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オークションレポート

2018.10.31
【9/29】Shinwa Auction(シンワオークション)

会場:   Shinwa Auction

セール:  近代美術/近代美術PartⅡ

日時:   平成30年9月29日(土曜日) 15:00~

 

落札総額: 270,710,000円(落札手数料含まず)

落札率:   89.33%

作品数:   落札335点、不落札40点

 

今回は9月29日(土)に開催されたShinwa Auction(シンワオークション)についてレポートする。Shinwa Auctionの特徴としては国内外のすべてのジャンルの作品が出品されているが、特に日本画、洋画については力を入れており、良質な作品が多数出品されている。

 

今回は国内作家の日本画、日本洋画、版画作品等を中心に375点がセールにかけられた。

出来高は落札総額2億7071万円(落札手数料含まず)、落札率は89.33%であり、前回、今年5月に同会場にて行われたセールと比較すると点数は11点増、落札率が約4.5%増となっている。また、落札予想価格上限を超えての落札が24.5%となっており、全体を通して活況なセール状況であった。

 

今回のセールの中から目立ったものを紹介していく。

今回の近代美術のセール(メインセール)では彫刻作品が7点出品されており、1点を除き全て落札。また競り状況も活況で5点が落札用価格上限を超えての落札になっていた。

フランス人彫刻家クロード・ラランヌの2006年のブロンズ作品「襟をつけた小さなウサギ」(H35×W14.6cm)が、落札予想価格200万円~300万円のところ、落札予想価格上限のおよそ5倍の1,450万円で落札。今回の作品と同一の別のエディションによる作品が2015年11月24日に行われたSotheby’s Parisのセールで25,000~35,000ユーロ(およそ325万円~455万円)の落札予想価格に対し、62,500ユーロ(およそ812万円)で落札されており、そのため、今回のセールでの落札予想価格が割安に感じられたためか、海外からの電話入札が多く入り300万円を超えたあたりから一騎打ちでの競り合いとなり、予想を大幅に上回る落札価格につながったものと考えられる。

その他、イタリア人彫刻家ジャコモ・マンズーの1984年制作のブロンズ作品「枢機卿」(H96×W37cm)は落札予想価格200万円~300万円のところ680万円で落札。書面入札、電話、会場からも多くのビットが入り高値での落札となった。

日本を代表する彫刻家の一人である平櫛田中の作品が3点出品。平櫛田中といえば、木彫りに彩色を施した七福神像などがポピュラーであるが、今回のセールでは過去にほとんど出品されていない木彫りの仏像2点が出品され、いずれも予想をはるかに超えての高値で落札された。1972年制作の木彫の仏像「南無阿弥陀如来尊像」(H32×W14.6cm)は落札予想価格60万円~90万円のところ、320万円で落札。また同じ1972年制作の木彫の仏像「南無観世音菩薩尊像」(H38.4×W12.4cm)は80万円~120万円の落札予想価格に対し500万円で落札。200万円を超えたあたりから少人数による競り合いでの結果となった。

 

日本画、洋画の、高値で落札された作品をみてみると、上位5作品は横山大観、レオナール・フジタ、東山魁夷、中島千波、棟方志功の作品であった。

横山大観の作品はH67.5×W80.7cmの絹本に彩色で描かれた額装作品「春之富士」で、落札予想価格2000万円~3000万円のところ3600万円で落札。東山魁夷の作品はH42.8×W57.7cmの1949年制作の絹本に彩色で描かれた額装作品「朝涼」で、1500万円~2500万円の落札予想価格に対し1500万円で落札。中島千波の作品は2001年に制作されたH170×W340cmの四曲一隻の屏風に彩色で描かれた大型作品「醍醐の櫻」で落札予想価格700万円~1500万円のところ1250万円で落札。棟方志功の作品はH82.5×W55.5cmの紙に肉筆で描かれた額装作品「御慈妙図」で落札予想価格1000万円~1500万円のところ1000万円で落札された。

これらの作家作品は、日本のアートマーケットの日本画というジャンルにおいては常にプライスリーダー的な存在にある。バブル時代には横山大観、東山魁夷などは1億円を超える相場を形成していたが、バブル崩壊後には大幅に下落した。その後、良品を中心に、少しずつではあるが相場を持ち直し現在に至る。そういった流れの中でも、日本画の巨匠と言われる彼らの作品は人気が高い。横山大観は今年4月~7月まで東京と京都で生誕150年の展覧会が開催され、東山魁夷は8月~12月にかけて京都・東京で生誕110年の展覧会が開催中で注目を浴びている。こうしたことも市場での活況の大きな要因になったかもしれない。

 

今年、没後50年を迎えた、フランスに帰化した画家、レオナール・フジタの作品については細かく見ていきたい。現在7月~12月にかけて東京・京都で大規模な回顧展を開催しており、注目されている。今回のセールではフジタの作品は5点出品されており、内容は版画作品1点、水彩画が3点、油彩画が1点セールにかけられた。

22点組のリトグラフ版画作品「四十雀」は落札予想価格40万円~60万円のところ125万円で落札。紙に墨、水彩で描かれたH57.3×W44.8cmの軸装作品「芥子花」は10万円~20万円の落札予想価格に対し115万円で落札。紙に墨、水彩で描かれたH34.0×W68.5cmの額装作品「海の幸」は落札予想価格20万円~40万円のところ110万円で落札。紙に墨で描かれたH54.0×W69.3cmの額装作品、人気の猫がモチーフの「親子猫」は落札予想価格250万円~350万円のところ360万円で落札された。油彩の作品では、1935年制作のH24.5×W33.2cmの「猫」が落札予想価格2000万円~3000万円のところ2000万円で落札となった。油彩の作品以外は落札予想価格上限を超えての落札となっており、手に入れやすい価格帯の作品に人気が集中した。フジタの油彩作品は1000万円を超える作品が多く、中には数千万円の値を付けるものもある。しかしながらドローイング作品については油彩作品に比べ比較的手にしやすい価格帯の作品もある。

フジタの作品の主要モチーフには「少女」「裸婦」「猫」などが知られている。今回のオークションで出品された水彩画の「猫」のモチーフ作品の、最近の5年間の指標をみてみると、2014年以降、相場が上昇しているのが見て取れる。「猫」の水彩画の出品数がそれほど多くないために、オークションでは競り上がるという背景もあるが、時価指数の中央値が右肩上がりになっていることは見逃せない。同じモチーフ・技法で、ここ4年間で時価指数の中央値が2倍近くまで上昇しているのだ。(但し、2014年は小品の出品のみ、2018年は大型の作品が多い)。また、パフォーマンス指標をみると、落札予想価格上限平均を大幅に超える落札価格平均となっている。落札予想価格=予想される相場価格とみれば、市場の予想を超えて高値で落札されているということになる。このように予想を超える高値での落札が続いている相場状況は、没後50年を経ても人気が衰えない作家の良い例ではないだろうか。

レオナール・フジタ パフォーマンス指標

 

レオナール・フジタ 時価指数

 

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