会場: SBIアートオークション(代官山ヒルサイドフォーラム)
セール: Modern and Contemporary Art, No. 27
日時: 平成30年4月20日(金曜日) 18:00~
平成30年4月21日(土曜日) 13:00~
落札総額: 647,398,250円 (Premium込み)
落札率: 86.7%
作品数: 落札417点、不落札64点
今回は4月20日(金)、21日(土)の2日間にわたり代官山ヒルサイドフォーラムで開催されたSBIアートオークションについてレポートする。SBIアートオークションは国内外作家の現代アートを取り扱うオークションである。
当日は、会場に用意されたおよそ80席はほぼ満席で、後方に立ち見客が多くいる中でのオークション開催となった。
今回は国内作家作品356点、海外作家作品125点の合計481点がセールにかけられ、その内訳は絵画作品(写真等含む)385点、その他立体彫刻作品(グッズ等も含む)96点となっている。
出来高は、落札総額が6億4739万8千円(落札手数料15%含む)、落札率は86.7%であり、今年1月に同会場にて行われた前回のオークションと比較すると、出点数で106点の増、落札総額で約2億6194万円の増となった。また、落札率も前回の85.3%に対し86.7%、平均落札単価も前回の88万2000円に対し、115万8000円と上昇している。また、今回、エスティメイトの上限を超えて落札された作品は全体の46.1%にのぼり、落札価格総額はエスティメイトの上限の総額に対し110%UPという、現代アートの美術品市場の活況さをうかがわせるセール結果となった。
このように好調なセールの中で、すでに再評価されて久しい田中敦子、嶋本昭三、松谷武判など「具体」の作家銘柄の作品に加え、原口典之、榎倉康二ら「もの派」、1980年代以降の宮島達男、柳幸典らの作家銘柄の作品が、エスティメイトの上限を大幅に上回り落札されている。これは戦後日本現代美術の作家銘柄が全般に再評価され、価格が底上げされつつあることを示唆するものかもしれない。
また、美術品市場の新しい流れの中で、エディション作品ではないグッズやエディション部数が300部を超えるようなマルチプル作品の市場も着実に形成されつつある。エディションが入った版画やオブジェなどの正規のマルチプル作品の相場が高騰し、その購入が困難になってきた作家のグッズが、正規のマルチプル作品と同様に美術品オークションにも出品されるようになってきたものと思われる。特に人気なのが草間彌生、奈良美智らのグッズである。これらグッズはミュージアムショップやイベント時に限定で販売されたものも多く、正規のマルチプル作品の高騰の影響も受け、オークションでも人気を博している。今回のセールでも高値で取引され、草間彌生、奈良美智のグッズだけでも22点が出品され1点を除き全て落札されている。
それでは今回のセールで、主だったものをピックアップしていきたい。
オープニングでは韓国人作家4名の作品が13点セールにかけられ、李禹煥(リー・ウーファン)の30号キャンバス作品がエスティメイト下値500万円のところ862万5千円で落札されたのを皮切りに鄭相和(チョン・サンファ)の紙にミクストメディアの作品がエスティメイト下値80万円に対し138万円で落札されるなど、上々の滑りだしとなった。
その後日本を代表する抽象現代作家 桑山忠明 山口長男 山田正亮 高松次郎 田中敦子 中西夏之等の作品がセールにかけられた。中でも高松次郎の「影-No.1424」、20号のキャンバス作品がエスティメイト下値700万円に対し1069万5千円で落札、「影」シリーズの変わらぬ人気ぶりをうかがわせた。具体のメンバーであった田中敦子の作品は3点セールにかけられ、36cm×26cmの紙にクレヨンの作品「Work」はエスティメイト下値50万円に対し143万7千5百円、1978年制作の3号のキャンバス作品「無題」では250万円のエスティメイト下値に対し690万円で落札され、国内外の電話からの多くのビットが入っていた。また中西夏之の150号の大作「白・緑より白く-Ⅲ」は今回のSBIアートオークションのメイン作品としてセールにかけられエスティメイト下値1200万円のところ電話・オンライン、会場からも多くのビットが入り2645万円で落札され会場からは大きな拍手が沸きあがっていた。
筆などを使わずに直接手によってキャンバスや段ボールなどにペイントをする独特な作風のロッカクアヤコの作品にも注目が集まった。版画作品1点の他、段ボールペイント作品2点、キャンバス作品3点がセールにかけられ、段ボール作品2点がいずれもエスティメイト下値50万円に対し172万5千円、キャンバス作品3点に至っては書面入札、電話、オンラインそして会場からの多数のビットで競り上がり、全てエスティメイト下値の3倍以上の529~839万5千円という高値での落札となり会場を大いに沸かせた。ここ1年近くの同作家、同サイズの作品と比べてもおよそ1.5~2倍以上での落札価格となっており、一過性の買いが入った結果なのかどうなのかは今後を注視していきたい。
そしてここ最近の海外における日本の現代アートの人気を概観する上で最も勢いのある作家のひとり、奈良美智の作品も多数セールにかけられた。ニューヨーク現代美術館やロサンゼルス現代美術館にも作品が収蔵されている日本を代表する現代アート作家である。奈良美智の原点ともいえるドローイングの作品を中心に9点(グッズ類を除く)がセールにかけられ、封筒(24cm×16cm)に色鉛筆で描かれた2008年の作品がエスティメイト下値の350万円に対し1495万円で落札、また8号のキャンバス作品「Where is ?(Nara P-1995-050)」がエスティメイト下値1200万円に対し2415万円、昨年豊田市美術館で開催された展覧会にも出展されたドローイング11点組の作品がエスティメイト下値2400万円に対し6210万円と、どの作品にも書面入札、オンライン、電話、そして会場からも多くのビットが入り人気の高さを見せつける形となり、会場からはどよめきと拍手がおこっていた。
同じく国内外において絶大な人気を誇る草間彌生の作品も多数セールにかけられた。草間作品においてはオリジナル絵画作品6点、オリジナル立体作品1点、版画作品(マルチプル立体作品4点含む)34点、計41点がセールにかけられた。8号のキャンバス作品「愛をあたためて」がエスティメイト下値1500万円に対し2242万5千円、1998年制作の草間彌生の代表的モチーフであるネットの作品「Nets19」はエスティメイト下値2600万円に対し3910万円で落札。その他版画作品含めどの作品も海外の電話と思われるものを含め多くのビットが入っていた。3~4年前まではシルクスクリーン作品と比較して安値で推移してきたエッチングの作品もここ1~2年で人気が高まり4点のうち3点がエスティメイト上限を超えて落札され、そのうち1994年制作の「Polka Dots」はエスティメイト下限50万円に対し106万9千5百円で落札された。また、南瓜モチーフの作品に至っても相変わらず人気が高く、1993年制作の版画作品「ダンスかぼちゃ」(50cm×72.6cm)が300万円のエスティメイト下値に対し483万円で落札、その他南瓜モチーフの作品も活況な競り状況となっていた。
その他、注目したいのが今後上昇基調になりそうな五木田智央の作品。現在西新宿の東京オペラシティで個展が開催されているが、その五木田の作品も4点セールにかけられた。2007年制作の8号のキャンバス作品「Rags To Riches」がエスティメイト下値120万円に対し437万円、また2009年制作の130号の大作「This Misunderstanding」に至ってはエスティメイト下値450万円に対し954万5千円と競り上がり、今後の動向が注目される作家といえよう。
次回SBIアートオークションは2018年7月14日 13:00~代官山ヒルサイドフォーラムでの開催を予定しています。
※開催日時は事前の告知なしで変更になる可能性がございます。
【お問い合わせ先】
SBIアートオークション株式会社
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Email:artauction@sbigroup.co.jp
担当:加賀美、塚田