「Infinity Nets」(194cm×194cm)においては落札予想価格8,000万円~1億2,000万円のところ1億3,000万円で落札、今回のセール全体を通しての最高額での落札となった。
そしてもう一人日本の現代アートを代表する作家のひとりとして海外でも評価が高く、ここ数年を見ても二次市場での価格上昇率が高い奈良美智の作品も出品された。作風としては独特な、とりわけ大きく睨むような目つきをした少女をモチーフにしたドローイングや、犬をモチーフにしたオブジェなどがある。
そんな奈良美智の作品が今回のセールで3点出品された。1点は1992年に紙にアクリルで制作された29×41cmの作品「ダイオキシン」。落札予想価格200万円~300万円のところ290万円で落札。また2点は版画作品で、うち1点はシルクスクリーンで2003年制作の「Star Island」で落札予想価格120万円~200万円のところ210万円で落札、もう1点は2009年制作の木版画作品「Mellow Girl !」で落札予想価格80万円~120万円のところ115万円で落札された。
奈良の代表的なモチーフである少女のモチーフ作品は、オリジナルのドローイング作品であれば既にオークション市場では数百万円~1千万円を超している。その中で版画作品は2015年以前であれば100万円を切る価格で比較的入手しやすかった。ところが、指標グラフを見てわかるように、ここ3年で200万円を超す落札価格まで上昇している。
今回出品されたシルクスクリーン版画「Star Island」の時価指数中央値を見ても毎年およそ2割以上の上昇率で、ここ6年で3~4倍以上の落札価格になっている。また近年ではアジアマーケットでも人気が高まっているとみられその価格上昇にさらに拍車をかけており、価格上昇率においてはあの草間彌生を凌ぐ勢いである。この上昇トレンドはまだ収まる気配が見えないが今後どこまで続くのか注視していきたい。